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第48話「闘技場で大暴れ!①」
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「では……始めっ!」
エリンとローランドから、離れて試合を見守るダンの傍らで、改めてクローディアが試合開始を宣言した。
開始の声を聞いて、鎖を解かれた猟犬のように、ローランドはいきなりエリンへ突進する。
当然だが、自分の得意とする戦い方=接近戦に持ち込もうとしたのだ。
魔法使いと戦う時の鉄則。
当たり前の事だが、相手に魔法を使わせない。
魔法を使う前に迅速に倒す。
ローランドが改めて見ても、エリンは普通の魔法使いではない。
ショートソードを提げており、身のこなしからも剣技もなかなかだと思われる。
もし、打ち合ったらどうなるだろう?
移動しながら、ローランドは思う。
しかし!
自分のベストな戦い方は、やはり接近戦だ。
魔法を使われる前に、力と技で圧倒する。
ローランドは瞬時に計算し、判断して攻撃に移った。
と、その時!
エリンへ迫るローランドの前に、地響きをたてて突如高い壁が出現した。
異界から呼び出された、ごつい岩石で造作された頑丈な壁だ。
エリンが発動した地の防御魔法、岩壁であった。
さすが!
と、ローランドは唸る。
試合開始から時間がそう経っていないのに、発動までが極端に短い!
成る程!
無詠唱か、詠唱速度を著しく短縮したのか?
そして、岩壁自体も結構高い!
ローランドが見上げると、岩壁の高さは10mを楽に超えていた。
人間離れした跳躍力を誇るローランドでも、せいぜい5m飛び上がるくらいが限界だ。
ふむ……
この高さは、私の能力を知っているダン殿の『作戦』だな。
跳躍で越えられない高さの岩壁を排除する為、何らかの対処をする間に、エリンさんに距離を取らせて魔法攻撃する時間を稼がせる。
ローランドが「さっ」と見渡すと、岩壁の横幅も約10mくらいであり、回り込んだら何と言う事はない。
しかし回り込んで出た所を、遠距離魔法で狙い撃ちというエリンの『作戦』かもしれない。
ならば!
ローランドは気合を込めると、ごつい拳を突き出した。
凄まじい破壊音が響き、岩壁は呆気なく崩れ落ちてしまう。
この対処はローランドが『正面突破』をするのと同時に、相手《エリン》に対する自分の攻撃力を誇示し、『威嚇』の効果もある。
一方……
エリンはダンの『作戦』に従い、最初に居た位置から20mほど下がっていた。
やっぱりダンの言う通りだ、ローランド様は凄い!
頑丈な魔法の岩壁を、拳であっさり破壊するなんて!
でも、エリンは動揺していなかった。
逆にワクワクしていた。
ダンからローランドが桁違いに強い事は知らされていたし、相手へ自分の技が通用しなくても決して慌てないようにと、アドバイスもあったからだ。
慌てて動揺すれば、どうしても隙だらけになる。
思考も反応も遅くなる。
よっし!
次だ!
ローランド様は今の破壊で私が怖れるか、吃驚したと考えている筈。
どちらにしても『間』が出来る。
チャンスとばかりに、エリンは攻撃を開始した。
高く低く、高速で唱えられる言霊が彼女の口から響いている。
「一族の守護を司る大地の精霊よ! 我に力を!」
すると、異界から呼び出された夥しい数の岩石が現れた。
岩石の大きさは、拳大から直径1mくらいまでまちまちだ。
「撃《ショット》!」
エリンが息を吐き気合を込めると、岩石は高速で飛びローランドを襲う。
放たれたのは、かつてアスモデウス率いる悪魔の眷属共を屠った地の攻撃魔法、エリンが得意とする岩弾であった。
高速で突き進む強固な岩石は、人間の身体など簡単に破砕してしまう。
そして、エリンが異界から呼び出した岩石の数は常識では考えれないほど多い。
普通に避けるなどは不可能だ。
「ローランド様!」
思わず声が出たが、クローディアにはローランドがどう対処するか予想はついていた。
クローディアの声が聞こえたのか、ローランドは不敵な笑みを浮かべる。
そして岩弾がぶつかる瞬間。
「とおあっ!」
ローランドが叫ぶと、彼の身体に強力な障壁が出来た。
障壁にぶつかった岩弾は、呆気なく砕け散った。
「さすがローランド様! でもまさか闘気を使わせるとは」
クローディアの言った『闘気』こそがローランドの凄まじい強さの根幹である。
だが……
実を言うと、この『闘気』とは『魔力』なのである。
この世界では、魔力を誰もが体内に宿している。
全ての種族の老若男女が。
その魔力を変換して、魔法を行使出来る才能を持つ者が魔法使いだ。
ローランドはダンの言う通り魔法こそ使えなかったが、特殊な才能を持っていた。
そう、魔法使いが魔力を魔法に変えるように、ローランドは魔力を闘気に変える事が出来るのである。
この闘気をもし魔法に例えるなら、付呪魔法《エンチャント》に近いだろう。
付呪魔法とは様々な魔法を武器や防具、または道具に付けて魔道具に変える魔法だ。
ちなみにダンの持つ魔法の鞄も、付呪魔法をかけた魔道具である。
ローランドは魔力から生み出す闘気により、武器や防具の効力をあげたり、身体能力さえも向上させる事が出来るのだ。
クローディアは、ふと思い出す。
上司のローランドとは、今迄に何度か『仕事』をしている。
人に害為す魔物討伐が主であったが、いつも人間離れした強さで敵を圧倒した。
しかし魔物相手でも、ローランドは『闘気』を使う事は滅多にない。
元々備わっている力と技とスピードで、相手を難なく倒せるからだ。
今迄に闘気を使ったのは凶悪な竜を倒した時、そして竜に準ずる強靭な魔物と数回戦った時くらいだと、クローディアは記憶している。
そして、ダンとの戦いの時も……
だがエリンは、いきなりローランドに『闘気』を使わせるような魔法を使った。
先程の岩弾のスケールといい、やはりエリンはローランドの言う通り只者ではないのだ。
そんなクローディアの思いは、ダンの軽口で破られた。
「ははは、クローディアさん。やっぱり障壁作っといてよかったでしょう?」
「そう……ですね」
ダンの言う通りであった。
ローランドが砕いた以外のエリンの放った岩弾は、ダンの作った魔法障壁にぶつかり四散したのだから。
魔法障壁が無ければ、闘技場の壁は間違いなく損傷していた筈である。
「これから……もっと面白くなりますよ、試合」
ダンの呟いた意外な言葉。
「え?」
クローディアは大きく目を見開いてまじまじとダンを見つめた。
そして、慌てて対峙するローランドとエリンへと、視線を向けたのであった。
エリンとローランドから、離れて試合を見守るダンの傍らで、改めてクローディアが試合開始を宣言した。
開始の声を聞いて、鎖を解かれた猟犬のように、ローランドはいきなりエリンへ突進する。
当然だが、自分の得意とする戦い方=接近戦に持ち込もうとしたのだ。
魔法使いと戦う時の鉄則。
当たり前の事だが、相手に魔法を使わせない。
魔法を使う前に迅速に倒す。
ローランドが改めて見ても、エリンは普通の魔法使いではない。
ショートソードを提げており、身のこなしからも剣技もなかなかだと思われる。
もし、打ち合ったらどうなるだろう?
移動しながら、ローランドは思う。
しかし!
自分のベストな戦い方は、やはり接近戦だ。
魔法を使われる前に、力と技で圧倒する。
ローランドは瞬時に計算し、判断して攻撃に移った。
と、その時!
エリンへ迫るローランドの前に、地響きをたてて突如高い壁が出現した。
異界から呼び出された、ごつい岩石で造作された頑丈な壁だ。
エリンが発動した地の防御魔法、岩壁であった。
さすが!
と、ローランドは唸る。
試合開始から時間がそう経っていないのに、発動までが極端に短い!
成る程!
無詠唱か、詠唱速度を著しく短縮したのか?
そして、岩壁自体も結構高い!
ローランドが見上げると、岩壁の高さは10mを楽に超えていた。
人間離れした跳躍力を誇るローランドでも、せいぜい5m飛び上がるくらいが限界だ。
ふむ……
この高さは、私の能力を知っているダン殿の『作戦』だな。
跳躍で越えられない高さの岩壁を排除する為、何らかの対処をする間に、エリンさんに距離を取らせて魔法攻撃する時間を稼がせる。
ローランドが「さっ」と見渡すと、岩壁の横幅も約10mくらいであり、回り込んだら何と言う事はない。
しかし回り込んで出た所を、遠距離魔法で狙い撃ちというエリンの『作戦』かもしれない。
ならば!
ローランドは気合を込めると、ごつい拳を突き出した。
凄まじい破壊音が響き、岩壁は呆気なく崩れ落ちてしまう。
この対処はローランドが『正面突破』をするのと同時に、相手《エリン》に対する自分の攻撃力を誇示し、『威嚇』の効果もある。
一方……
エリンはダンの『作戦』に従い、最初に居た位置から20mほど下がっていた。
やっぱりダンの言う通りだ、ローランド様は凄い!
頑丈な魔法の岩壁を、拳であっさり破壊するなんて!
でも、エリンは動揺していなかった。
逆にワクワクしていた。
ダンからローランドが桁違いに強い事は知らされていたし、相手へ自分の技が通用しなくても決して慌てないようにと、アドバイスもあったからだ。
慌てて動揺すれば、どうしても隙だらけになる。
思考も反応も遅くなる。
よっし!
次だ!
ローランド様は今の破壊で私が怖れるか、吃驚したと考えている筈。
どちらにしても『間』が出来る。
チャンスとばかりに、エリンは攻撃を開始した。
高く低く、高速で唱えられる言霊が彼女の口から響いている。
「一族の守護を司る大地の精霊よ! 我に力を!」
すると、異界から呼び出された夥しい数の岩石が現れた。
岩石の大きさは、拳大から直径1mくらいまでまちまちだ。
「撃《ショット》!」
エリンが息を吐き気合を込めると、岩石は高速で飛びローランドを襲う。
放たれたのは、かつてアスモデウス率いる悪魔の眷属共を屠った地の攻撃魔法、エリンが得意とする岩弾であった。
高速で突き進む強固な岩石は、人間の身体など簡単に破砕してしまう。
そして、エリンが異界から呼び出した岩石の数は常識では考えれないほど多い。
普通に避けるなどは不可能だ。
「ローランド様!」
思わず声が出たが、クローディアにはローランドがどう対処するか予想はついていた。
クローディアの声が聞こえたのか、ローランドは不敵な笑みを浮かべる。
そして岩弾がぶつかる瞬間。
「とおあっ!」
ローランドが叫ぶと、彼の身体に強力な障壁が出来た。
障壁にぶつかった岩弾は、呆気なく砕け散った。
「さすがローランド様! でもまさか闘気を使わせるとは」
クローディアの言った『闘気』こそがローランドの凄まじい強さの根幹である。
だが……
実を言うと、この『闘気』とは『魔力』なのである。
この世界では、魔力を誰もが体内に宿している。
全ての種族の老若男女が。
その魔力を変換して、魔法を行使出来る才能を持つ者が魔法使いだ。
ローランドはダンの言う通り魔法こそ使えなかったが、特殊な才能を持っていた。
そう、魔法使いが魔力を魔法に変えるように、ローランドは魔力を闘気に変える事が出来るのである。
この闘気をもし魔法に例えるなら、付呪魔法《エンチャント》に近いだろう。
付呪魔法とは様々な魔法を武器や防具、または道具に付けて魔道具に変える魔法だ。
ちなみにダンの持つ魔法の鞄も、付呪魔法をかけた魔道具である。
ローランドは魔力から生み出す闘気により、武器や防具の効力をあげたり、身体能力さえも向上させる事が出来るのだ。
クローディアは、ふと思い出す。
上司のローランドとは、今迄に何度か『仕事』をしている。
人に害為す魔物討伐が主であったが、いつも人間離れした強さで敵を圧倒した。
しかし魔物相手でも、ローランドは『闘気』を使う事は滅多にない。
元々備わっている力と技とスピードで、相手を難なく倒せるからだ。
今迄に闘気を使ったのは凶悪な竜を倒した時、そして竜に準ずる強靭な魔物と数回戦った時くらいだと、クローディアは記憶している。
そして、ダンとの戦いの時も……
だがエリンは、いきなりローランドに『闘気』を使わせるような魔法を使った。
先程の岩弾のスケールといい、やはりエリンはローランドの言う通り只者ではないのだ。
そんなクローディアの思いは、ダンの軽口で破られた。
「ははは、クローディアさん。やっぱり障壁作っといてよかったでしょう?」
「そう……ですね」
ダンの言う通りであった。
ローランドが砕いた以外のエリンの放った岩弾は、ダンの作った魔法障壁にぶつかり四散したのだから。
魔法障壁が無ければ、闘技場の壁は間違いなく損傷していた筈である。
「これから……もっと面白くなりますよ、試合」
ダンの呟いた意外な言葉。
「え?」
クローディアは大きく目を見開いてまじまじとダンを見つめた。
そして、慌てて対峙するローランドとエリンへと、視線を向けたのであった。
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