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第141話「未知の世界へ⑤」
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エリンとヴィリヤは、複雑な表情である。
種族的にどちらが優れている? という話が……互角という判断になったのだ。
ふたりは、仲良くはなったが、元々種族としてのライバル意識がとても高かったから。
ダンは、知ってか知らずか、話を続けている。
「考えてみてくれ。創世神は何故、こんなに素晴らしいダークエルフを追放したのか? 何故エルフとダークエルフは仲が悪いのか? 疑問に思った俺は、推測してみた」
「…………」
「…………」
「以前俺は、王宮の倉庫で、禁書とされた古文書を読んだ事がある。それにはこう記されていた」
「…………」
「…………」
「エルフとダークエルフの祖先は元々同じで、最初は仲が良かった……だが途中からお互いを、激しくライバル視していたと」
「…………」
「…………」
「俺はこう考えた……遥か昔、両者の間で何か事件があった。それで諍《いさか》いを起こし、袂《たもと》を分かった。その際、何らかの理由で創世神が断を下し、ダークエルフだけが地下へ追放されてしまった」
「…………」
「…………」
「ソウェルというのはエルフの長の名称だ。これが地下世界のダークエルフにも使われていた……という事は、何か理由がある」
「…………」
「…………」
「元々、エルフ族で使われていた名称なのか? それともこちらが本家だ! という正統性を主張しているのか? 王国として発展したエリンの一族と違う、ダークエルフの別の一族が存在し、名称を使っているとしたら、と考えたんだ」
「…………」
「…………」
「そもそも何故、彼等がエルフを憎むのか? という事にも合致する。そしてこの迷宮の秘密もな」
「迷宮の秘密?」
「どういう事でしょう?」
「この迷宮は一般的に英雄の迷宮と言われているが、実はダークエルフ達の為の迷宮だとしたら、どうだ?」
「???」
「???」
「今回、俺達が結ばれたのと同じように……迷宮へ入って来た人間やエルフがダークエルフと結婚し、その子孫という形になれば純粋なダークエルフの外見が変わって行く。徐々に目立たなくなる。そうなると今の世界に不自然なく溶け込めるとしたら」
「あ!」
「そ、そうか!」
「うん! 彼等は永久に暗い地下なんかには居たくない、濡れ衣で追いやられたなら、当たり前だと思う。俺にも気持ちは分かる」
「…………」
「…………」
「この迷宮は過酷だ。地下深くまで来れるのは相当な実力者だ。才能がある」
「…………」
「…………」
「彼等はそういった優秀な、様々な種族の冒険者達を行方不明に見せかけ、自分達の国へ引き込んだ、俺はそう見ているんだ」
「…………」
「…………」
「結果、ダークエルフ達は、様々な種族の新たな民を迎え、長い年月をかけて血をシャッフルする。生まれた子孫が、外見的には完全に目立たなくなったと判断した時点で地上へ出ようと考えているのではないかな」
「…………」
「…………」
「地上から冒険者が来て、自国の民がどんどん増えれば、比例し国としての力も増す。常に新しい情報も手に入る。良い事尽くしだ」
「…………」
「…………」
「行方不明者の中には単純に迷宮で命を落とした者も居るだろう。しかし彼等の国へ誘われ、民となった者も多数居ると俺は思う」
「とすれば! やっぱりチャーリーやニーナのお兄さんは生きてるね」
「…………」
「ああ、エリン。希望的観測だが、生きていて欲しい。まあ、後の問題は、彼等が地上に出て、何を欲するかだ」
「何を欲する?」
「ダン……まさか!」
首を傾げるエリン。
片や、ハッとしたヴィリヤは、思わず口へ手をあてた。
「ああ、ヴィリヤ、そうだ。彼等ダークエルフが戦いを引き起こして、地上の世界を取り戻したいと考えてもおかしくはないんだ」
「…………」
「…………」
「何故なら、地上は全て、違う種族の国々で線引きされてしまっている……彼等が無理やり新たな土地を欲して、大きな戦いが起こる可能性は充分にある」
「…………」
「…………」
「だが、無益な争いは御免だ。俺は彼等に話を聞いた上で、もし協力出来る事があれば協力する。だが地上を戦乱に陥れるつもりなら………阻止しよう」
「うん! エリンも、そういう戦いは嫌だ」
「で、ですね! 平和が一番です」
「よっし! 俺達3人の気持ちは一緒だ、頼むぞ」
3人は、またお約束の『フィスト バンプ』を行う。
今回の拳のタッチで、絆がより深くなった気がする。
ここでエリンが、両手を合わせて『お願いポーズ』をする。
「旦那様」
「何だ? エリン」
「ヴィリヤへ、ご褒美をあげて下さい」
ご褒美?
エリンは何を言っているのだろう?
ヴィリヤは吃驚し、柄にもなく「おろおろ」する。
何故か、また顔が赤くなっていた……
「エ、エリンさん!」
「ご褒美?」
ダンが聞き返すと、エリンはにっこり笑った。
「うん! 女子はね、確かな言葉と愛情行為を貰えると、安心するんだよ。もっともっと頑張れるんだよ」
エリンの言葉を聞き、ダンには「ピン!」と来たようだ。
「妻となった」ヴィリヤには、ダンと愛し合っている、はっきりした証が欲しいのだ。
「確かな言葉と愛情行為か……分かった! ヴィリヤ! おいで!」
「はいっ! ダ~ン!!!」
両手を広げた、ダンの胸の中へ……
ヴィリヤは、『ダンの嫁』として、初めて飛び込んだのである……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……ヴィリヤの回想は、瞬く間に終わった……
ここは、迷宮地下10階、『王の間』……
目の前には、開かれた魔法扉へ向けて歩く、ダンとエリンの背中が見えていた。
ダンが『ソウェル』リストマッティと話を付け、安全を確保しながら、とうとう『敵中』へ乗り込むのだ。
『好ましい仲間』だと思っていたエリンが、実はダークエルフだった……
しかしダークエルフは、ヴィリヤが認識していたような邪悪な存在ではなかった。
『隠された真実』を知り、全く未知の世界へ、第一歩を踏み入れたヴィリヤは……
ソウェルの名称を使う『謎の存在達の国』というこれまた更に、深い深い未知の世界へ、足を踏み入れる事となる。
だがヴィリヤは、もう臆する事はない。
「自分はもうひとりではない!」という、心の強さがあるからだ。
愛する想い人、そして共に支え合い、信じられる戦友が居るから……
……生まれて初めて男性に、それも大好きなダンに抱かれて、キスまでされた。
もうヴィリヤは、天にも昇る気持ちだった。
同時に、「受け入れてくれたエリンに感謝し、家族として、しっかりしなければならない」という、新たな決意と意識も生まれていた。
そう、家族とは……
支えなければならない存在であると同時に、辛い時には自分をしっかり支えてくれる存在……
……それこそが真の家族であり、支え合うとは『心の絆』を結ぶ事……なのである。
この迷宮探索は、ヴィリヤの人生の転機となった。
彼女の中には、しっかりと『心の絆』が結ばれたのである。
種族的にどちらが優れている? という話が……互角という判断になったのだ。
ふたりは、仲良くはなったが、元々種族としてのライバル意識がとても高かったから。
ダンは、知ってか知らずか、話を続けている。
「考えてみてくれ。創世神は何故、こんなに素晴らしいダークエルフを追放したのか? 何故エルフとダークエルフは仲が悪いのか? 疑問に思った俺は、推測してみた」
「…………」
「…………」
「以前俺は、王宮の倉庫で、禁書とされた古文書を読んだ事がある。それにはこう記されていた」
「…………」
「…………」
「エルフとダークエルフの祖先は元々同じで、最初は仲が良かった……だが途中からお互いを、激しくライバル視していたと」
「…………」
「…………」
「俺はこう考えた……遥か昔、両者の間で何か事件があった。それで諍《いさか》いを起こし、袂《たもと》を分かった。その際、何らかの理由で創世神が断を下し、ダークエルフだけが地下へ追放されてしまった」
「…………」
「…………」
「ソウェルというのはエルフの長の名称だ。これが地下世界のダークエルフにも使われていた……という事は、何か理由がある」
「…………」
「…………」
「元々、エルフ族で使われていた名称なのか? それともこちらが本家だ! という正統性を主張しているのか? 王国として発展したエリンの一族と違う、ダークエルフの別の一族が存在し、名称を使っているとしたら、と考えたんだ」
「…………」
「…………」
「そもそも何故、彼等がエルフを憎むのか? という事にも合致する。そしてこの迷宮の秘密もな」
「迷宮の秘密?」
「どういう事でしょう?」
「この迷宮は一般的に英雄の迷宮と言われているが、実はダークエルフ達の為の迷宮だとしたら、どうだ?」
「???」
「???」
「今回、俺達が結ばれたのと同じように……迷宮へ入って来た人間やエルフがダークエルフと結婚し、その子孫という形になれば純粋なダークエルフの外見が変わって行く。徐々に目立たなくなる。そうなると今の世界に不自然なく溶け込めるとしたら」
「あ!」
「そ、そうか!」
「うん! 彼等は永久に暗い地下なんかには居たくない、濡れ衣で追いやられたなら、当たり前だと思う。俺にも気持ちは分かる」
「…………」
「…………」
「この迷宮は過酷だ。地下深くまで来れるのは相当な実力者だ。才能がある」
「…………」
「…………」
「彼等はそういった優秀な、様々な種族の冒険者達を行方不明に見せかけ、自分達の国へ引き込んだ、俺はそう見ているんだ」
「…………」
「…………」
「結果、ダークエルフ達は、様々な種族の新たな民を迎え、長い年月をかけて血をシャッフルする。生まれた子孫が、外見的には完全に目立たなくなったと判断した時点で地上へ出ようと考えているのではないかな」
「…………」
「…………」
「地上から冒険者が来て、自国の民がどんどん増えれば、比例し国としての力も増す。常に新しい情報も手に入る。良い事尽くしだ」
「…………」
「…………」
「行方不明者の中には単純に迷宮で命を落とした者も居るだろう。しかし彼等の国へ誘われ、民となった者も多数居ると俺は思う」
「とすれば! やっぱりチャーリーやニーナのお兄さんは生きてるね」
「…………」
「ああ、エリン。希望的観測だが、生きていて欲しい。まあ、後の問題は、彼等が地上に出て、何を欲するかだ」
「何を欲する?」
「ダン……まさか!」
首を傾げるエリン。
片や、ハッとしたヴィリヤは、思わず口へ手をあてた。
「ああ、ヴィリヤ、そうだ。彼等ダークエルフが戦いを引き起こして、地上の世界を取り戻したいと考えてもおかしくはないんだ」
「…………」
「…………」
「何故なら、地上は全て、違う種族の国々で線引きされてしまっている……彼等が無理やり新たな土地を欲して、大きな戦いが起こる可能性は充分にある」
「…………」
「…………」
「だが、無益な争いは御免だ。俺は彼等に話を聞いた上で、もし協力出来る事があれば協力する。だが地上を戦乱に陥れるつもりなら………阻止しよう」
「うん! エリンも、そういう戦いは嫌だ」
「で、ですね! 平和が一番です」
「よっし! 俺達3人の気持ちは一緒だ、頼むぞ」
3人は、またお約束の『フィスト バンプ』を行う。
今回の拳のタッチで、絆がより深くなった気がする。
ここでエリンが、両手を合わせて『お願いポーズ』をする。
「旦那様」
「何だ? エリン」
「ヴィリヤへ、ご褒美をあげて下さい」
ご褒美?
エリンは何を言っているのだろう?
ヴィリヤは吃驚し、柄にもなく「おろおろ」する。
何故か、また顔が赤くなっていた……
「エ、エリンさん!」
「ご褒美?」
ダンが聞き返すと、エリンはにっこり笑った。
「うん! 女子はね、確かな言葉と愛情行為を貰えると、安心するんだよ。もっともっと頑張れるんだよ」
エリンの言葉を聞き、ダンには「ピン!」と来たようだ。
「妻となった」ヴィリヤには、ダンと愛し合っている、はっきりした証が欲しいのだ。
「確かな言葉と愛情行為か……分かった! ヴィリヤ! おいで!」
「はいっ! ダ~ン!!!」
両手を広げた、ダンの胸の中へ……
ヴィリヤは、『ダンの嫁』として、初めて飛び込んだのである……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……ヴィリヤの回想は、瞬く間に終わった……
ここは、迷宮地下10階、『王の間』……
目の前には、開かれた魔法扉へ向けて歩く、ダンとエリンの背中が見えていた。
ダンが『ソウェル』リストマッティと話を付け、安全を確保しながら、とうとう『敵中』へ乗り込むのだ。
『好ましい仲間』だと思っていたエリンが、実はダークエルフだった……
しかしダークエルフは、ヴィリヤが認識していたような邪悪な存在ではなかった。
『隠された真実』を知り、全く未知の世界へ、第一歩を踏み入れたヴィリヤは……
ソウェルの名称を使う『謎の存在達の国』というこれまた更に、深い深い未知の世界へ、足を踏み入れる事となる。
だがヴィリヤは、もう臆する事はない。
「自分はもうひとりではない!」という、心の強さがあるからだ。
愛する想い人、そして共に支え合い、信じられる戦友が居るから……
……生まれて初めて男性に、それも大好きなダンに抱かれて、キスまでされた。
もうヴィリヤは、天にも昇る気持ちだった。
同時に、「受け入れてくれたエリンに感謝し、家族として、しっかりしなければならない」という、新たな決意と意識も生まれていた。
そう、家族とは……
支えなければならない存在であると同時に、辛い時には自分をしっかり支えてくれる存在……
……それこそが真の家族であり、支え合うとは『心の絆』を結ぶ事……なのである。
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