冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!

東導 号

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第61話「だから、間合いとか気にせずに、遠慮なく打ち込んで来てくれないか」

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俺は少し離れた位置で、剣を構えるローラン様へ、
最大限に意識を集中した。

う~む。
思わず、口の中で小さく唸ってしまう。

微笑んだローラン様は剣を構え、ゆったりと立っていた。

それなのに、威圧されてしまう。

絶対に錯覚なのだろうが、クランで一番体格の良い、バスチアンさんよりも、
ローラン様の方が遥かに大きく見える。

加えて、一分の隙もないと来た。
ほんと、すげ~迫力だ。

ここまでの迫力なのに、ローラン様にはぎらぎらした殺気がない。
放つ波動は感じるが、ほんのわずか。

困った。

これでは、俺の特異な『勘働き』で、ローラン様の意思が読み取れない。

それが不安ではある。

決して怖くはないが、緊張して武者震い。

顔、身体の四肢。
どっと、汗が噴き出すのが分かる。

まるで、蛇に睨まれた蛙だ。
これじゃあ、フェルナンさんの事をどうのこうの、偉そうに言えないや。

ははは、と自虐的に笑ってしまう。

苦笑して脱力したら、気分が一気に楽になった。

ローラン様と張り合おう、……なんて、おこがましい、こざかしいや俺。

……そんな事をつらつら考えていた。

ひどく長い時間が経ったように感じたが、実際には5分経っていなかっただろう。

俺は遂に覚悟を決めた。

うん、ローラン様はバスチアンさんの3倍増し。
そう、シンプルに割り切ろう。

「ローラン様! エルヴェ!! いきま~す!!」

ためらう自分の背を、無理やり後押しするよう叫び、だん!と大地を蹴った。

ローラン様には通じない、こんな事、無駄かと思いながらも、
一応、かく乱の為、じぐざぐに走る。 

走りながら、決めた作戦を心の中で繰り返す。

ローラン様の『間合い』の外から、ヒットアンドアウェイ攻撃。
――有効射程と索敵能力の許す限り遠くから攻撃を仕掛け、
即座に撤退する事に徹する。

まずは、一撃!

バスチアンさんの3倍増しだから、間合いも3倍。
とんでもなく遠い距離から、俺の剣撃。

当然、空振り。
剣を構え、ゆったりと立つローラン様に当たるどころか、かすりもしない。
否、全然届かない。

ローラン様自身、防御とかもしない。
立った、そのまま動かない。

加えて、剣撃を入れたと同時に大きく飛び退すさるから、
ひとりで勝手にあたふたしてる。

馬鹿みたいだ、はたから見たら、本当に滑稽だよ、俺。
でも、子供の頃から憧れの、ローラン様と模擬戦出来るんだから、
贅沢なんか言っちゃいけないな。

そう考え、飛び退って態勢を整え直した俺を見て、ローラン様は言う。

「ふむ、走りとステップは大したものだ。一撃の際の踏み込みも中々良い。そして、バスチアンの時と同様に極端なヒットアンドアウェイ戦法で来たか……懐かしいな」


おお、褒められた!

それと何?
懐かしいって?

あらら、ローラン様、何かしみじみしてる。

俺は思わず言葉を発してしまう。

「懐かしいの……ですか?」

「ああ、エルヴェ君は、若かりし頃の、昔の私のようだよ」

「え? 俺が、若い頃の? 昔のローラン様のよう?」 

「うむ、昔の私はね、未知の敵に挑む際、エルヴェ君のように、石橋を叩いても渡らないくらい距離を取った安全圏からのヒットアンドアウェイ戦法を取っていたよ」

相変わらず殺気が皆無のローラン様は、そう言うとにっこり笑ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さあて、エルヴェ君、昔話は終わりにしよう」

笑顔のローラン様は、そう言うと「ふう」と軽く息を吐き、更に話を続ける。

「私はね、今年度の新人冒険者ナンバーワン、否! 私の後継者になるべき逸材と見込んだドラフト一位たる君の実力を、ぜひ見てみたい!」

うお!?
さっきに続き、またも物凄いコメントが来た!!

お、お、俺が!!??
ロ、ローラン様の後継者!!??
マエストロを受け継ぐってのか!!??

で、でも!
俺の実力を見てみたいって、ローラン様、一体どうするつもりだろ?

……と思ったら、

「エルヴェ君はとても慎重過ぎる性格のようだが、それでは私が、君の実力を体感出来ない。そこで提案だ」

「提案……ですか?」

「ああ、エルヴェ君が使うヒットアンドアウェイ戦法を続けていたら、バスチアンの時以上に時間ばっかりかかるだろう?」

「ええっと……」

「何故ならば、君は私の間合いには入らず、必ず回避出来る絶対に安全な位置から、攻撃を入れてくるからね」

あちゃ~、見抜かれてるか。
バスチアンさんにとった戦法同様、ヒットアンドアウェイ戦法から持久戦へ持ち込むつもりだったんだが……
じっと耐え、そして生まれたわずかな隙に、勝機を見い出すと。

なので、俺は肯定するしかない。

「まあ……そうですね」

「ふふふ……でだ。約束しよう」

「約束ですか?」

「ああ、君の剣筋をしっかりと見る為、今回、私からは一切反撃しない。かわすなり、受けるなり、防御一辺倒で君の剣技を見させて貰うよ」

えええ!!??

一切反撃しない?
かわすなり、受けるなり、防御一辺倒?

「だから、間合いとか気にせずに、遠慮なく打ち込んで来てくれないか」

成る程。
そして提案して来るローラン様の波動には邪悪な気配を感じない。

まあ、こういう状況で俺に対し、
ローラン様が嘘偽りを述べる必要性、メリットは全然ないから。

「分かりました。で、あれば遠慮なく行かせて頂きます」

ローラン様の提案を受けた俺は、大きく頷いたのである。
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