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第370話「さて、どうする?」

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高貴なる4界王のひとり、水界王アリトンと邂逅。
水の加護を授けられ、数多の技法を習得。
極大攻撃魔法『大渦巻』『絶対零度』も伝授された。

更に水の精霊の境地アガムにて、
アリトン、そしてマイムを始めとした大勢のウンディーネと泳ぎ遊んだリオネル。

幼き頃……今は亡き母から読み聞かせて貰ったおとぎ話……
成長してから、気になって調べ、古文書で読んだ東方の伝説では、
海に招かれた冒険者が、様々な魚と舞い踊ったという伝説があるという。
リオネルは『それ以上』の素晴らしい経験をしたのである。

更に更に、アリトンは他の精霊達に負けじとばかりに対抗したのか、
配下の巨大な凍竜フロストドラゴンを「従士に」とつけてくれた。

アリトンに呼ばれ、リオネルの前に現れた時には、
凍竜は体長30m以上ある巨体だった。

だが、先に従士となった鳥の王ジズ同様、
一瞬にして、体長2mに満たない小型の飛竜になり……
自由自在に姿を変える能力を持つ事を見せつけた。

そんなこんなで、全てのイベント?が終わり、
リオネルは、アガムでアリトン、数多のウンディーネ達と別れ……

最後は、マイムひとりだけに送られ、
……気が付けば、現世で彼女に最初に出会った湖のほとりに立っていた。

つい頭上を見上げれば、太陽はまださんさんと辺りを照らしている。

水宮城、アガムで長き時間を過ごした感覚はあったのだが、
現世における時間は殆ど経っていないようだ。

マイムは交わした約束を守ったのである。

そのマイムは出会った時同様、リオネルの目の前で、湖面にふわふわと浮いていた。

『じゃあ、リオネル君、ここで!』

『はい! ここまで送って頂ければ大丈夫です。いろいろありがとうございました。アリトン様、皆さまへ、宜しくお伝えください』

『了解! ちゃ~んとお伝えしまあす!』

去る際に、マイムは、別れの言葉『さよなら』を言わなかった。

『リオネル君、他の精霊にも言われているかもしれないけど……』

『はあ……』

『水の件で困ったら絶対に私を呼んでね♡ それと!』

『それと?』

『私とデートしたい時も全然OKだよお!』

『うわっと!!』

『うふふふふふ♡』

最後の最後にとんでもないことを言われてしまった。
ティエラ様、リーアとの兼ね合いもある。

下手な事は言えない。

思わずリオネルは、くちごもる。

『ええっと……』

『うふふふ♡ リオネル君って、か~わいい! またね♡』

マイムは、再会を匂わすように、にっこり笑ってウインク。

手を軽く振り、す~っと消えてしまった。

対して、苦笑し、深く一礼したリオネル。

踵を返すと、街道へ向かい、元気よく歩き始めたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ウンディーネのマイムと別れ、湖を後にしたリオネル。

途中、転移魔法を発動、街道付近の雑木林へ跳んだ。

ひと気のない事を確認し、街道を歩いて行く。

しばし歩き、地図を確認する。

リオネルは、もうあと20kmほど進めば、
ソヴァール王国と、隣国アクィラ王国との国境付近にある町、
レ・ワイズへ到着する位置に居た。

国境を越え、更に60kmほど進めば、迷宮都市フォルミーカに到着する。

フォルミーカへ到着したら、まず冒険者ギルドへ赴き、情報収集。 
そして街を探索し、準備を整えたら、迷宮へ入る。

規模は全く違うというが、英雄の迷宮における経験がリオネルにはある。
自身の能力もアップし、頼もしい戦友も増え、不安よりも期待の方が大きい。

現在位置を確認した後、リオネルは魔導懐中時計を取り出し、時間も確認する事にした。

……午後4時30分。

今夜は、レ・ワイズで宿を探し、宿泊するか。

リオネルは、ワレバットの冒険者ギルド総本部の図書館で、
レ・ワイズに関しての資料を読んだ事があった。

隣国アクィラ王国との国境付近にある『渡り鳥』という意味を持つレ・ワイズは、
人口は約1万人強。
広さは、王都オルドルの半分の面積くらい。
ソヴァール王国、アクィラ王国、両国の文化が混在する町である。

レ・ワイズには、アクィラ王国の名物料理を出す店が、結構あるらしい。

ぜひ食べてみたいし、美味しいなら、レシピを聞いて、レパートリーへ加えたい。

食欲と好奇心が旺盛、料理好きなリオネルならではの欲求である。

武器防具、魔道具店等も見て、買い物もしておきたい。

さて、どうする?

駆け足で走るか、それとも転移魔法で一気に行くか、迷うなあ……

飛ぶのはナシだ。

いろいろ考え、迷いながら歩いていたら、あっという間に15分ほど経ってしまった。

あんまりぐずぐずしていると、宿の確保がヤバイか。

リオネルは周囲を索敵……魔力感知で確認、肉眼で視認もした。

気配を感じない、人影もない。

決めた!
転移魔法を使う!

転移トランジション!』

瞬間。

リオネルの姿は街道から、煙のように、消え失せていたのである。
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