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1. 生け贄様
しおりを挟む「生け贄様、歌のお稽古の時間です」
白い服を着て顔を覆うような仮面を着けた性別不明の御使いと呼ばれる人が私を呼びに来ます。
「はい。すぐに行きます」
私は皆様から生け贄様と呼ばれています。
このハーデレン国で私は必要な存在らしいので大切にしてもらっています。
髪の色は淡い白銀色で腰の辺りまである長い髪を毎朝御使いの人達がみつあみに編み込んでまとめてくれています。瞳の色は塔から見える青空の色と同じです。外には滅多に出ないので肌も青白くて…気にしています。
御使いの人達は「神様の生け贄になるのだから肌を焼いてはいけません!」とか言って外に出て肌を焼きたい私を塔から出してくれないのです。
外はどんな世界が広がっているのでしょう。
私は物心ついた時にはこの石の塔で1人でした。
御使いの人達は私の世話をしてはくれますが夜になると部屋に1人…。塔の下の入り口の所に門番の人がいるだけです。
お勉強の先生にナゼ私はここに居るのかと幼い頃尋ねた所…。
「貴女は神様の生け贄になるために産まれてきたのです。神様の生け贄になるためには下界の汚れを身に受けてはなりません。ですから、誰かと触れあったり、御使い以外の人と話してはいけません!」
…と言われたのです。
下界の汚れが何を意味するかはわかりませんでしたが、これからもずっと1人の生活をしていくのだということは理解できました。
神様の生け贄になるその日まで…。
その日はいつなのか…。
「先生、お待たせしました」
私は先生の前でスカートをつまみカーテーシーをします。
歌の先生は顔全体を覆うような仮面ではなく目だけを仮面で隠しています。私を見て口元に笑みが浮かんだのがわかりました。紫色の美しい髪と瞳が日に当たり更に艶やかに見えます。
きっと仮面の下は美人なのだろうと思っています。
「すっかり所作が身について…大人になられましたね」
先生がこんなことを口にするのを初めて聞きました。幼い頃から神様に聞いていただく歌の練習をしていただいていますが、いつもレッスンに関することしか口になさいません。
違和感を感じていると先生が表情を引き締めて私をご覧になりました。
「今日で私の歌のレッスンは最後になります」
最後…ということは神様の生け贄になる日が近いということでしょうか。
私は内心動じながらも表には出さずに冷静に見えるようにつとめます。
「そうですか…。今日までご指導をありがとうございました」
歌が今日までということは他のレッスン…躍りや神様についてのお勉強も次が最後なのかしら…。きちんとご挨拶をしなければいけないわね。
そんな事を考えていたら歌のレッスンはあっという間に終わってしまいました。
「貴女と握手をすることは許されていませんが、プレゼントは禁止されていないので…これを…私からの餞別です」
先生はテーブルの上に音楽の本を出しました。それは私が以前に欲しがっていたものでした。
「良いのですか?これは先生の大事な本だからと言われていましたよね?」
前はそう言って断られたのです。
「良いのです。これは貴女にこそ必要になるかでしょうから…」
仮面の下からポタリと水がテーブルに滴が落ちました。
「ありがとうございます。大事にします…」
歌の先生と別れてから1週間後…私は神様の生け贄になるためには石の塔から出る事になりました。
私は生け贄としての人生を今日…終えるのですね。
覚悟は決まっています。私が生け贄としての勤めを果たせば多くの人々の命が救われる。…幸せになれるはずです。
皆様の幸せを心から願っています。
……そう言えば、今日は18歳の誕生日でしたわね。
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