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第310話「オーク討伐の依頼は見事に完遂された」

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元騎士のジェロームが、村民とともに働く農作業を楽しみにしていると分かり、
リオネルは、とても嬉しくなり、自分もすぐ眠りへ入った。

……翌朝、まだ真っ暗な午前3時に起床したリオネルとジェローム。

起きてすぐ、本日行動する内容のすり合わせを行った。

今日はまず、オークを討伐した砦へ向かい、村長達立ち合いのもと、依頼完遂の確認を行う。

その後、オークに荒らされた村の農地へ移動し、待機している村民達と合流。
全員で、大規模な農作業をする予定となっている。

リオネルとジェロームは冷たい井戸水で顔を洗い、くしで髪を整え、
愛用の防具、革兜を被り、革鎧に身を固め、同じく愛用の武器を装備。
トータル30分かからずに身支度を完了した。

「おはようございます!」
「おはようございます!」

やがて村長、助役、自警団団長、副団長が、宿舎へやって来て、
朝の挨拶が飛び交い、6人は、リオネルがワレバットでレンタルして、村まで乗って来た馬車に乗り込んだ。

御者役は、リオネルが務める。

御者台にリオネルが座り、その傍らにジェロームが座り、
村長達は馬車の荷台へ乗った。

そうこうしているうちに、少しずつ夜が明けて来て、空が明るくなって来た。

遠くから、起き出した鳥や獣の声が聞こえるが、
今までのようにオークどもに怯えた声ではない。
夜明けを歓迎した元気な声だ。

リオネルは馬に当てず、鞭を鳴らし、音だけで合図。

馬車はゆっくりと村内を走り、村長の指示で、門番に正門を開けて貰い、
村道へ……

召喚サモン

ここでリオネルは、召喚魔法でケルベロスを呼び出した。

わお~ん!!

殺気のない、咆哮とともに、
体長2m、体高1mの灰色狼風ケルベロスが、魔方陣から勢い良く出現!
巨体が躍り、とんでもない速度で走り出して行く。

以前、ケルベロスを『使い魔』として、見せた事。
本日砦へ赴く際、索敵、敵の排除を命じたと、昨日の食事の際、告げた事もあって、
馬車に同乗した村長達は、ケルベロスに驚いたり、動揺はしない。

否、まだ薄暗く、周囲をうっそうとした森に囲まれた村道を走るのに、
却って、心強く頼もしく感じているようだ。

村長達の期待通り、ケルベロスが周囲を、威嚇しながら走った事もあって、何も起こらない。

馬車は、妨害もなく順調に走り、進んで行く。

昨日リオネル達は、馬車が通りやすいように、
けもの道の石をどけたり、草刈りをしておいたので、走行はスムーズだ。

しかし、オークに占拠されていた砦に近づくにつれ、村長達は緊張して来た。
少し身体が強張っているようだ。

村は長年オークどもの脅威に散々さらされていたので、
心身に恐怖がしみついているかららしい。

40分ほど走り……馬車は砦前の森に到着した。

ここでケルベロスが、リオネル達の下へ戻って来た。

少し離れた場所に見える、旧き砦は静まり返っている。

ケルベロスに先導させ、リオネル以下、6人は用心しつつ、砦へ近づいた。

そのまま砦の周囲をざっと1周する。
村長達は、おっかなびっくりという感じ。

リオネルにより、3か所全ての出入り口はふさいであった。

出発してからず~っと索敵を行っており、オークの気配は当然ない。
昨日の今日だし、オークが全て倒されてから、新たな侵入者も居ないはず……

しかし、慎重なリオネルは、索敵を最強最大レベルにして、改めて探った。

結果、やはり異常はない。

リオネルは収納の腕輪から鋼鉄製ゴーレムを10体出し、起動した。

ゴーレムにより、正門の岩と土をどかし、砦の中へ入る事に。

村長達は緊張がMAXに達している。

無理もないと思ったリオネルは念の為、回復魔法『全快』を全員へ行使。

「おおお! これはあ!」

村長達はリオネルの回復魔法に驚愕しつつ、大喜びした。
恐怖感は完全に無くなるわけではないが、体力が回復し、気持ちも前向きとなったからだ。

リオネルは、ケルベロスとゴーレムへは、リスク回避の為、万全を期して、
護衛として6人を先導する事を命じた。

準備万端の上で、砦内へ入ってみれば……
内部の様子は全く変わっていない。

依頼完遂確認用の、討伐されたオークの死骸10体余りも、
そのまま片隅に積み上げられてあった。

リオネルとジェロームは安堵した。

一方、おぞましさに顔をしかめながらも……村長達4人はオークの死骸を確かめる。

「うっわ! こんな奴ら、良く倒せましたねえ……」

オークの死骸は、ノーマルタイプよりもやや大型の上位種が多い。
凶悪な顔を、間近で見る事が少なく、オークに慣れない一般人には迫力満点だ。

やがて確認は終わり……オークの死骸は葬送魔法『鎮魂歌レクイエム』で塵にされた。

無詠唱、神速、円滑。
リオネルが葬送魔法を使う手際は、3拍子揃い、極めて鮮やかだ。

結果、積み上げられていたオークどもの死骸が完全な塵となり、跡形もなく消失。

村長達がホッと安堵したのは言うまでもない。

次は、建物内へ入っての確認となる。
討伐すべきオークが残っていないか、見届けるのだ。

はっきり言って、オープンな野外より、
オークが巣食っていた荒れ果てた屋内へ入る恐怖は、けた違いに大きい。

「うう、お、怖ろしい。仕事じゃなきゃ、ぜ、絶対に入るのは無理だよ……」

村長達は、ガタガタ震え、相当びびっていた。

だが、役目上仕方がない。
オークが全滅した事を見届けて貰わねばならないからだ。

ゴーレムを残し、6人とケルベロスは砦本館を始め、各所の内部を回った。
リオネルは照度が高い魔導光球を呼び出し、建物内を照らしたので、
村長達の恐怖はやわらいだようである。

当然オークどもの姿はなく、1時間余りかけ、村長達の確認は無事終了。

「も、問題ありません。リオネル様、ジェローム様、本当にありがとうございました」

こうして……
リオネルとジェロームが受諾した、オーク討伐の依頼は見事に完遂されたのである。
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