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第544話「あははははは! 40年ぶりだなあ! 生きてたのかあ!」

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ティエラが去った後、フォルミーカ迷宮最下層のケアをして、
イェレミアスとリオネルは、出発した。

気になる留守の間は、イェレミアスの判断で、
リーダー格のゴーレムに、任せておくことになった。

簡単にストーンサークル転移の秘密が解明されるとは思えない。

だが万が一、侵入者、襲撃者が出現した場合、
戦闘タイプの人間型ゴーレムたちが迎撃。

ただどうしてもという時以外、命までは取らないよう命じてある。

敵を無力化させた上、気を失わせ、
適当な階層へ強制転移させるようにしたのである。

そして地上へ移動の段取りだが……

リオネルは安全確保の為、ストーンサークルの転移装置で、
灰色狼風に擬態した、ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟を転移させ、
先行させることにした。
ちなみに、それ以外の仲間たちは、収納の腕輪内か、異界で待機させている。

つまり、魔獣兄弟に転移先で他の冒険者が居ない事を確かめて貰い、
次にイェレミアスとリオネルが、ストーンサークルの転移装置で、転移するのだ。

更に具体的に言えば、まず地下150階層へ転移する。

地下150階層からリオネルが転移魔法を行使し、魔獣兄弟をまたも先行させ、
とんでもなく、超ショートカット! 一気に地下10階層まで転移!

地下10階層からは、身体慣らしも兼ね、徒歩で地上まで行く。

そんなリオネルの思惑通り、事は運んだ。

ストーンサークルの転移装置は問題なく働き、
散々修行したせいもあり、リオネルの転移魔法も迅速な発動かつ、
制御も完ぺきであった。

ストーンサークルの転移装置の謎を解き、使いこなすものの、
自身が転移魔法を行使不可のイェレミアスからすれば、
無詠唱で事も無げに転移する、リオネルの能力に感嘆する以外なかった。

さてさて!
先行転移した魔獣兄弟に確認、念話連絡の繰り返しで、
リオネルとイェレミアスは、地下150階層、更に地下10階層へ到達。
そして、地下10階層からは、ひたすら階段で上層へ上がり、地下1階層へ。

途中で、護衛役の魔獣兄弟は異界へリターン。

リオネルとイェレミアスのふたりきりとなる。

そんなこんなで、正規の出入り口から、冒険者ギルド所属登録証を見せ、
イェレミアスとリオネルが堂々と退出したのである。

出発したのは、午後0時くらいであったが……
結局、地下1階層を出たのは、約1時間後の午後1時前という、
超が付くスピード退出。

地上と言うか、正確には地下街なのだが、
じっくり数か月間にわたり、フォルミーカ迷宮を探索していたのが嘘のようだと、
フォルミーカ地下街の街並みを見ながら、リオネルは思う。

イェレミアスに至っては、地上へ出たのが約40年ぶりだと言う。

長命のアールヴ族にとって、40年間強という時の流れは、
人間族の約半生以上という感覚に比べれば、ひどく短いらしい。

しげしげと地下街の風景を見て、

「う~む。『ほんの少し』見ない間に、だいぶ街並みが変わっているな」

と感慨深げであった。

40年前のフォルミーカの街は知らないが、
現在のフォルミーカは、リオネルにとっては今や勝手知ったる街。

まずリオネルは、イェレミアスを『魔道具店 クピディタース』へ連れて行く。

リオネルへ、イェレミアス宛の手紙を託した、
店主ボトヴィッド・エウレニウスに対し、
親友との再会を演出しようというサプライズだ。

ふたりで歩いて行き、見やれば、幸いクピディタースは営業中である。

開いていた店の出入り口から中へ入り、リオネルが声を張上げる。

「ちゃ~っす、ただいま迷宮から戻りましたよ、ボトヴィッドさん!」

すると、リオネルが再起動させた、店番のゴーレム、アートスが近寄って来る。

「魔道具店クピディタースへようこそ、いらっしゃいませ、リオネル様、そしてイェレミアス様」

アートスは、リオネルは勿論、イェレミアスの事も、
はっきりとおぼえていたようだ。

「ははは、そして? 私はついでか?」

アートスから後回しで呼ばれ、少しすね、苦笑するイェレミアス。

そんなやりとりを聞きつけ、奥に居たらしいボトヴィッドが出て来る。

「お~い、どうした、客か? アートス」

その瞬間。

店内に居るリオネルとイェレミアスの姿を認め、驚きのあまり、
ボトヴィッドは固まってしまったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ボトヴィッドは『穴の開くほど』リオネルとイェレミアスを見る。
または、目を大きく見開く様子から、
『とてつもない凝視』という表現がぴったりだろう。

まるまる1分ほど経って、固まっていたボトヴィッドがようやく動き始める。

リオネルとイェレミアスを、改めてじっくり、まじまじと見て、
大きく声を張り上げる。

「おいおいおいおいおいおい~~!!! な、なんてこったあ!!! これは夢かよおお!!!」

そして、ボトヴィッドは顔をくしゃくしゃにして、大粒の涙を流す。

「リオネル君! 俺の手紙を届けてくれただけじゃなく! イェレミアス本人を連れて来てくれたのかあ! 本当にありがとよお!」

と礼を言い、改めてイェレミアスを見ると、思い切り笑い飛ばす。

「あははははは! 40年ぶりだなあ! 生きてたのかあ! イェレミアス! 長命のアールヴ族かつ、無愛想で頑固じじいのお前なら、簡単にはくたばらねえとは思っていたぜ!」

対して、イェレミアスも嬉しそうに笑う。
こちらも目に涙が光っている。

「はははははは、無愛想で頑固じじいだと? どっちがだ! ボトヴィッド! その言葉、そっくりお前に返してやるぞ!」

40年ぶりに再会したイェレミアスとボトヴィッドは、
互いに駆け寄って固く抱き合い、旧交を温めたのである。
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