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84. アルス様の告白
しおりを挟むいろんな事があっという間に過ぎていった。
クリフ様にプロポーズされてから周りの環境が大きく変わっていったことが関係しているかもしれない。
リオンの養子縁組解消手続きとか、私の戸籍を義兄の家に移してそこにリオンも入れたりとなかなか複雑な書類の山に暫く囲まれていた。
死亡していた人間を生き返らせるわけだから大変なのは当然なんだけど…。
でも、一番大変なのはクリフ王子の婚約者になる為の教育だった。
今まで男として生活してきた期間が長すぎてドレスを着て毎日過ごす事にも慣れないのに、それでダンスやら淑女の所作などを指導されても戸惑うばかりでなかなか難しい。
私は男としてレオンとして生活することが自然になっていたんだなと感じた。
自分は女性だと心では思っていたけど、ドレスを着こなすことすらできていない。
こんな女性は少ないだろうな…と自己嫌悪に陥ってしまう。
しかし、クリフ様と結婚する為にはまだまだやらなければいけない事が多く落ち込んでばかりはいられない。
私は庭園で空を眺めていた。
「大丈夫かな?」
声をかけてきたのはアルス様だった。
「アルス様…お久しぶりです。いろいろと相談にのって下さったのにお礼が遅くなり申し訳ありませんでした」
アルス様は少し寂しそうなお顔をされた。
「いや、構わないよ。レオナはケガをして大変な目に遭ったんだから…。助かって良かった」
「ありがとうございます」
私がお礼を言って顔を上げるとすぐ近くにまでアルス様が来ていて驚いた。
「…アルス様?」
アルス様が無言で私の私の頭を撫でている。
「回りくどい事をせずに、もっと早くにレオナに言っておくべきだったと私は後悔しているんだ」
「何をですか?」
アルス様が何ともいえない笑顔になった。
「私はねずっとレオナが好きだったんだよ。君をあの家から助けてあげたいと思っていたんだ。その為に何度か君の両親とも話をしたことがあるんだよ…」
知らなかった。
アルス様が私を好き…?
幼い頃から近くで見守ってくれていたのはわかっていたけど…。
「すいません。私…気づいてませんでした」
「だろうね」
今なら先程の笑顔が苦笑いだったとわかる。
「まさか、甥っ子にレオナを奪われるとは思ってなかったよ」
私は顔を赤くした。
アルス様は私が顔を赤くしたのを見て、頭を撫でていた手を頬に移した。
「クリフはレオナにそんな顔をさせるんだね…」
そんな顔…って私、今どんな顔をしているんだろう。
アルス様は私の頬を手で包み親指だけ動かし撫でるような感じだ。
「叔父上!!」
クリフ様が遠くから猛スピードで叫びながら走って来た。
私達の所に来るとすぐにアルス様の手を私から離し、自分の背に私を隠した。
「油断も隙もあったもんじゃないですね。レオナは私の婚約者です。触らないで下さい!」
「良いじゃないか少しくらい。嫉妬深い男は嫌われるぞ」
「レオナはそんな事で嫌いません!」
「レオナ、邪魔者が来たから私はこれで失礼するよ。またね」
アルス様は私に手をふり去って行かれた。
「レオナ、叔父上と何を話していたの?」
告白されたと言ったらクリフ様何をするかわからないから秘密にしないと…。
「…秘密です」
「え?!ちょっ…レオナ!ねえ、教えてくれても良いだろう。私は君の婚約者だよ。ねえ…レオナ!」
クリフ様はしつこく聞いてきたが私は笑って答えなかった。
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