4 / 181
第4話 「神の代理人」
しおりを挟む
ダンにより、横抱きにされたエリン。
今迄と打って変わって、笑顔で抱かれたエリンを見て、アスモデウスが憎々し気に罵る。
「うじ虫人間がぁ! 我が花嫁をずうずうしく抱くとは……下郎め!」
しかしエリンは、嫌悪感を露にする。
どうやらアスモデウスから、勝手に『嫁扱い』されたのが気に入らないようだ。
菫色の瞳を怒りに染めて、きっぱりと言い放つ。
「勝手に決めないで! いつ誰がアンタの花嫁になったのよ! まるで寝取られみたいに言わないで、気持ち悪いっ」
何と!
エリンの口調が、先程と180度変わっていた。
今迄の王女然とした言葉遣いが怒りの余り、急に蓮っ葉なものになっている。
しかしこれが本来、エリンの『素』のようであった。
エリンから思いっきり拒否られたアスモデウスは、音が鳴り響くほど、凄まじく歯ぎしりする。
「ぎぎぎぎぎ! エリ~ン、今ならまだ許してやる。うじ虫人間の手を振り払って余の下《もと》へ来い」
「イーダ! おとといおいで! あんたに抱かれるくらいなら、エリンは死んだ方がマシよ」
「べ~っ」と舌を出し、再度拒否したエリン。
アスモデウスの下へ行くどころか、ダンに縋りついて甘えている。
ダンといちゃつくエリンを目の当たりにして、とうとうアスモデウスは『切れた』ようだ。
「くははっ! よくぞ言った、仕草や言葉遣いまで下種女になり下がりおって……こうなったら仕方がない。おい、うじ虫人間! 貴様を倒せばそんな性悪下種女を娶らぬとも釣りが来るわぁ」
だが、アスモデウスの捨て台詞的な『反撃』に今度はエリンが切れた。
「な! そんな性悪下種女って!? 何言っているの!? あんたみたいな超が付く下劣な最低悪魔に言われたくなぁい。ううううっ、エリンを馬鹿にして! ゆ、許さな~いっ」
怒ったエリンを見て、だいぶ溜飲が下がったに違いない。
余裕が出たらしいアスモデウスが、ダンに向かって、せせら笑う。
「ぎゃはははは! うじ虫人間よ、お前のような、矮小な下郎に触れられた汚らわしい女などくれてやる! もう金輪際要らぬわ」
アスモデウスの挑発に、エリンはもう怒り心頭である。
「悔しい! ダ~ン、あいつの事、めっためたにやっつけて! ぶちのめして!」
「おお、任せろっ!」
ダンは、ふたつ返事で気安く請け負った。
聞いた、アスモデウスが一喝する。
「馬鹿がっ! 余を舐めおって! 汚らわしいうじ虫と売女め、骨も残さず我が炎により焼かれるが良い!」
アスモデウスは、大きく息を吸い込んだ。
騎乗されている竜も、主と同じく「かあっ」と大きく口を開ける。
その瞬間。
アスモデウスと竜の口から、灼熱の炎が吐かれたのである。
これこそ、アスモデウスが持つ武器のひとつ煉獄の炎だ。
冥界で永遠に燃え続ける恐るべき業火であり、地上のものなどすべて焼き尽くしてしまう。
しかしダンは、全く表情を変えない。
左手でしっかりとエリンを抱きながら、すっと右手を挙げたのである。
アスモデウスと竜から吐かれた炎がダン達を襲い、瞬時に塵にするかと思えた瞬間。
何と!
不思議な事が起こった。
アスモデウスと竜から放たれた灼熱の炎が、だんだんと小さくなり、ダンの手に吸い込まれるようにして消え去ったのである。
そして煉獄の炎が吸収されると同時に、ダンの身体が眩く輝き出していた。
アスモデウスが驚愕している。
「ば、馬鹿な! 何物も焼き尽くす我が煉獄の炎を魔力として吸収しただと!? こ、これが神の代理人の力なのか!?」
アスモデウスの吐いた聞き慣れない言葉にエリンが首を傾げる。
「ダンが? 神の代理人!?」
「はぁ? 俺もそんなの知らねえなぁ……」
エリンと同様、ダンも心当たりがないらしい。
ダンの言葉を聞いたアスモデウスがわめき散らす。
「き、貴様! 自分が何者か、どんな力を持つのか、全く分かっていないのか!?」
しかし、ダンの目は醒めている。
「知らねぇ……そんなの今更どうでも良いよ」
アスモデウスが拘る『神の代理人』に対して、ダンは全く興味がないらしい。
しかしアスモデウスがここまで拘るとは……
神の代理人と呼ばれる存在が、とてつもない凄いものらしいという事だけを、エリンは感じたのである。
「ぎぎぎ、き、き、貴様ぁ! どうでも……良いだとぉ」
「ああ、神の代理人など、どうでも良い……俺は頼まれた仕事をするだけさ……おっさん、もう御託は聞き飽きたぜ。……そろそろ死ね」
ダンが、鋭い視線を飛ばした。
どうやら『仕事』を完遂させるらしい。
しかしアスモデウスは、噛みながらも胸を張る。
「ば、馬鹿が! 大魔王は不死! 故に未来永劫不滅だ! 余は誰にも殺せなぁい! いかにお前が神の代理人でも殺せるものかぁ」
確かにアスモデウスの言う通り、悪魔は死を超越した存在だ。
逆ならともかく、人間が悪魔を殺す話など聞いた事がない。
エリンはダンに抱かれながら、固唾を飲んでやりとりを見守っていた。
「不死だって? お前がか? 果たしてそう……かな?」
ダンは「ふっ」と笑う。
「ど、どういう事だ!?」
不敵に笑う、ダンの表情を見たアスモデウスは、不安が黒雲のように広がったのであった。
今迄と打って変わって、笑顔で抱かれたエリンを見て、アスモデウスが憎々し気に罵る。
「うじ虫人間がぁ! 我が花嫁をずうずうしく抱くとは……下郎め!」
しかしエリンは、嫌悪感を露にする。
どうやらアスモデウスから、勝手に『嫁扱い』されたのが気に入らないようだ。
菫色の瞳を怒りに染めて、きっぱりと言い放つ。
「勝手に決めないで! いつ誰がアンタの花嫁になったのよ! まるで寝取られみたいに言わないで、気持ち悪いっ」
何と!
エリンの口調が、先程と180度変わっていた。
今迄の王女然とした言葉遣いが怒りの余り、急に蓮っ葉なものになっている。
しかしこれが本来、エリンの『素』のようであった。
エリンから思いっきり拒否られたアスモデウスは、音が鳴り響くほど、凄まじく歯ぎしりする。
「ぎぎぎぎぎ! エリ~ン、今ならまだ許してやる。うじ虫人間の手を振り払って余の下《もと》へ来い」
「イーダ! おとといおいで! あんたに抱かれるくらいなら、エリンは死んだ方がマシよ」
「べ~っ」と舌を出し、再度拒否したエリン。
アスモデウスの下へ行くどころか、ダンに縋りついて甘えている。
ダンといちゃつくエリンを目の当たりにして、とうとうアスモデウスは『切れた』ようだ。
「くははっ! よくぞ言った、仕草や言葉遣いまで下種女になり下がりおって……こうなったら仕方がない。おい、うじ虫人間! 貴様を倒せばそんな性悪下種女を娶らぬとも釣りが来るわぁ」
だが、アスモデウスの捨て台詞的な『反撃』に今度はエリンが切れた。
「な! そんな性悪下種女って!? 何言っているの!? あんたみたいな超が付く下劣な最低悪魔に言われたくなぁい。ううううっ、エリンを馬鹿にして! ゆ、許さな~いっ」
怒ったエリンを見て、だいぶ溜飲が下がったに違いない。
余裕が出たらしいアスモデウスが、ダンに向かって、せせら笑う。
「ぎゃはははは! うじ虫人間よ、お前のような、矮小な下郎に触れられた汚らわしい女などくれてやる! もう金輪際要らぬわ」
アスモデウスの挑発に、エリンはもう怒り心頭である。
「悔しい! ダ~ン、あいつの事、めっためたにやっつけて! ぶちのめして!」
「おお、任せろっ!」
ダンは、ふたつ返事で気安く請け負った。
聞いた、アスモデウスが一喝する。
「馬鹿がっ! 余を舐めおって! 汚らわしいうじ虫と売女め、骨も残さず我が炎により焼かれるが良い!」
アスモデウスは、大きく息を吸い込んだ。
騎乗されている竜も、主と同じく「かあっ」と大きく口を開ける。
その瞬間。
アスモデウスと竜の口から、灼熱の炎が吐かれたのである。
これこそ、アスモデウスが持つ武器のひとつ煉獄の炎だ。
冥界で永遠に燃え続ける恐るべき業火であり、地上のものなどすべて焼き尽くしてしまう。
しかしダンは、全く表情を変えない。
左手でしっかりとエリンを抱きながら、すっと右手を挙げたのである。
アスモデウスと竜から吐かれた炎がダン達を襲い、瞬時に塵にするかと思えた瞬間。
何と!
不思議な事が起こった。
アスモデウスと竜から放たれた灼熱の炎が、だんだんと小さくなり、ダンの手に吸い込まれるようにして消え去ったのである。
そして煉獄の炎が吸収されると同時に、ダンの身体が眩く輝き出していた。
アスモデウスが驚愕している。
「ば、馬鹿な! 何物も焼き尽くす我が煉獄の炎を魔力として吸収しただと!? こ、これが神の代理人の力なのか!?」
アスモデウスの吐いた聞き慣れない言葉にエリンが首を傾げる。
「ダンが? 神の代理人!?」
「はぁ? 俺もそんなの知らねえなぁ……」
エリンと同様、ダンも心当たりがないらしい。
ダンの言葉を聞いたアスモデウスがわめき散らす。
「き、貴様! 自分が何者か、どんな力を持つのか、全く分かっていないのか!?」
しかし、ダンの目は醒めている。
「知らねぇ……そんなの今更どうでも良いよ」
アスモデウスが拘る『神の代理人』に対して、ダンは全く興味がないらしい。
しかしアスモデウスがここまで拘るとは……
神の代理人と呼ばれる存在が、とてつもない凄いものらしいという事だけを、エリンは感じたのである。
「ぎぎぎ、き、き、貴様ぁ! どうでも……良いだとぉ」
「ああ、神の代理人など、どうでも良い……俺は頼まれた仕事をするだけさ……おっさん、もう御託は聞き飽きたぜ。……そろそろ死ね」
ダンが、鋭い視線を飛ばした。
どうやら『仕事』を完遂させるらしい。
しかしアスモデウスは、噛みながらも胸を張る。
「ば、馬鹿が! 大魔王は不死! 故に未来永劫不滅だ! 余は誰にも殺せなぁい! いかにお前が神の代理人でも殺せるものかぁ」
確かにアスモデウスの言う通り、悪魔は死を超越した存在だ。
逆ならともかく、人間が悪魔を殺す話など聞いた事がない。
エリンはダンに抱かれながら、固唾を飲んでやりとりを見守っていた。
「不死だって? お前がか? 果たしてそう……かな?」
ダンは「ふっ」と笑う。
「ど、どういう事だ!?」
不敵に笑う、ダンの表情を見たアスモデウスは、不安が黒雲のように広がったのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる