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第648話「分かった! 吉報を待っているぞ。私も武運を祈る。但し、ふたりとも、命を大事にして欲しい」

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「はい! 我々がドラゴンどもを討伐したあかつきには、閣下のご誠意が発揮され、両国の友好を深めると、ヒルデガルド様と自分は信じておりますので」

きっぱりと言い切ったリオネルは、ベルンハルドをじっと見つめ、
深く一礼した。

そんなリオネルを見て、ベルンハルドも、

「分かった! リオネル殿! レジェンドと呼ばれるランクSの手並み、ヒルデガルド様とともに、存分に見せて貰おう」

「了解です、宰相閣下。ご依頼頂いたからには誠心誠意頑張ります」

「うむ!」

「では、事前の現地調査を行った上、早速ドラゴン討伐に取り掛かります。現地での活動、魔物の召喚を始め、もろもろの許可をお出し頂けるようお願いします」

「分かった! それで魔物の召喚とは!? マウリシオから聞いたが……やはり、本当なのか?」

ギルドマスターのマウリシオから報告を受けていたが……
リオネルの召喚対象が規格外過ぎて、信じていなかったようである。

「はい、本当です。今回は従士として魔獣ケルベロス、オルトロス、グリフォンを呼び出します。必要があれば更なる召喚も」

「ほう! そうか!」

「はい! 先にも申し上げましたが、彼らを連れ、まずは現地に赴き、事前調査を行いますので」

「むうう……それにしても、ケルベロス、オルトロス、グリフォンとは……そうそうたる顔ぶれだな」

「はい、宰相閣下。但し、非常時以外、例えばケルベロスならば、三つ首で蛇の尾を持つ本来の姿はお見せしません」

「むうう……ケルベロスの本来の姿……三つ首で蛇の尾を持つか……」

「です! 皆様に恐怖を抱かせない為、従士達は擬態させますよ。下手にドラゴンどもを刺激しない為でもあります。ちなみに魔獣兄弟は灰色狼風に、グリフォンは大鷲風に擬態させ、現場を下見させます」

「お、おお! そ、そうか! な、成る程! ……そ、それでだな、リオネル殿」

「はい!」

「あの、何だ。実はな、リオネル殿の召喚する従士を事前に見たいのだが」

「そうですか」

「ああ、この後、すぐ召喚して貰っても構わないか? ドラゴンの死骸同様、伝説の魔獣を間近で見てみたいという単なる好奇心なのだが」

まるで子供のように目を輝かせながら、照れ臭そうに言うベルンハルド。

……ここ数日のリオネルとヒルデガルドの言動、
今までやりとりしていた結果、ふたりが邪な考えを持たず、
アクィラ王国やその民に危害を加えないと考えたのであろう。

リオネルが、これだけの力を持ち、もし悪意があれば、
とっくにアクィラ王国を攻め立てているはずだと。

また、他国の上級貴族ではあるが、冒険者ギルド総マスターでもある、
侯爵ローランドの推薦もある。

そしてリオネルは、気難しく、他種族を見下すアールヴ族の長であったイェレミアスの信頼を得て、その孫娘たるヒルデガルドには心の底から慕われているのだ。

俸給で雇用されているとはいえ、
リオネルには醜い私利私欲も感じないし、信頼するに余りあると確信。

それゆえ、ベルンハルドは心を許して甘え、
まるで子供のようなお願いをして来たのである。

対して……
相手が喜び、こちらへの親近感が増す事から、断る理由がないし、
デメリットなく、叶えられる範囲内で相手の希望を呑もうと、
微笑んだリオネルは快諾する。

「はい、宰相閣下。ご確認の意味もありますし、全然構いません」

「そうか、ありがたい! ……本当は君の従士達の本体を、怖いもの見たさで見たい気もするが……とりあえず、やめておくよ」

……という事で、一行は王宮の中庭へ。

念の為、ベルンハルドは大勢の騎士に守られている状態だ。

リオネルは微笑み、声を張り上げる。

「では、召喚致します。5、4、3、2、1、ケルベロス召喚!」

すると! 少し離れた地面に魔法陣が浮かび上がり、
魔法陣から、うおん!と吠え、体長2mはあるシルバーグレイの巨大狼が現れる。

「続いて、オルトロス召喚!」

次に、漆黒の毛並みを持つ同じ大きさの巨大狼――オルトロスも、

魔法陣から、うおん!と吠え、現れた。

「そして、グリフォンも召喚します!」

とリオネルが言えば、

青い大空高く、いきなり大鷲――ジズが現れ、勇ましく鳴くと、
全員の頭上をゆうゆうと舞ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

リオネルに召喚された従士達は、
ベルンハルドの前でたっぷりとパフォーマンスを披露した。

魔獣兄弟『ケルベロス』『オルトロス』は力強さと俊敏さを見せ、中庭を駆け回り、
大鷲に擬態したグリフォン……実は『鳥の王ジズ』は、急降下、空中回転他、
様々な飛行を見せたのである。

リオネルは更に『ゴーレム軍団』の数体も披露した。
鋼鉄製、青銅製、ミスリル製、3種のゴーレムを1体ずつ「搬出」し、
「ま!」と吠えさせ、歩かせ、力強くファイティングポーズを取らせたのである。

ベルンハルドと護衛の騎士達は、完全にギャラリーとなり、
従士達に見惚れていた。

その中でず~っと悩んでいたベルンハルド。
どうやら従士の素『本体』を見たくて、どうしようかと考えていたらしい。
さすがに最後は諦めたようであったが。
ちなみに、王国宰相のお願いでも本体を披露する選択肢はリオネルにはなかった。

という事で、マウリシオからギルドであったリオネルとヒルデガルドの、
剣技、格闘、魔法行使も聞いていたベルンハルドであったが、
多士済々な6体の従士達も見て、心の底からリオネルに感服してしまった。

驚くべき事に、リオネル曰はく、従士はもっとたくさん居り、
まだ何体も呼び出せるというのだ。

それを聞き、ベルンハルドは驚愕のあまり、言葉も出なかった。

伝説の魔獣達を従え、強靭なゴーレムも使役するリオネルは、
最早、伝説の勇者、英雄という域であろうと。

「宰相閣下! 召喚した従士達は、忠実に働いてくれますし、自分の剣となり、盾にもなります。頼もしい者達です」

微笑んだリオネルは、従士達を異界や収納の腕輪へ帰還させると、
更にベルンハルドへ告げる。

「宰相閣下、先ほどご相談した討伐に必要な資料、物資等はギルドマスターへお願いし、揃えて頂き、準備が整い次第、すぐ出発致します。出発前には必ずご連絡致しますので、住民の避難の方を宜しくお願い致します。討伐の経過は適宜、ご連絡致します」

リオネルの物言いに即、反応。
打てば響けとばかりに、ベルンハルドは言う。

「分かった! 吉報を待っているぞ。私も武運を祈る。但し、ふたりとも、命を大事にして欲しい」

「了解です、お任せください」

……こうして、ドラゴン討伐案件の依頼を、
正式に受諾したリオネルとヒルデガルドは、王宮を出て冒険者ギルドへ。

一緒に戻ったマウリシオと最終の打合せを行い、
ギルドから地図、資料、物資を受け取り、一旦ホテルへと戻ったのである。
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