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第46話「敵中突破!①」
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絶体絶命の危機に陥った時……
人間は様々な反応を見せる。
平時と全く変わらない者。
臨機応変に対処する者。
怯えを見せず、却って開き直る者。
やけのやんぱちになるもの。
混乱し、自滅して行く者等々……
皆さんはこの物語の冒頭……
シモンがコルボー商会名物地獄のパワハラ訓練を受けていた際、ゴブリン数百体に追われた時の事を憶えていらっしゃるだろうか。
シモンはゴブリンどもに喰われる寸前という、当時としては究極の危機に陥った際。
開き直り、とんでもない魔法の能力を発揮して、危機を脱した。
行使したのが火属性魔法。
だから、まるで洒落のようだが、いわゆる火事場の馬鹿力である。
そして……
『ゴブリン襲撃事件』以降、シモンはとんでもない未知の力を発揮するようになった。
彼が己の人生で遭遇した最大の危機は、トレジャーハンターになった半年後……
辺境の地において、開けた無人の原野でたったひとり、巨大なドラゴン10体に囲まれた時の事だ。
最初は頭が真っ白になり、何も考えられなかった。
完全に死を覚悟した。
喰われるしかない……と思った。
しかし、開き直ると、いきなり気持ちが天まで突き抜けた。
ひどく冷静沈着となった。
さすがにドラゴン10体と、人間ひとりが一度には戦えない。
まあ、普通に考えれば、ドラゴン1体とだってまともには戦えないのだが。
しかし、1体ならば何とかなるかもしれない。
シモンは、そう開き直ってしまったのだ。
もしも1体と戦うのならば、10体の中で『最強のボス』を倒せば良い。
喰われたら、その時。
どいつに喰われても同じじゃないのかと。
捨て身の攻撃を決意したシモンは体内魔力を全開にし、大奮起。
ボス格のドラゴンのみを目指して、他には目もくれず突進。
まさに鍛冶場の馬鹿力を発揮!
ボスドラゴンのしっぽをつかんで思い切り投げ飛ばし、ごろごろ転がったところをマウントを取って殴りつけ、剣を使い渾身の力で急所を貫き、とどめを刺したのである。
すると、人間ひとりにボスドラゴンをやられた他のドラゴンどもは大混乱。
慌てふためき、逃げ去ってしまった。
そしてシモンは、人生最大の危機を脱したのである。
ここまでの大ピンチではないが、以降シモンは数々の危機に直面した。
そして大抵の事では臆さず動じなくなった。
究極的に追い詰められると、最終的には極めて冷静になる性質となってしまった。
180度ガラリと変わって泰然自若になるのだ。
しかしそんなシモンにもウイークポイントがある。
『女子』がもたらす衝撃である。
最近驚いたのは、アレクサンドラが王国復興開拓省へ超が付く好待遇でスカウトしてくれた時。
これは久々の『衝撃』であった。
はっきり言って、今回の『エステルの叱責事件』はスカウトの時を超える衝撃を受けた上、シモンは大混乱に陥った。
ここまで大混乱になったのは、エステルが高嶺の花たる美貌の『女子』である事。
聡明で冷静沈着なエステルが、普段は見せない感情の乱れを見せている事。
一種の『ギャップ萌え』なのかもしれない。
補足しよう。
ご存じだと思うが、念の為。
ギャップ萌えとは、相手の意外な一面を知って、魅力的に感じ、惹かれる事だ。
ありえないシチュエーションが生みだす萌えである。
さてさて。
話を戻そう。
シモンに対するエステルの叱責は、既に10分以上も続いている。
最初はいつもの通り冷静な彼女であったが……
言葉を重ねるごとに興奮が高まり、自分でもわけがわからなくなっていた。
何故ここまで執拗にシモンを責めるのか……
エステル自身も、シモンへ持つ『ほのかな想い』なのだと気付いてはいない。
この状況とは。
そう!
遂に来たのである。
エステル、そしてクラウディア?
シモンの人生23年において、生まれて初めてのモテ期到来?である。
長かった……
本当に長かった。
しかし、肝心のシモン本人が全く気付いてはいなかった。
概して、人生とはそういうものであろう。
ここでシモンの開き直りが発動した。
エステルの追及を聞きながら……
シモンは気持ちが急速にクールダウンして行った。
あの時に比べれば……
襲って来る敵?は可憐なエステルただひとり。
全然楽勝……じゃないか!と。
動揺していたシモンは、表情が変わる。
変わった後、達観したように笑った。
そんなシモンを見て、エステルは身を乗り出して迫る。
「局長! 黙ってないで、何とか言ってください! クラウディア様との間に何があったというのですかっ!」
「ああ、ごめんな、エステル」
「ご、ごめんって!? そ、そんなに簡単にっ! あ、謝るなんて!? い、一体どういう事なのですかっ!」
「うん、実は長官にも叱られたんだ。何故黙っていたのかって」
「ちょ、長官にも叱られた?」
アレクサンドラにも叱られた?
この言葉で、エステルは何故か一気にクールダウンした。
「シモンを責めたのは自分だけではなかった」と思い、少し落ち着いたのかもしれない。
「何故黙っていたと長官がおっしゃった? そ、それって?」
「まあ……最初から事情を話すから聞いてくれないか?」
「は、はい、局長。お、お聞き致します」
とうとうシモンから、クラウディアとの経緯が聞ける。
昨日どうなったのか、エステルは『顛末』も聞きたいとせがんだのである。
人間は様々な反応を見せる。
平時と全く変わらない者。
臨機応変に対処する者。
怯えを見せず、却って開き直る者。
やけのやんぱちになるもの。
混乱し、自滅して行く者等々……
皆さんはこの物語の冒頭……
シモンがコルボー商会名物地獄のパワハラ訓練を受けていた際、ゴブリン数百体に追われた時の事を憶えていらっしゃるだろうか。
シモンはゴブリンどもに喰われる寸前という、当時としては究極の危機に陥った際。
開き直り、とんでもない魔法の能力を発揮して、危機を脱した。
行使したのが火属性魔法。
だから、まるで洒落のようだが、いわゆる火事場の馬鹿力である。
そして……
『ゴブリン襲撃事件』以降、シモンはとんでもない未知の力を発揮するようになった。
彼が己の人生で遭遇した最大の危機は、トレジャーハンターになった半年後……
辺境の地において、開けた無人の原野でたったひとり、巨大なドラゴン10体に囲まれた時の事だ。
最初は頭が真っ白になり、何も考えられなかった。
完全に死を覚悟した。
喰われるしかない……と思った。
しかし、開き直ると、いきなり気持ちが天まで突き抜けた。
ひどく冷静沈着となった。
さすがにドラゴン10体と、人間ひとりが一度には戦えない。
まあ、普通に考えれば、ドラゴン1体とだってまともには戦えないのだが。
しかし、1体ならば何とかなるかもしれない。
シモンは、そう開き直ってしまったのだ。
もしも1体と戦うのならば、10体の中で『最強のボス』を倒せば良い。
喰われたら、その時。
どいつに喰われても同じじゃないのかと。
捨て身の攻撃を決意したシモンは体内魔力を全開にし、大奮起。
ボス格のドラゴンのみを目指して、他には目もくれず突進。
まさに鍛冶場の馬鹿力を発揮!
ボスドラゴンのしっぽをつかんで思い切り投げ飛ばし、ごろごろ転がったところをマウントを取って殴りつけ、剣を使い渾身の力で急所を貫き、とどめを刺したのである。
すると、人間ひとりにボスドラゴンをやられた他のドラゴンどもは大混乱。
慌てふためき、逃げ去ってしまった。
そしてシモンは、人生最大の危機を脱したのである。
ここまでの大ピンチではないが、以降シモンは数々の危機に直面した。
そして大抵の事では臆さず動じなくなった。
究極的に追い詰められると、最終的には極めて冷静になる性質となってしまった。
180度ガラリと変わって泰然自若になるのだ。
しかしそんなシモンにもウイークポイントがある。
『女子』がもたらす衝撃である。
最近驚いたのは、アレクサンドラが王国復興開拓省へ超が付く好待遇でスカウトしてくれた時。
これは久々の『衝撃』であった。
はっきり言って、今回の『エステルの叱責事件』はスカウトの時を超える衝撃を受けた上、シモンは大混乱に陥った。
ここまで大混乱になったのは、エステルが高嶺の花たる美貌の『女子』である事。
聡明で冷静沈着なエステルが、普段は見せない感情の乱れを見せている事。
一種の『ギャップ萌え』なのかもしれない。
補足しよう。
ご存じだと思うが、念の為。
ギャップ萌えとは、相手の意外な一面を知って、魅力的に感じ、惹かれる事だ。
ありえないシチュエーションが生みだす萌えである。
さてさて。
話を戻そう。
シモンに対するエステルの叱責は、既に10分以上も続いている。
最初はいつもの通り冷静な彼女であったが……
言葉を重ねるごとに興奮が高まり、自分でもわけがわからなくなっていた。
何故ここまで執拗にシモンを責めるのか……
エステル自身も、シモンへ持つ『ほのかな想い』なのだと気付いてはいない。
この状況とは。
そう!
遂に来たのである。
エステル、そしてクラウディア?
シモンの人生23年において、生まれて初めてのモテ期到来?である。
長かった……
本当に長かった。
しかし、肝心のシモン本人が全く気付いてはいなかった。
概して、人生とはそういうものであろう。
ここでシモンの開き直りが発動した。
エステルの追及を聞きながら……
シモンは気持ちが急速にクールダウンして行った。
あの時に比べれば……
襲って来る敵?は可憐なエステルただひとり。
全然楽勝……じゃないか!と。
動揺していたシモンは、表情が変わる。
変わった後、達観したように笑った。
そんなシモンを見て、エステルは身を乗り出して迫る。
「局長! 黙ってないで、何とか言ってください! クラウディア様との間に何があったというのですかっ!」
「ああ、ごめんな、エステル」
「ご、ごめんって!? そ、そんなに簡単にっ! あ、謝るなんて!? い、一体どういう事なのですかっ!」
「うん、実は長官にも叱られたんだ。何故黙っていたのかって」
「ちょ、長官にも叱られた?」
アレクサンドラにも叱られた?
この言葉で、エステルは何故か一気にクールダウンした。
「シモンを責めたのは自分だけではなかった」と思い、少し落ち着いたのかもしれない。
「何故黙っていたと長官がおっしゃった? そ、それって?」
「まあ……最初から事情を話すから聞いてくれないか?」
「は、はい、局長。お、お聞き致します」
とうとうシモンから、クラウディアとの経緯が聞ける。
昨日どうなったのか、エステルは『顛末』も聞きたいとせがんだのである。
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