召喚された少年は公爵様に愛される

さみ

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35話 公爵邸の外④

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「楽しかったね。そろそろ帰ろっか」

「うん...そうだね。」

乃亜がそう言うと気分が沈んだような声で返事をしたので心配になってしまう。
孤児だなんて本当は言いたくなかったのだろうかと思うと申し訳ない気持ちになる。
町を回り、楽しんだ乃亜達は帰路に着いた。町を歩いた時に道に迷った時の場所を通ったので帰り道は分かっているためスムーズに歩けている。帰ったら怒られないだろうかと少し心配になるが道に迷ったとでも言い訳をしようかと思った。

「あ、ここ見たことあるってことは合ってる!よかったーさっきの路地自信なかったから。....ミエール、大丈夫?」

「ノア.....ごめんね」

今にも消えそうな声で言う。

「え?今なんて....痛っ...んんんっ」

突然腕をガッと掴まれ口を布で塞がれた。急なことで状況が把握できていない乃亜は精霊を呼ぼうと必死に頭の中で名前を呼び続ける。

『ララ!ララ!誰か誰か反応して3人とも!!』

誰も反応してくれない。どうして、精霊さん達どうして.....

『お願いララ、ガイ、アテナっ!』

何度読んでも呼びかけに応じない、精霊を呼び出すことは無理だとわかった。どうしよう、このままだとミエールが!

ミエールが大丈夫かと思い口を塞がれたまま首を必死に横に向け、見ると目に涙を浮かべてこちらを見ているだけで何もされていなかった。
無事でよかった。この状況じゃ助けられないのも無理はない。ミエールだけでも逃げてほしい....

「んーんんーー」

逃げてと伝えられただろうか。もがいてみるが相手との力の差は歴然で手を動かそうとしてもビクともしない。すると目に布を巻きつけられ視界が真っ黒になった。乃亜はそのまま抱き抱えられ連れて行かれてしまったのだった。
だんだんと瞼が重くなってゆく...口を塞がれた布に何か塗ってあったのかな。
必死に睡魔に打ち勝とうと抵抗する。

「こいつで間違いありませんか。」

「ええ、そうよ。雰囲気からして間違いないわ。あの女にちゃんと報酬は渡したかしら?」

「はい」

「分かったわ。下がりなさい。」

最後に聞こえた会話は乃亜に衝撃を与えるものだった。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

「この男ががライアン様を誑かしたのね....」

憎悪に満ちた声でそういった。

私が出向いて良かったわ。あの女に任せていたら今頃失敗していた。約束の場所まで誘導できないたことは分かっていたけどね。このノアという使用人、精霊が群がっているから探すのに手間が掛からなくていいわね。やっと捕まえた。ライアン様はきっとこの男になにか弱みを握られているのよ。だから私の返事を返してくださらない。さっさと精霊士がマーフィー公爵家にいることを言いふらしてもいいのだけれどそうなると私が公爵夫人になる計画が台無しよ。ライアン様のためにこの男は排除しないと。

メアリー・ミラーは半分は善意でこのような事をしている。だがもう半分はライアンの寵愛を受ける者を妬む気持ちだった。









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