召喚された少年は公爵様に愛される

37話 思わぬ報告

それは突然の知らせであった。

「ライアン様！大変です。」

メルウィンが息を切らして部屋に入ってくるや、左手に持っていた紙切れをライアンの机に勢いよくバンッと置いた。

「なんだ騒がしいな」

「大変ですよ。突然フルアズの農民達が公爵邸の門に押しかけ、上の者を読んできてくれと言っていると報告を受けました。」

「そんな報告私には来ていないのだが、第一農民に何の不満があると」

「まぁ、最後まで聞いてください。報告をしなかったことに関してはライアン様のお手を煩わせるわけにはいかない配慮ですよ。忙いで門に行くと長の様な人から手紙を渡され『枯れていた作物を復活させていただき感謝致します。この恩は必ずや返させていただきます。』と言われたのですよ。」

十分な支援もしているのに何が不満なのだと思ったことは早とちりだったようだ。それよりも作物を復活させたとはどういうことだ。一度死んだ植物を復活させることができれば死者の蘇生も不可能ではなくなってしまう。そんなことがあっていいはずがない。

「復活させた？枯れた作物を復活させる魔術など聞いたことがない。例えあったとてフルアズ全域に魔術をかけるなど何人魔術師が居ても足りん。」

「私も最初は疑いましたがどうやら本当のようです。農民達はそれをライアン様が魔術師を呼んでしてくださったと思っているみようで、現在収穫作業を進めているとのことです。」

本当に復活したというなら穀物の値段が上がっていることについて王太子に謁見を申し込み話をしたことについても意味がなくなった。早急にウォード夫人にも報告し、支援の撤退を頼まなければならい。

「分かった。支援撤退などやる事は減らぬな。」

「ウォード夫人には私が報告をしておきます。ライアン様は王太子にご連絡お願い致しますね。それと、しっかりと休んでくださいよ。本当に....倒れられては困ります。私1人ではとてもじゃないですが仕事は回しきれません。」

心配そうなメルウィンに申し訳ない気持ちが湧いてくる。

「分かっているよ。だが...」

「はい、ライアン様のことは誰よりも分かっているつもりですので。」

「ああ....」

メルウィンは本当にできた従者だ。18という若さで公爵の爵位を賜ったとき、それまで公爵になる為教育を受け努力もしたつもりだった。その努力は全くもって足りていなかったのだ。行き詰まり眠れない日々を過ごしていた自分の手を取り導いてくれ、今では領地のこと、社交界や父がやっていた事業のことも完璧とは言い難いが父に顔向けできるほどにはできるようになった。メルウィンには感謝しかないな。

そして、
フルアズの凶作は思わぬ事態で収束した。復活をさせたのはノアか....ノアしかいないな。ヴェルナーでも無理だろう。あの日、部屋に行った時血を吐いていたノアを思い出すだけで怖くてたまらなくなる。精霊の力は使って欲しくなかった。精霊を使うことには代償があると本で読んだことがあるからだ。そのときノアが消えてしまうのではないかという不安が襲ってきたのも覚えてる。だが....今回はそれで助かったのだから文句も言えまい。とりあえず王太子に連絡しよう。それからミラー伯爵家の不審な動きを探らなくてはならない。


解決したらノアに会いに行こう。