外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!

東導 号

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第718話「もう何度も行っているから、何も心配は無い」

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この日の晩……イルヴァとモニカの母娘はダニエラとブレンダの指示を受け、
忙しくも、張り切って山猫亭で働いた。
人間に擬態した火の魔人イフリートのブライム、火の女魔人イフリータのルベルも、
興味深そうにしながら、宿屋の仕事を完璧にこなした。

事前の話の通り、午後8時過ぎに夕飯を食べに来たハンスが、
そのまま雑用等を手伝い、午後10時過ぎに仕事は終了。
カディオ一家は全員で最寄りの自宅へと帰って行った。

もしもハンスが仕事を手伝わずとも、
自宅までの護衛役を果たしてくれれば構わない。
これでカディオ母娘の勤務パターンはOKである。

しかしまだ懸念がひとつあった。

武道の心得がある愛娘ブレンダが居るうちは良いのだが……
彼女がイエーラへ旅立った後、夜の10時から朝の4時までは、
山猫亭に母ダニエラが『たったひとりきり』となってしまい、
防犯的な心配があるのだ。

フォルミーカの街は比較的治安が良い方だが、絶対に安全とは言い切れない。

以前、ブレンダが20名の愚連隊どもにいきなり絡まれた事もある。
その時は幸い、リオネルが撃退し、事なきを得たが、
同様に、複数の押し込み強盗に襲われれば、女性ひとりではどうしようもない。

そんなリオネルの懸念を感じたのか、
召喚した炎の魔人兄妹の妹、ルベルが声をかけて来る。
会話は当然、心と心の会話、念話である。

『リオネル様!』

『何だい、ルベル』

『差し出がましいとお思いになるかもしれませんが、兄ブライムをイエーラへ、そして私へは、ダニエラ様の護衛をお命じくださいませ。ダニエラ様の護衛を務めつつ、山猫亭のお手伝いを致します』

ルベルの提案を聞いたリオネルはにっこり笑顔。

このように状況を見極め、自分の果たす役割を進んで申し入れしてくれる。
人間に擬態し、側近として機能してくれるのも大きい。

さすがは火界王パイモン自慢の眷属である。

『ああ、お前からそう言ってくれると助かる。ダニエラさんもお前を気に入っているようだし』

『はい、お会いしてまだ日が浅いのに、ダニエラ様と私はとても気が合います。宿屋の仕事もひと通りおぼえましたし、上手くやれると思います』

ルベルはりりしく礼儀正しい。
てきぱきと行動し、良く気が付く。
男子顔負けの力持ちで、動作も機敏。

そんなルベルが嫌われるはずもない。

『そうか! お前はイルヴァさん、モニカさんとも上手くやっていたしな。ただひとつ気になる事がある』

『気になる事? それは何でございましょうか?』

『もしも山猫亭の宿泊客が働くお前にアプローチしたり、身元を知りたがった場合、どうする?』

『当然、一切をお断り致しますし、身の上も絶対に話しません』

『そうか。しかし振られた腹いせに、お前が不法入国者では? と誰かが町へ通報した場合は、衛兵が取り調べを要求するなど、少しややこしくなるかもしれないな』

『いえ、そのご懸念は無用です』

『無用? 何故だ?』

『はい、兄と私はパイモン様の命により、このフォルミーカより5万㎞南方の国、ジャヌーヴにおいて、冒険者ギルドに登録し、既にランクBの判定を受けております。これが所属登録証です』

ルベルはそう言うと、ミスリル製の所属登録証を見せてくれた。

確かに冒険者ギルドの所属登録証でルベルの名があり、ランクBと記されている。

『私達兄妹は、かつてジャヌーヴの奥地にあった少数の民が暮らしていた廃村の出身で、身内も居ないという設定ですから、問い合わせされても確認は99%不可能です』

『おお、そうだったのか』

『はい、パイモン様からリオネル様にお仕えするにあたり、人間に擬態する際の身分証を用意しておけとも命じられましたので、いろいろと準備しておきました』

『そうか、さすがだ。では問題は無しという事で、早速ダニエラさんへ申し入れしよう』

『はい、何卒宜しくお願い致します』

という事で、善は急げと、リオネルはルベルを連れ、
ダニエラとブレンダへ申し入れ。

対して、ダニエラは勿論だが、特にブレンダは大喜び。

これまで仕事でも防犯でも母を支えて来た自分以上にルベルは適任。
後顧の憂い無く、リオネルを愛しつつ、自分の仕事にも邁進出来るからだ。

会話はやはり、最近ずっとやりとりの練習をしている念話だ。

『旦那様、お気遣い頂きありがとうございます! これで何の心配も無くなりました! 心より感謝致します! 私、イエーラで、より一層頑張りますね!』

感極まったブレンダは自然にリオネルを旦那様と呼び、感謝の言葉を述べた。

するとリオネルも敬語をやめ、自然とブレンダに対し『妻』として接する事に。

当然、公の場では、しばらくビジネスパートナーとして接するから、
話し方はまた変わる事となる。

『申し訳ないが、ブレンダ』

『はい! 旦那様! 何でしょうか?』

『改めて明日から出発まで、ルベルにいろいろ教えてあげて欲しい。宿屋の仕事は勿論、このフォルミーカでの作法等々も』

『はい! 分かりました! お安い御用です!』

『明日は朝一番で市場へ行き、食材等の仕入れに行こう。メンバーはこの場の4人にイルヴァさんか、モニカさんのどちらかを連れて行く。その間、山猫亭はイェレミアスさんが居るから大丈夫だとは思うが、俺達が不在の間、留守居&護衛役を透明化したブライムへ命じる事にするよ』

『それならば安心ですね。重ね重ね、ありがとうございます』

『ああ、それと先の打合せで話したように、早速、人材の確保に動こう。調理、接客担当とも、人柄、能力ありきで新たな人財を確保する。午前の作業終了後に商業ギルドへ人材募集の相談に行くぞ。その後に、この山猫亭を建てた大工さんを訪ねて、隣のレストランも含めた増改築の打合せだな』

『はい! では私も一緒に行きます! 母も一緒の方が良いですよね?』

『だな。出かけている間は、留守をイルヴァさん、モニカさんへ任せよう。そして人間社会かつフォルミーカに慣れさせる為、ルベルも同行させるから』

『分かりました。心強いです』

……こうして明日の予定が次々と組まれ、この日は各自、就寝となったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌朝午前4時、リオネル達一行は市場へ。
メンバーは、リオネルとブレンダ、ダニエラとルベル、そしてモニカの計5名だ。

昨日の買い出しの際、留守番だったルベルはことのほか、嬉しそうである。

ロバに荷車を曳かせ、市場へ到着すると、
ダニエラとブレンダの指導で実際に食材の買い付けを行う。

パンは外部の店舗と自家製が半々、で様々な種類を購入。
肉と牛乳は購入する店が決まっている。
野菜は旬のものにこだわる。

今後、この買い付けを担うルベルとモニカは特に真剣。

予定した献立に沿って、様々な食材を購入する際も、
コストとの兼ね合いも含め、より品質の良いものを選ぶ、
目利きのスキルが必要となるからだ。

まあ一朝一夕に身につくものではないが、
経験しながら、センスを磨いて行くしかない。

そんなこんなで、買い付けが終わり、山猫亭へ戻ってから、
留守番をしていたイルヴァも加わり、朝食の準備。

宿泊客に朝食を出し、その後片付けをし、
『影仕事』をしていたルベルの兄ブライムが姿を現し、
イルヴァの夫ハンスも来て全員で午前9時にやや遅い朝食。

一緒に食事をする事で、互いに気心も知れて行く。

やがて山猫亭は増改築し、リニューアルオープン。
多国籍レストラン山猫亭も併設する輝かしい未来が見えている。

加えて、靴職人のハンスにも大きな発注が出されている。
今後の発注も期待出来そうだ。

手伝いの身でありながら、きびきびと働くリオネルやルベルの影響も大きい。

長く勤められるであろう、この好待遇の仕事を絶対に逃さない。
必ず成功させてみせる! 

と、イルヴァ、モニカ母娘の労働モチベーションは著しく上がっていた。

朝食後、ハンスが自分の店へ戻り、ブライムも姿を消して、護衛の任に就き……
宿泊客が本日のチェックアウトを終わらせると、
後をイルヴァとモニカに任せ、やっと外出が可能となった。

イルヴァとモニカに任せた仕事は部屋の清掃と受付、そして夕食の準備である。
もう何度も行っているから、何も心配は無い。

今度の外出メンバーは、リオネルとブレンダ、ダニエラとルベル。

「では、行って来ます。後を宜しくお願い致します」

「「行ってらっしゃい!」」

留守番をするイルヴァとモニカの声を背に受け、4人は歩き出したのである。
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