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第498話「まあ、収穫ゼロというわけじゃない。得たものはあるし、次だ次」

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古代遺跡の調査を終えたリオネルは、再び探索を再開。
地下143階層、そしてその先へ向け、元気よく出発した。

いつものようにシーフ職スキルを駆使し、
『隠形』『忍び足』で、すっ、すっ、すっ、と空気の如く進む。

障害物があれば、転移、飛翔の失われた魔法、

ジャンプ、幅跳び、高所からの落下、木登りし樹上にての軽業など、

確信を得た超人的な身体能力を行使し、楽々と進んで行く。

索敵――魔力感知を最大範囲で張り巡らせ、外敵への警戒も怠らない。

くまなく地下142階層を歩き回り、ドラゴン族、巨人族を各10体余り討伐し、
下層への階段を発見。

オルトロス以下、仲間達と警戒しながら、地下143階層へと降りる。

見える風景は、地下121階層から、全く変わらない。

リオネルはキャンプで見た地図の内容を思い出す。

「ええっと……ギルドの公式地図だと、もう少し行けばまた古代遺跡があるはずだ」

……ギルドの公式地図の記載は確かであった。

リオネルが10分ほど歩くと、先ほどと同じ形状の古代遺跡が見えて来た。

何と、ストーンサークルまである。

ストーンサークルは上層の142階層と全く同じ仕様……

古代遺跡3棟の前に、円陣状に並んだ高さ10mほどの直立巨石と、
それを囲む土塁からなる『ストーンサークル』があるのだ。

リオネルは142階層と同じく、ストーンサークルを丹念に調べて行く。

円陣状に並んだ直立巨石も相当ふるい。
直立巨石からは、結構な魔力を感じるが特に異常はない。
土塁も同様で、魔力を感じるが、特別な仕掛けはなかった。

念の為、2回調べたが、やはり変わったところはなかった。

そしてストーンサークルの中央には、先ほどリオネルが見た、
特異なマークが地面に埋め込まれた石に刻まれている。

先ほど初めて見た時から、記憶をたぐってみたが、思い当たるデザインではない。

やはり見た事がない意匠であり、リオネルが推測するに、
どこかの国の国章か、王家、貴族家の紋章かと思われる。

マークを調べると、
やはりどこかへ延びる地脈とつながっている、不可思議な魔力を感じる。

!!!

ここで!
リオネルはひらめいた。

手掛かりが全くないまま、
このマークポイントに触れ、転移魔法で跳んでみようかと。

もしかして、この地下143階層から地脈経由で、
上層142階層のストーンサークルへ行けるのでは。

と考えたのだが、
更に熟考した結果……未知の場所へ飛ばされるリスクの割に、
たった1階層の移動では、メリットがなさすぎると思い直し、却下した。

それにわざわざストーンサークル経由で行かずとも、
リオネルならば、普通に転移魔法で跳ぶ事が出来るのに意味がない。

この143階層も謎めいたストーンサークルであったが……
やはり現状で調べる事はもうなかった。

142階層ともども、ストーンサークルのマークポイントを起点にして、
隠された方法で起動させれば、迷宮内の様々な場所、秘密の場所へ行けるのでは? 
というのが、リオネルの推測だ。

この推測は当たっているかもしれないが、もう少し調べてみよう。

142階層同様、リオネルは、ストーンサークルの後方にある、
建築物の調査、確認作業へ移ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……こちらもいつもと同じく、リオネルの建築物の調査、確認作業は行われた。

照明魔法で魔導光球を生成、潜入させ、ゴーレムを突入させてから、中へ入る。

しかし、残念な事に、地下143階層の建築物の内装も、
生活臭バリバリ出ている石で造られたベッドや戸棚。

棚と思しき壁のくぼみ。

更に石で造られた食料保存用らしき大きな箱などなど……
上層の142階層と全く同じ仕様であった。

大きな箱には……様々な匂いが混在。
ゴーレム達が使用している痕跡もあった。

結論から述べれば、はっきり言って大きな成果はなかった。

ボトヴィッドが遭遇したように、至宝レベルのとんでもないアイテムが入った、
『宝箱』の出現などは、全くなかったのである。

ストーンサークルの転移も含め、様々な状況と証拠により、
リオネルが推測した『可能性』が「わずかに高くなった」くらいだ。

だがリオネルには、一番最初の探索の際感じた落胆はなかった。

これまた、いつものように独り言で、自問自答する。

「まあ、収穫ゼロというわけじゃない。得たものはあるし、次だ次」

「ストーンサークルが凄く気になる。何か大きな秘密が隠されていそうだ」

「このフロアも入れて、地下149階層までは7階層もある。これから何度も古代遺跡には遭遇するだろうし、探索調査して、何かあったら、ラッキーレベルだ」

「地下150階層へ至るまで、何でも良いから手掛かりを得たいものだ」

うんうんと納得したように頷くリオネルは、再び探索を開始したのである。
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