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第175話「最後の神託①」
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30分後……
ダンの話が終わった。
デックアールヴが、一族の悲願ともいえる、地上への帰還を果たす為……
『全てを投げうつ』覚悟をした事一切を……告げたのだ。
さすがに、フィリップとベアトリスは大きなショックを受けていた。
種族のアイデンティティを失う事が、どれだけ凄まじいか、想像出来るからだ。
「お気の毒に……リストマッティ様……そうお決めになるまでに、とてもお悩みになったでしょうね」
「ああ、私もそう思うぞ、ベアトリス」
「ですが……その方法なら、論より証拠……いずれ真実を明かした時、誰もがデックアールヴ達を受け入れてくれるでしょう」
ベアトリスの言う通りだ。
実際に一緒に過ごしてみて、呪いなど、何も起こらない事が証明されれば……
つまらない迷信など、いずれ消えて行く……
そして難儀する、世界中の人々を助ければ、真の信頼関係も築けるだろう。
ベアトリスの言葉に納得し、フィリップも大きく頷く。
「うむ! ベアトリス、私も全く同感さ」
「ではフィリップ様」
と、ダンが確かめるように尋ねると、フィリップは「にっこり」笑った。
誰が見ても分かる、協力OKの笑顔である。
偉大な開祖バートクリードさえも成し遂げられなかった、長年の望みを……
末裔たる自分が遂に叶える!
無上の喜びも、同時に現れているのだ。
「ああ、私もヴェルネリ殿同様、全面的に協力させて貰おう」
話は、無事まとまった。
ダンは、使者としての役目をやり遂げたのだ。
後はもう少し事実を、ダン達の現状を、この兄妹へ伝えねばならない。
「じゃあ、もう少し俺達の報告を……」
と、ダンが言いかけた時。
ベアトリスから、ストップが掛かる。
「ちょっと待って下さい、ダン」
「おお、そうだ、神託があったな」
「はい!」
少し前からフィリップは感じている。
ダンとベアトリスの会話が近しい……
多分ベアトリスは……ダンに好意を持っている。
しかし少女らしい、勇気への憧れに等しい淡い初恋だとも、フィリップは思っていた。
「ダン、私からお兄様へ告げましょう……この場の他の方は、もうご存知でしょうから」
「え? 私だけ知らないとは? 何の事だね、ベアトリス」
「はい! ダンは先日、高貴なる4界王のひとり、水界王アリトン様から加護を受け、全属性魔法使用者となり、同時に偉大なる救世の勇者にもなりました。これはダンとアリトン様の加護を受けたヴィリヤが、結ばれたのが、きっかけです」
「ええええっ!?」
ダンが救世の勇者?
驚愕するフィリップを尻目に、ベアトリスは淡々と告げる。
「そしてエリンさん、貴女、実はデックアールヴですね?」
「ええええ~っ!!!」
「何も知らなかった」のは……やはりフィリップだけであった。
『創世神の巫女ベアトリス』は、下された『神託』により、全ての事情を既に承知していた。
果断なく襲うサプライズに、フィリップは混乱した気持ちを抑えきれない。
「ベアトリス、ダンが救世の勇者って! ほ、本当か? それにこのエリンさんがデックアールヴ!?」
拳を握りしめ、噛みながら聞くフィリップを、ベアトリスはつい「可愛い」と思ってしまう。
厳しい表情で政務に没頭する、日頃の兄とはまるで違うから。
まるで子供が、誕生日プレゼントのサプライズにびっくりするような仕草なのだから。
「もう、お兄様ったら! 少しは落ち着いて下さいませ」
「ベアトリス! そ、そんな事を言ったって!」
目を丸くする兄へ、ベアトリスは優しく微笑んだ。
「うふふ、お兄様、何を慌てていらっしゃるのですか? 怪しい占い師のお告げではないのです、創世神様のれっきとしたご神託なのですよ」
「…………」
「それに、アリトン様が降臨された時、この場の皆さんは立ち会っておられたのでしょう?」
ベアトリスが問いかけると。
エリン、ヴィリヤ、ゲルダも間を置かずに返して来る。
「うん、エリンは、はっきり見た」
「私も! 直接アリトン様と、お話しましたから」
「わ、私も! し、しっかりと見ました!」
「…………」
ニーナは話を聞いただけなので、黙って微笑んでいた。
否定しない4人の答えを聞き、満足そうに頷いたベアトリスは、更に言う。
「加えて……この場にはいらっしゃいませんが、ヴェルネリ様も、アリトン様をご覧になっています。ねえ、ヴィリヤ」
再び、ベアトリスから問われたヴィリヤは、力強く言い放つ。
「はい! ベアトリス様。お祖父様、いえ、我がソウェルは、アリトン様をはっきりと見て、お言葉を聞きました。アリトン様がダンの事を救世の勇者、そして神の代理人だと仰せになったのを」
「ですって、お兄様、いかが」
澄ました顔で聞く、ベアトリスを見て、フィリップは瞬時に判断した。
証人が目の前にこれだけ居る。
リョースアールヴの長までもが証人なのだ。
こうなれば、今迄のダンへの『扱い』を、まるっきり変えないといけないと。
このアイディール王国でもアールヴ達同様、伝説と言われる『救世の勇者』は、『神に極めて近い存在』だと信じられていたのだ。
「ダ、ダン様、これまでの失礼をお許し下さいっ!」
フィリップは叫ぶように謝罪すると、ダンへ向かい、深々と頭を下げたのであった。
ダンの話が終わった。
デックアールヴが、一族の悲願ともいえる、地上への帰還を果たす為……
『全てを投げうつ』覚悟をした事一切を……告げたのだ。
さすがに、フィリップとベアトリスは大きなショックを受けていた。
種族のアイデンティティを失う事が、どれだけ凄まじいか、想像出来るからだ。
「お気の毒に……リストマッティ様……そうお決めになるまでに、とてもお悩みになったでしょうね」
「ああ、私もそう思うぞ、ベアトリス」
「ですが……その方法なら、論より証拠……いずれ真実を明かした時、誰もがデックアールヴ達を受け入れてくれるでしょう」
ベアトリスの言う通りだ。
実際に一緒に過ごしてみて、呪いなど、何も起こらない事が証明されれば……
つまらない迷信など、いずれ消えて行く……
そして難儀する、世界中の人々を助ければ、真の信頼関係も築けるだろう。
ベアトリスの言葉に納得し、フィリップも大きく頷く。
「うむ! ベアトリス、私も全く同感さ」
「ではフィリップ様」
と、ダンが確かめるように尋ねると、フィリップは「にっこり」笑った。
誰が見ても分かる、協力OKの笑顔である。
偉大な開祖バートクリードさえも成し遂げられなかった、長年の望みを……
末裔たる自分が遂に叶える!
無上の喜びも、同時に現れているのだ。
「ああ、私もヴェルネリ殿同様、全面的に協力させて貰おう」
話は、無事まとまった。
ダンは、使者としての役目をやり遂げたのだ。
後はもう少し事実を、ダン達の現状を、この兄妹へ伝えねばならない。
「じゃあ、もう少し俺達の報告を……」
と、ダンが言いかけた時。
ベアトリスから、ストップが掛かる。
「ちょっと待って下さい、ダン」
「おお、そうだ、神託があったな」
「はい!」
少し前からフィリップは感じている。
ダンとベアトリスの会話が近しい……
多分ベアトリスは……ダンに好意を持っている。
しかし少女らしい、勇気への憧れに等しい淡い初恋だとも、フィリップは思っていた。
「ダン、私からお兄様へ告げましょう……この場の他の方は、もうご存知でしょうから」
「え? 私だけ知らないとは? 何の事だね、ベアトリス」
「はい! ダンは先日、高貴なる4界王のひとり、水界王アリトン様から加護を受け、全属性魔法使用者となり、同時に偉大なる救世の勇者にもなりました。これはダンとアリトン様の加護を受けたヴィリヤが、結ばれたのが、きっかけです」
「ええええっ!?」
ダンが救世の勇者?
驚愕するフィリップを尻目に、ベアトリスは淡々と告げる。
「そしてエリンさん、貴女、実はデックアールヴですね?」
「ええええ~っ!!!」
「何も知らなかった」のは……やはりフィリップだけであった。
『創世神の巫女ベアトリス』は、下された『神託』により、全ての事情を既に承知していた。
果断なく襲うサプライズに、フィリップは混乱した気持ちを抑えきれない。
「ベアトリス、ダンが救世の勇者って! ほ、本当か? それにこのエリンさんがデックアールヴ!?」
拳を握りしめ、噛みながら聞くフィリップを、ベアトリスはつい「可愛い」と思ってしまう。
厳しい表情で政務に没頭する、日頃の兄とはまるで違うから。
まるで子供が、誕生日プレゼントのサプライズにびっくりするような仕草なのだから。
「もう、お兄様ったら! 少しは落ち着いて下さいませ」
「ベアトリス! そ、そんな事を言ったって!」
目を丸くする兄へ、ベアトリスは優しく微笑んだ。
「うふふ、お兄様、何を慌てていらっしゃるのですか? 怪しい占い師のお告げではないのです、創世神様のれっきとしたご神託なのですよ」
「…………」
「それに、アリトン様が降臨された時、この場の皆さんは立ち会っておられたのでしょう?」
ベアトリスが問いかけると。
エリン、ヴィリヤ、ゲルダも間を置かずに返して来る。
「うん、エリンは、はっきり見た」
「私も! 直接アリトン様と、お話しましたから」
「わ、私も! し、しっかりと見ました!」
「…………」
ニーナは話を聞いただけなので、黙って微笑んでいた。
否定しない4人の答えを聞き、満足そうに頷いたベアトリスは、更に言う。
「加えて……この場にはいらっしゃいませんが、ヴェルネリ様も、アリトン様をご覧になっています。ねえ、ヴィリヤ」
再び、ベアトリスから問われたヴィリヤは、力強く言い放つ。
「はい! ベアトリス様。お祖父様、いえ、我がソウェルは、アリトン様をはっきりと見て、お言葉を聞きました。アリトン様がダンの事を救世の勇者、そして神の代理人だと仰せになったのを」
「ですって、お兄様、いかが」
澄ました顔で聞く、ベアトリスを見て、フィリップは瞬時に判断した。
証人が目の前にこれだけ居る。
リョースアールヴの長までもが証人なのだ。
こうなれば、今迄のダンへの『扱い』を、まるっきり変えないといけないと。
このアイディール王国でもアールヴ達同様、伝説と言われる『救世の勇者』は、『神に極めて近い存在』だと信じられていたのだ。
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