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第532話「ご許可を頂きましたので、イェレミアスさんへお伝えします」

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「おお、助かる! 大歓迎だ! あとで倉庫へ案内しよう!」

思いがけないリオネルの提案を聞き、
イェレミアスは嬉しそうに、にっこりと笑った。

余剰物資を譲って貰えると知り、イェレミアスは更に機嫌が良くなり話が弾む。
生活関係の話を離れ、話題は魔法全般へと移行する。

……とはいってもお互いに秘密を持つ高位術者。

秘奥義レベルの魔法やスキル等々について話す際は、言葉を選び、
表現もストレートにではなく、遠回しとなる。

イェレミアスは、ずばり全属性魔法使用者オールラウンダーとなった経緯を尋ねた。

対してリオネルは『精霊』の加護を受けたと答える。
リオネルの答えを聞き、イェレミアスは驚愕した。

更にリオネルは、ノーム、シルフ、ウンディーネ、サラマンダーの4大精霊ではなく、上位精霊の加護を受けたと告げたのである。

「な、何い!? 上位精霊だとお!? ま、まさか!! 高貴なる4界王が!?」

さすがは1,000年の長き時を生き、魔法に長けたアールヴ族の術者である。
上位精霊に加護を受けたというリオネルのコメントを聞き、
イェレミアスからは即座に高貴なる4界王という言葉が出た。

「はあ……」

「も、もしや!! き、君は!! 高貴なる4界王に会ったというのか!!」

「申し訳ありませんが……それ以上はノーコメントですね」

「うむむむむ……ノーコメントだと!! もっと知りたい!! これ以上、聞かせてはくれないのか!!」

「ええ、先ほどから俺ばかりが話していますからね。そろそろイェレミアスさんが話す番ですよ」

「うむむむ……そろそろ私が話す番か。確かに正論だ。では、一体何を話せば良いのだ? 具体的な希望を言ってくれ!」

「そうですねえ。例えば……イェレミアスさんの一番得意な魔法とか、それとも故郷イエーラの懐かしい話とかですね」

リオネルが聞きたい内容の希望を出すと、イェレミアスは即答せず無言となる。

「……………………………」

どうやら……話すべきか、考え込んでいるようだ。

ここでリオネルが読心の術……サトリのスキルを使えば、イェレミアスの内面や事情を知る事は出来る。

しかし、そんな野暮な事はしたくないし、何よりイェレミアスが心にガード機能を施している可能性もある。

心を覗こうとする行為も、気づかれるかもしれない。
そうなったらイェレミアスに嫌われる可能性は大。

リオネルがそんな悪手を使うはずもなかった。

しばし考え込んだ後、イェレミアスは決断したようだ。

「う~むむむ。私の一番得意な魔法、そして故郷イエーラの懐かしい話か……分かった! 話そう!」

と、その時。

『お~い。私もアールヴのおじいちゃんの話、いろいろ聞きたいなあ!』

リオネルとイェレミアスの心の中に、特徴のある女子の声が響いたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さすがに高位術者とはいえ、ふたりで熱心に話し込む無防備な状態で、
ささやかれたから、大いにびっくりした。

特にイェレミアスの驚き方は半端なかった。

「な、な、な、何者だああ!!! ここには邪まなる者を寄せつけず、退ける破邪の高位魔法を施しておる!!! 悪魔や魔物が入り込めるわけがない!!! 奴らの思念もだ!!!」

自宅の防御システムを簡単に破られたようだから、驚愕するのも当然であろう。
主イェレミアスの驚愕に連動し、護衛のゴーレム達も身構え、戦闘態勢へ入る。

だが、一方のリオネルはといえば、一瞬だけ驚いたものの、後は堂々として、落ち着き払い、泰然自若とした様子だ。

更には高位の破邪魔法を行使したという、イェレミアスの魔法レベルを知る事も出来た。

そして、イェレミアスへひと言。

「イェレミアスさん、大丈夫。この方は、邪まなる者ではありませんから」

冷静沈着なリオネルの言葉を聞き、イェレミアスは驚き大きく目を見開く。

「な、な、何いい!!?? この方は、邪まなる者ではないだとおお!!?? リオネル君は、念話で我々に話しかけた者の正体を知っているのかあ!!??」

対して、リオネルは即答。

「はい! 俺を導いてくれた方々のおひとりです!」

「な、な、何いい!!?? リオネル君を導いたああ!!??」

にこにこと笑顔で話すリオネルを見て、イェレミアスの興奮は徐々に収まって来たようだ。

ここでリオネルは問う。
当然、念話で呼びかける。

『あのお、イェレミアスさんにお名前とご身分をお伝えして宜しいですか?』

対して、女子の声は即答。

『うふふふふ、良いわよお! オッケ~、オッケ~! ついでにリオの脇に座る同席の許可も貰ってねえ♡』

『了解です!』

と、リオネルは返事を戻し、イェレミアスへ言う。
こちらは肉声である。

「ご許可を頂きましたので、イェレミアスさんへお伝えします」

姿勢を正して話すリオネル。
その様子を見て、ご許可を頂いたという言葉もあり、イェレミアスも察したらしい。

念話で呼びかけた女子の声はリオネルの知る者で高位の存在であると。

「この方は、高貴なる4界王のおひとり、地界王アマイモン様のご令嬢、ティエラ様です」

「な!!?? な、な、何いいいい!!??」

先ほど以上に驚愕するイェレミアスを見て、
対面に座ったリオネルは柔らかく微笑んでいたのである。
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