26 / 181
第26話「ダンの告白①」
しおりを挟む
「うっわぁ、最高だったよぉ! エリン、益々魚が好きになっちゃった」
エリンが、「ぺろり」と舌で唇を舐めた。
楽しい夕飯が終わり、ハーブティーを飲みながら、エリンはうっとりしている。
昼間食べた焼き魚は勿論、ダンは他に魚料理を作ってくれた。
ひとつはフライパンで鱒を焼いたバターソテー、そしてもうひとつは鱒と野菜を煮込んだスープである。
焼き魚とは全く違う、バターの風味にエリンは吃驚した。
エリンが見た事もない、牛という動物の乳から作ったという。
そして鱒のスープも、ウサギの肉を使ったものとは全く違う味わいで、あっという間に完食してしまったのである。
勿論トム達にも、焼いた鱒がたっぷりと大盤振る舞いされている。
興奮冷めやらぬエリンは、大きな声で言う。
「ダン! 料理方法を変えれば、同じ魚でこれだけ味が違うんだ!」
「そうだな、鱒の料理はまだまだたくさんあるぞ」
まだまだ違う料理がたくさんある?
エリンは驚き、感動した。
「あう! 料理って凄いんだねぇ。エリン、感動しちゃったよ。今度はエリンもぜひ、作りたい、作ってみたいよぉ」
「そうか? 俺のなんて全く素人料理だけどそれで良ければ教えるよ」
「ううん! ダンはダークエルフの料理長と同じくらい凄いよ」
エリンはダンの愛情のこもった料理を食べて、地下世界に居た頃に可愛がってくれた料理長を思い出した。
ダークエルフ達が作る、料理の食材や調理方法は全然違う。
けれど、作った料理をエリンが美味しいと言うと、料理長はとても喜んでいたのである。
ダンとしては、エリンに喜んで欲しい。
だから、つい言ってしまう。
「ははは、その人が居れば、俺もプロの料理を習えたのにな」
「うん……もし居ればエリンも凄く嬉しいのに……だけど、料理長、エリンを守って死んじゃった……」
エリンの目が、遠くなっている。
……もう、エリンに同族は居ない。
父も料理長も、仲間全てがこの世には居ないのだ。
ダンの表情も辛くなる。
愛するエリンの悲しみが、まるで自分の悲しみのように感じるから。
「……そうか、御免、エリン」
「うう、あうあう……」
エリンは、料理長との思い出を呼び覚まされて感極まったらしい。
美しい菫色の瞳が、涙に濡れていた。
「エリン……」
思わずエリンの名を呼ぶダンに、エリンは切々と訴える。
「ダンは絶対に死んじゃダメだよ! エリンを置いて、どこかに行くのもいけないよぉ」
叫ぶように言い放つエリンを、ダンは「きゅっ」と抱き締めた。
「分かっているさ。俺はエリンの傍に居る」
「約束だよ、ダン」
エリンは安心する。
抱き締められた確かさは、夢ではなくはっきりとした現実なのだ。
もうたったひとりぼっちではない。
自分には、ダンが居る。
襲い来る孤独も、わけが分からない差別も怖くない!
ダンが居るから、全然怖くないのだ。
愛するふたりは、しっかり抱き合って元気が出る。
「さあ、エリン。後片付けしよう」
「了解!」
ダンとエリンは一緒に、張り切って食事の片づけをしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夕飯後、風呂に入ってさっぱりしたのに……
ダンとエリンは、また汗だくになってしまった。
何故ならば……
ふたりは昨夜以上に激しく愛し合ったのである。
初めて好きになった相手を、もっともっと愛したい。
相手を絶対に、絶対に失いたくない!
そんな、強い気持ちの表れであった。
ふたりは今、ベッドでまどろんでいる。
「ダン、ダン、ダーン!」
大きな声で呼ぶエリンが、ダンの胸に鼻をすりすりしていた。
「ははは、エリンは甘えん坊だな」
「うふふ、だってぇ……」
ダンはもう、エリンが可愛くて堪らない。
安心しきって、胸の中で甘えるエリンを決して手放したくない。
そんなダンの脳裏に、突然アルバート達の忌まわしい言葉が甦って来た。
しかし、可憐なエリンを見たら事実とは思えない。
こんなに愛らしい少女が呪われているって?
馬鹿馬鹿しい!
一方のエリンは、今日一日の出来事を思い出していた。
高い木の上からダンと一緒に見た、地上の素晴らしい風景……
まだ、はっきりと目に焼き付いている。
生まれて初めての魚釣りは、吃驚したけど面白かった。
そして、魚という生き物がこんなに美味しいという衝撃の事実。
冗談を言い合える、優しい家族が居る充実した暮らしは、エリンにとってこの上ない幸せだ。
そして、大好きなダンにたっぷり愛して貰った。
エリンはとても満ち足りていたのである。
「ダン、これが女の幸せって奴?」
「おお、この前の相思相愛とか、女の幸せとか、エリンはたまに凄い事言うなぁ……」
「ええっ? たまになの?」
エリンは、不満そうに口を尖らせた。
勿論『ポーズ』である。
他愛のない会話。
意味のなさそうな会話。
他人から見れば、何気なく過ごしている、平凡な時間に見えるかもしれない。
だけど、ダンとエリンのふたりにとっては、大事な思い出の積み重ねとなる。
「ははははは」
「うふふ」
エリンの笑顔を見るダンが、何か決心したという表情で口を開く。
「エリン……俺はお前の事がもっと知りたい」
「うん、エリン、教えるよ」
「そうか、ありがとう。でも俺の事も知って欲しいんだ」
「エリンもダンの事もっともっと知りたい! 知らない事がい~っぱいあるんだもん!」
「じゃあ……まず俺の事を話そうか?」
ダンが、大事な話をする。
とても大事な話を。
エリンにはピンと来た。
「ごくり」と喉が鳴る。
「エリン、驚かないで聞いて欲しいんだ……俺はこの世界の人間じゃない」
「え?」
「ぽかん」とするエリンを、見つめるダンの表情。
……それは初めてエリンが見る、「怖い!」というくらい真剣なものであったのだ。
エリンが、「ぺろり」と舌で唇を舐めた。
楽しい夕飯が終わり、ハーブティーを飲みながら、エリンはうっとりしている。
昼間食べた焼き魚は勿論、ダンは他に魚料理を作ってくれた。
ひとつはフライパンで鱒を焼いたバターソテー、そしてもうひとつは鱒と野菜を煮込んだスープである。
焼き魚とは全く違う、バターの風味にエリンは吃驚した。
エリンが見た事もない、牛という動物の乳から作ったという。
そして鱒のスープも、ウサギの肉を使ったものとは全く違う味わいで、あっという間に完食してしまったのである。
勿論トム達にも、焼いた鱒がたっぷりと大盤振る舞いされている。
興奮冷めやらぬエリンは、大きな声で言う。
「ダン! 料理方法を変えれば、同じ魚でこれだけ味が違うんだ!」
「そうだな、鱒の料理はまだまだたくさんあるぞ」
まだまだ違う料理がたくさんある?
エリンは驚き、感動した。
「あう! 料理って凄いんだねぇ。エリン、感動しちゃったよ。今度はエリンもぜひ、作りたい、作ってみたいよぉ」
「そうか? 俺のなんて全く素人料理だけどそれで良ければ教えるよ」
「ううん! ダンはダークエルフの料理長と同じくらい凄いよ」
エリンはダンの愛情のこもった料理を食べて、地下世界に居た頃に可愛がってくれた料理長を思い出した。
ダークエルフ達が作る、料理の食材や調理方法は全然違う。
けれど、作った料理をエリンが美味しいと言うと、料理長はとても喜んでいたのである。
ダンとしては、エリンに喜んで欲しい。
だから、つい言ってしまう。
「ははは、その人が居れば、俺もプロの料理を習えたのにな」
「うん……もし居ればエリンも凄く嬉しいのに……だけど、料理長、エリンを守って死んじゃった……」
エリンの目が、遠くなっている。
……もう、エリンに同族は居ない。
父も料理長も、仲間全てがこの世には居ないのだ。
ダンの表情も辛くなる。
愛するエリンの悲しみが、まるで自分の悲しみのように感じるから。
「……そうか、御免、エリン」
「うう、あうあう……」
エリンは、料理長との思い出を呼び覚まされて感極まったらしい。
美しい菫色の瞳が、涙に濡れていた。
「エリン……」
思わずエリンの名を呼ぶダンに、エリンは切々と訴える。
「ダンは絶対に死んじゃダメだよ! エリンを置いて、どこかに行くのもいけないよぉ」
叫ぶように言い放つエリンを、ダンは「きゅっ」と抱き締めた。
「分かっているさ。俺はエリンの傍に居る」
「約束だよ、ダン」
エリンは安心する。
抱き締められた確かさは、夢ではなくはっきりとした現実なのだ。
もうたったひとりぼっちではない。
自分には、ダンが居る。
襲い来る孤独も、わけが分からない差別も怖くない!
ダンが居るから、全然怖くないのだ。
愛するふたりは、しっかり抱き合って元気が出る。
「さあ、エリン。後片付けしよう」
「了解!」
ダンとエリンは一緒に、張り切って食事の片づけをしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夕飯後、風呂に入ってさっぱりしたのに……
ダンとエリンは、また汗だくになってしまった。
何故ならば……
ふたりは昨夜以上に激しく愛し合ったのである。
初めて好きになった相手を、もっともっと愛したい。
相手を絶対に、絶対に失いたくない!
そんな、強い気持ちの表れであった。
ふたりは今、ベッドでまどろんでいる。
「ダン、ダン、ダーン!」
大きな声で呼ぶエリンが、ダンの胸に鼻をすりすりしていた。
「ははは、エリンは甘えん坊だな」
「うふふ、だってぇ……」
ダンはもう、エリンが可愛くて堪らない。
安心しきって、胸の中で甘えるエリンを決して手放したくない。
そんなダンの脳裏に、突然アルバート達の忌まわしい言葉が甦って来た。
しかし、可憐なエリンを見たら事実とは思えない。
こんなに愛らしい少女が呪われているって?
馬鹿馬鹿しい!
一方のエリンは、今日一日の出来事を思い出していた。
高い木の上からダンと一緒に見た、地上の素晴らしい風景……
まだ、はっきりと目に焼き付いている。
生まれて初めての魚釣りは、吃驚したけど面白かった。
そして、魚という生き物がこんなに美味しいという衝撃の事実。
冗談を言い合える、優しい家族が居る充実した暮らしは、エリンにとってこの上ない幸せだ。
そして、大好きなダンにたっぷり愛して貰った。
エリンはとても満ち足りていたのである。
「ダン、これが女の幸せって奴?」
「おお、この前の相思相愛とか、女の幸せとか、エリンはたまに凄い事言うなぁ……」
「ええっ? たまになの?」
エリンは、不満そうに口を尖らせた。
勿論『ポーズ』である。
他愛のない会話。
意味のなさそうな会話。
他人から見れば、何気なく過ごしている、平凡な時間に見えるかもしれない。
だけど、ダンとエリンのふたりにとっては、大事な思い出の積み重ねとなる。
「ははははは」
「うふふ」
エリンの笑顔を見るダンが、何か決心したという表情で口を開く。
「エリン……俺はお前の事がもっと知りたい」
「うん、エリン、教えるよ」
「そうか、ありがとう。でも俺の事も知って欲しいんだ」
「エリンもダンの事もっともっと知りたい! 知らない事がい~っぱいあるんだもん!」
「じゃあ……まず俺の事を話そうか?」
ダンが、大事な話をする。
とても大事な話を。
エリンにはピンと来た。
「ごくり」と喉が鳴る。
「エリン、驚かないで聞いて欲しいんだ……俺はこの世界の人間じゃない」
「え?」
「ぽかん」とするエリンを、見つめるダンの表情。
……それは初めてエリンが見る、「怖い!」というくらい真剣なものであったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる