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第535話「うふふ♡ イェレミアスおじいちゃんの話に補足させて……」

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笑顔のリオネルは、

「はい、イェレミアスさん。最後のくだり、肝心な部分が抜けていますよね?」

と、ほがらかに質問した。

「な、何!? 肝心な部分!?」

リオネルのコメントを聞き、驚くイェレミアス。

更にリオネルは念を押すように告げる。

「はい、肝心な部分が抜けていますよ」

「むうう……」

唸るイェレミアスであったが、やりとりを聞いていたティエラも面白そうに笑う。

「うふふ、リオの言う通りよ。イェレミアスおじいちゃんの話には肝心な内容が抜けているわ」

ティエラからもダメ押しされたイェレミアスであったが……

「…………………………………………」

難しい表情となり、黙り込んでしまう。

ここでリオネルが挙手。
ひと呼吸入れ告げる。

「まあ、そうは言ってもあくまで推測ですが、俺からお話ししても構いませんか?」

「…………………………………………」

「多分、イェレミアスさんの跡を継がれた後継者さん……新たなソウェルとの兼ね合いですよね」

対してイェレミアスは無言。
何も答えない。

沈黙が部屋を包んだ……

良く沈黙は肯定のあかしともいうが、イェレミアスがここまで言いにくそうにしているのは相当な内容でありそうだ。

……誰もが無言のまま、しばしの時間が経った。

こらえきれなくなったのか……再び口を開いたのはイェレミアスである。

「……ふむ、確かにリオネル君が言う通り、そしてティエラ様がおっしゃった通り、私は肝心というか、大きな事象を伏せている……そして、それは、リオネル君が言う通り、私が後を託した者との兼ね合いだ」

対して、リオネルとティエラは引き続き無言。
イェレミアスが認めた事で、話す事を促す意味もあるのだろう。

そんな両者を見て、イェレミアスは苦笑。

大きく息を吐くと、話し始める。

「この古代文明が持つ魔法、技術は、全てではないが、大部分は我がアールヴ族の叡智えいちを超える素晴らしいものだ」

「…………………………………………」

「我が故郷イエーラへ持ち帰れば、一族の発展に大きく寄与する事は間違いない」

「…………………………………………」

「しかし、私が後を託したものは、旧態依然としたアールヴ族至上主義に染まっている……」

「…………………………………………」

「持ち帰った魔法、技術が『人間の生んだものだ』と告げれば、現ソウェルは嫌悪感を示し、激しく拒否するだろう」

「…………………………………………」

「かと言って、これらの魔法、技術が私イェレミアス・エテラヴオリが研鑽けんさんの末、生み出したものと偽る事など出来ない」

「…………………………………………」

「そんな卑怯な事は私の誇りが許さない! 絶対にだ!」

きっぱりと言い切ったイェレミアスは、唇をぎゅっと嚙み締めたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

イェレミアスは、更に話を続ける。

「これらの古代文明の魔法、技術を持ち帰れば、人間が生み出したものなど不要だと、新たなソウェルは拒否する。これは間違いない」

「…………………………………………」

「しかし、我が一族がこれらの魔法、技術を知れば、ぜひ取り入れたいという者も絶対に出て来る」

「…………………………………………」

「何故なら、一族にとって役立ち、必ず大きなメリットをもたらすからだ」

「…………………………………………」

「持ち帰ったのが、前ソウェルの私ならば尚更だ。取り入れたいという者は必ず私をかつぎ、ソウェルへ復帰させようとするだろう」

「…………………………………………」

「そうなると、せっかく現ソウェルによりまとまりつつあるイエーラに、大きな乱れが生ずる。とんでもない争いの種となってしまう」

「…………………………………………」

「そうなったら、本末転倒。良かれと思って、魔法、技術を持ち帰っても、真逆。却って、災いを招く事となってしまうのだ」

「…………………………………………」

「いろいろシミュレーションしても、上手く折り合いをつける方法は思い浮かばない」

「…………………………………………」

「この遺跡には、まだまだ未発見、調査、習得するものも多々ある」

「…………………………………………」

「という言い訳を私自身に納得させ、私はイエーラへ戻らず、今もここに居る……というわけだ」

「…………………………………………」

……どうやら、イェレミアスの話が終わりそうだ。

しかし、ここで「はい」と挙手をしたのがティエラである。

「うふふ♡ イェレミアスおじいちゃんの話に補足させて……」

「私の話に補足? ティエラ様が?」

話に補足……イェレミアスは怪訝な表情となる。

対してティエラは大きく頷き、

「うん! おじいちゃんがイエーラを旅立ったのは、現ソウェルを一人前にする為でしょ?」

「な!!??」

「おじいちゃんがイエーラに居ると、どうしても頼っちゃうからね♡」

驚くイェレミアスに対し、
ティエラは、うふふふと悪戯っぽく笑ったのである。
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