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68. レオンが待っている
しおりを挟む今日はクリフ様が我が家にやって来る事になっている。
例の話をする為に…。
お父様に手紙を書いたとは聞いたが内容までは教えてもらえなかった。
何と書いたのだろうか?
手紙が届いてから両親がピリピリとしているのがわかる。
前にも増して屋敷の中の雰囲気が悪い。
使用人達も疲れているのがわかる。
「マリー、大丈夫?皆が疲れているみたいだけど…何かあったの?」
「ご心配ありがとうございます。最近、奥様のご機嫌がよろしくなく使用人達は顔色を伺いながらやっているせいかと思われます」
「そう、お母様が…。また、何かあるのかしら…」
お母様が機嫌が悪い時、最終的に私の所にくる。
「レオ様は絶対に奥様に会ってはいけません。気をつけて下さい」
今までの事を知っている、マリーは心配してくれている。
「ありがとう、マリー。貴女も気をつけてね」
屋敷の前に王家の馬車が止まった。
クリフ様が来たみたいだ。
クリフ様には私は部屋で待っている様にと言われている。
話がついたらクリフ様が私の部屋を訪ねるから、それまで部屋で待っていてほしいと…。
一体、どんな風にお父様に話をするのか…。
クリフ様は私に聞かれたくないみたいな感じだったけど。
お母様の機嫌が悪いのが気になる。
クリフ様に何もしないわよね…。
「レオ様、落ち着ける様にハーブティーでもご用意しましょうか?」
「ありがとう、マリー。お願いするわ」
マリーはハーブティーを準備する為に部屋を出ていった。
暫くして部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「マリー早かったわね…」
扉が開くとそこにいたのはマリーではなく…いつもはノックなんてしない人物だった。
「…お母様」
機嫌が悪いと聞いていたが、今は満面の笑みで部屋に入ってきた。
「ねえ、レオン…いえ、レオナ不公平だと思わないの?双子なのにレオンは死んで貴女だけが生きているなんて…。きっと、レオンが待っていると思うのよ…」
お母様は私の所にまでやって来て珍しく私の顔に触れた。
「だからね、貴女はここにいてはいけないと思うのよ。せめて、母親である私の手でレオンの所に行かせてあげるわね」
お母様は今まで見たことが無いくらいの優しい微笑みをしながら、左手で私の頬を撫で話しかけてきた。
私は何を言っているのかわからず、お母様に聞こうとした瞬間にお母様の右手が私に向かって動いた。
「キャーーー!!!レオ様!誰かー!!誰か来てー!!!」
ハーブティーを用意して部屋に戻ってきたマリーの悲鳴が屋敷中に響いた。
私は何がおきたのかわからなかったが、意識が遠退いていくなかお母様の優しい微笑みだけが見えた。
「…お母様」
私がお母様に差し出した手は真っ赤になっていた。
「レオンが待っているわよ…」
私が最後に聞いたのはお母様の言葉だった。
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