男装令嬢の願い

縁 遊

文字の大きさ
84 / 88

84. アルス様の告白

しおりを挟む


いろんな事があっという間に過ぎていった。

クリフ様にプロポーズされてから周りの環境が大きく変わっていったことが関係しているかもしれない。

リオンの養子縁組解消手続きとか、私の戸籍を義兄の家に移してそこにリオンも入れたりとなかなか複雑な書類の山に暫く囲まれていた。

死亡していた人間を生き返らせるわけだから大変なのは当然なんだけど…。

でも、一番大変なのはクリフ王子の婚約者になる為の教育だった。

今まで男として生活してきた期間が長すぎてドレスを着て毎日過ごす事にも慣れないのに、それでダンスやら淑女の所作などを指導されても戸惑うばかりでなかなか難しい。

私は男としてレオンとして生活することが自然になっていたんだなと感じた。

自分は女性だと心では思っていたけど、ドレスを着こなすことすらできていない。

こんな女性は少ないだろうな…と自己嫌悪に陥ってしまう。

しかし、クリフ様と結婚する為にはまだまだやらなければいけない事が多く落ち込んでばかりはいられない。

私は庭園で空を眺めていた。

「大丈夫かな?」

声をかけてきたのはアルス様だった。

「アルス様…お久しぶりです。いろいろと相談にのって下さったのにお礼が遅くなり申し訳ありませんでした」

アルス様は少し寂しそうなお顔をされた。

「いや、構わないよ。レオナはケガをして大変な目に遭ったんだから…。助かって良かった」

「ありがとうございます」

私がお礼を言って顔を上げるとすぐ近くにまでアルス様が来ていて驚いた。

「…アルス様?」

アルス様が無言で私の私の頭を撫でている。

「回りくどい事をせずに、もっと早くにレオナに言っておくべきだったと私は後悔しているんだ」

「何をですか?」

アルス様が何ともいえない笑顔になった。

「私はねずっとレオナが好きだったんだよ。君をあの家から助けてあげたいと思っていたんだ。その為に何度か君の両親とも話をしたことがあるんだよ…」

知らなかった。

アルス様が私を好き…?

幼い頃から近くで見守ってくれていたのはわかっていたけど…。

「すいません。私…気づいてませんでした」

「だろうね」

今なら先程の笑顔が苦笑いだったとわかる。

「まさか、甥っ子にレオナを奪われるとは思ってなかったよ」

私は顔を赤くした。

アルス様は私が顔を赤くしたのを見て、頭を撫でていた手を頬に移した。

「クリフはレオナにそんな顔をさせるんだね…」

そんな顔…って私、今どんな顔をしているんだろう。

アルス様は私の頬を手で包み親指だけ動かし撫でるような感じだ。

「叔父上!!」

クリフ様が遠くから猛スピードで叫びながら走って来た。

私達の所に来るとすぐにアルス様の手を私から離し、自分の背に私を隠した。

「油断も隙もあったもんじゃないですね。レオナは私の婚約者です。触らないで下さい!」

「良いじゃないか少しくらい。嫉妬深い男は嫌われるぞ」

「レオナはそんな事で嫌いません!」

「レオナ、邪魔者が来たから私はこれで失礼するよ。またね」

アルス様は私に手をふり去って行かれた。

「レオナ、叔父上と何を話していたの?」

告白されたと言ったらクリフ様何をするかわからないから秘密にしないと…。

「…秘密です」

「え?!ちょっ…レオナ!ねえ、教えてくれても良いだろう。私は君の婚約者だよ。ねえ…レオナ!」

クリフ様はしつこく聞いてきたが私は笑って答えなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...