74 / 160
第74話「ラクルテル公爵家のお招き④」
しおりを挟む
地獄のパワハラ研修では、議論により相手を説得するディベートも習得したシモンであったが……
結局はクラウディアの両親アンドリュー、ブリジットのラクルテル公爵夫妻の強烈ともいえる『押し』に負けてしまった。
アンドリュー、ブリジットとも、当然ながら愛娘と使用人を救ってくれた事には、大いに感謝しており、素直に礼を言う考えはある。
だから実際に会って、直接礼を告げる為、無理を言って、公爵邸へ来て貰った。
夫妻は会って、礼を言いながら、「シモンの『人物』を見極めよう」とも考えてもいた。
クラウディアと侍女のリゼットが絶賛するシモン・アーシュとは、実際どうなのだろうかと、しっかり確認したいと。
もしもシモンが、愛娘達が言うように『相当の器』ならば、単なるお礼以上の対応をしようとも考えていた。
ラクルテル公爵夫妻にとって、恩人のシモンはいろいろな意味で『保険』なのだ。
まずシモンとの「付き合いを許す事」で、彼を慕うクラウディアの両親への好感度は大幅にアップする。
これは間違いない。
更に……
シモンが強くて誠実な人柄であれば、付き合う事で、クラウディアは良い意味で、男子に慣れる。
つまり男子嫌い?は緩和されて行く。
万が一、シモンと上手く行かなくても……
将来しかるべき結婚相手と出会う努力をしてくれる……だろうと。
断り続けて来た、上級貴族の子息との見合いをOKしてくれるかもしれない。
もしももしも!
シモンが想定以上にとんでもなく強かったら……
単に娘の婿というだけでなく、旧知のアレクサンドラに筋を通した上で、騎士隊へ勧誘してもOK!とか……
当然養子にして、正式なラクルテル公爵家の跡取りとし、将来の王国軍幹部将校にとか、いろいろと深い思惑があった。
実は……
アンドリューの妻ブリジットは、親友でもあるこのアレクサンドラへ、
シモン呼び出しの了解を取る連絡を兼ね、
「シモン・アーシュは愛娘クラウディアの婿候補として、どうなのだろうか?」と、事前に相談をしていたのだ。
結果……
アレクサンドラからは、シモンの人柄、実力とも、はっきりと保証され、良き推薦を受けていた。
但し、「シモンにはすでに好意を持つ女子が居る」とも言われていた。
また「シモンの引き抜きは絶対にNG」だと、びしっ!と釘も刺されていた。
だが楽観的な性格のアンドリュー、ブリジットは夫妻ふたりで、アレクサンドラへ、「ぜひに」と頼み込めば何とかしてくれるとも考えていたのである。
しかし……
『全て』を知るにつれ、夫妻ふたりはシモンにぞっこん惚れ込む事となるが、それはまた後のお話……
……話を戻せば、ラクルテル公爵夫妻の押しに加え、クラウディアからは「うるうる目」でお願いされてしまった。
こうなるとシモンは、このまま帰るわけにいかず『バトル』をOKするしかない。
「公爵閣下、奥様、分かりました。俺バトルをお受けします。但し条件があります」
シモンがバトル勝負を受けてくれた事で、アンドリュー、ブリジットの顔は輝いた。
喜色満面となる。
シモンの出す条件を聞こうという気持ちになった。
「おお、条件か! 何でも言ってくれ」
「ええ、こちらから、無理にお願いするんだもの。最大限考慮するわ」
「はい、こちらから条件はいくつかあります。まず勝負の結果がどうであれ、うらみつらみは一切なし。遺恨を残さない事」
「ふむ、当たり前だ」
「当然ね!」
「それと命まで懸けるバトルは……お断りします」
「ふむう!」
「では? シモン君は何か勝負方法を考えているのね?」
「はい、公爵閣下、腕相撲で勝負させてください」
「腕相撲! おお、成る程! それならば、分かりやすい。短時間で且つはっきりと勝負がつく」
「うふふ、名案ね」
そして何と!
シモンは信じられない条件を出して来たのだ。
「それと、念の為。俺は魔法使いで元トレジャーハンターですが、魔法は使いません。身体強化魔法も攻撃魔法も防御魔法も、スキルも一切使いません。奥様がおっしゃったラクルテル公爵家の家風にのっとって、力のみで勝負します」
これにはさすがにアンドリュー、ブリジットは驚いた。
想定外の展開である。
「おおっ、魔法やスキルを使わず、正々堂々と自分の力だけで戦うのか!」
「大丈夫? シモンさん」
「ええ、構いません、大丈夫です」
きっぱりと言い切ったシモンに対し、夫妻は清々しく思い、大いに好感を持った。
「うむ! 良くぞ言った! だがな、それでは魔法使いのシモン君には相当不利だ。本当に良いのか?」
「ええ、魔法使いが魔法不使用なら、シモン君が勝てる可能性はだいぶ低くなるわ」
「やるだけやって負けたら、仕方ありませんし、その方が皆さんもご納得するでしょうから」
ラクルテル公爵夫妻と、クラウディア。
そしてアレクサンドラとエステルを交互に見据えると……
シモンは大きく頷き、はっきりと言い切ったのである。
結局はクラウディアの両親アンドリュー、ブリジットのラクルテル公爵夫妻の強烈ともいえる『押し』に負けてしまった。
アンドリュー、ブリジットとも、当然ながら愛娘と使用人を救ってくれた事には、大いに感謝しており、素直に礼を言う考えはある。
だから実際に会って、直接礼を告げる為、無理を言って、公爵邸へ来て貰った。
夫妻は会って、礼を言いながら、「シモンの『人物』を見極めよう」とも考えてもいた。
クラウディアと侍女のリゼットが絶賛するシモン・アーシュとは、実際どうなのだろうかと、しっかり確認したいと。
もしもシモンが、愛娘達が言うように『相当の器』ならば、単なるお礼以上の対応をしようとも考えていた。
ラクルテル公爵夫妻にとって、恩人のシモンはいろいろな意味で『保険』なのだ。
まずシモンとの「付き合いを許す事」で、彼を慕うクラウディアの両親への好感度は大幅にアップする。
これは間違いない。
更に……
シモンが強くて誠実な人柄であれば、付き合う事で、クラウディアは良い意味で、男子に慣れる。
つまり男子嫌い?は緩和されて行く。
万が一、シモンと上手く行かなくても……
将来しかるべき結婚相手と出会う努力をしてくれる……だろうと。
断り続けて来た、上級貴族の子息との見合いをOKしてくれるかもしれない。
もしももしも!
シモンが想定以上にとんでもなく強かったら……
単に娘の婿というだけでなく、旧知のアレクサンドラに筋を通した上で、騎士隊へ勧誘してもOK!とか……
当然養子にして、正式なラクルテル公爵家の跡取りとし、将来の王国軍幹部将校にとか、いろいろと深い思惑があった。
実は……
アンドリューの妻ブリジットは、親友でもあるこのアレクサンドラへ、
シモン呼び出しの了解を取る連絡を兼ね、
「シモン・アーシュは愛娘クラウディアの婿候補として、どうなのだろうか?」と、事前に相談をしていたのだ。
結果……
アレクサンドラからは、シモンの人柄、実力とも、はっきりと保証され、良き推薦を受けていた。
但し、「シモンにはすでに好意を持つ女子が居る」とも言われていた。
また「シモンの引き抜きは絶対にNG」だと、びしっ!と釘も刺されていた。
だが楽観的な性格のアンドリュー、ブリジットは夫妻ふたりで、アレクサンドラへ、「ぜひに」と頼み込めば何とかしてくれるとも考えていたのである。
しかし……
『全て』を知るにつれ、夫妻ふたりはシモンにぞっこん惚れ込む事となるが、それはまた後のお話……
……話を戻せば、ラクルテル公爵夫妻の押しに加え、クラウディアからは「うるうる目」でお願いされてしまった。
こうなるとシモンは、このまま帰るわけにいかず『バトル』をOKするしかない。
「公爵閣下、奥様、分かりました。俺バトルをお受けします。但し条件があります」
シモンがバトル勝負を受けてくれた事で、アンドリュー、ブリジットの顔は輝いた。
喜色満面となる。
シモンの出す条件を聞こうという気持ちになった。
「おお、条件か! 何でも言ってくれ」
「ええ、こちらから、無理にお願いするんだもの。最大限考慮するわ」
「はい、こちらから条件はいくつかあります。まず勝負の結果がどうであれ、うらみつらみは一切なし。遺恨を残さない事」
「ふむ、当たり前だ」
「当然ね!」
「それと命まで懸けるバトルは……お断りします」
「ふむう!」
「では? シモン君は何か勝負方法を考えているのね?」
「はい、公爵閣下、腕相撲で勝負させてください」
「腕相撲! おお、成る程! それならば、分かりやすい。短時間で且つはっきりと勝負がつく」
「うふふ、名案ね」
そして何と!
シモンは信じられない条件を出して来たのだ。
「それと、念の為。俺は魔法使いで元トレジャーハンターですが、魔法は使いません。身体強化魔法も攻撃魔法も防御魔法も、スキルも一切使いません。奥様がおっしゃったラクルテル公爵家の家風にのっとって、力のみで勝負します」
これにはさすがにアンドリュー、ブリジットは驚いた。
想定外の展開である。
「おおっ、魔法やスキルを使わず、正々堂々と自分の力だけで戦うのか!」
「大丈夫? シモンさん」
「ええ、構いません、大丈夫です」
きっぱりと言い切ったシモンに対し、夫妻は清々しく思い、大いに好感を持った。
「うむ! 良くぞ言った! だがな、それでは魔法使いのシモン君には相当不利だ。本当に良いのか?」
「ええ、魔法使いが魔法不使用なら、シモン君が勝てる可能性はだいぶ低くなるわ」
「やるだけやって負けたら、仕方ありませんし、その方が皆さんもご納得するでしょうから」
ラクルテル公爵夫妻と、クラウディア。
そしてアレクサンドラとエステルを交互に見据えると……
シモンは大きく頷き、はっきりと言い切ったのである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
470
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる