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第62話「最大の勝機来たる!!!」
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一切反撃しない。
躱すなり、受けるなり、防御一辺倒。
だから、間合いとか気にせずに、遠慮なく打ち込んで来てくれないか。
という、ローラン様。
マエストロたる冒険者のカリスマから、ここまで才能を見込まれ、快諾しなければ、
俺は人間として情けないどころか、終わってる。
「分かりました。で、あれば遠慮なく行かせて頂きます」
ローラン様の提案を受けた俺は、大きく頷いた。
「うむ、良い返事だ」
俺の回答を聞き、満足そうに微笑むローラン様。
防御一辺倒で攻撃を受けると言われても、さすがに少し緊張するが、
改めて自分を奮い立たせて決意する。
こうなったら、俺の能力を全開で立ち向かってやる。
そして、現時点における俺の能力フルパワーがどこまで通用するのか、
果たして、あのローラン様へ、一撃を入れる事が出来るのか……試してやると。
万が一、ランクFの俺がランクSのローラン様へ、一撃を入れる事が出来たら、
下剋上なんてものじゃない。
天と地がひっくり返る! と言い切っても構わない。
それに俺は既に下剋上を果たした……と思う。
ランクAの超一流戦士のバスチアンさんを、
剣のみの模擬戦とはいえ、最底辺の身で圧倒したのだから。
そんな事をつらつらつらっと考えてから、俺は深呼吸して精神統一。
す~は~、す~は~、す~は~、す~は~、す~は~、
よっしゃ!
息が整った。
……攻めどころも決まった!
1回しか戦っていないから、完全に情報不足だけど。
その1回に賭ける!
「エルヴェ!! いきま~す!!」
どんなに勇気を振り絞っても、ローラン様に対する恐れはなくならない。
でも俺は先へ進まなくてはならない。
立ち止まってはいられない。
道を己自身で切り開く!
ためらう自分の背を、無理やり後押しするよう叫び、
俺は、だん!と大地を蹴った。
先ほどと同じく、一応、かく乱の為、じぐざぐに走る。
ヒットアンドアウェイ攻撃ではない、一撃必殺!
ローラン様の『間合い』も無視!
相打ちになっても構わない! という覚悟で踏み込んだ。
俺の渾身の一撃!!
「うお!」
おお、ローラン様が短く叫んだ。
俺の一撃に驚いたようだ。
どうやら想定外だったらしい。
慌ててステップバックし、一撃を躱そうとしている。
驚き慌てたから、勘働きが察知した波動がはっきりと読み取れる。
……ローラン様は、左へ動く!!
俺は、勘働きのささやきを信じ、迷わず左へ剣を振る。
がいいいんんん!!!
ばちばちばちばちっっっっ!!!
重い金属音、そして雷撃が鳴り響いた。
俺は目の前の光景が信じられず、呆然としていた。
あの伝説の英雄ローラン様が俺の一撃を避けきれず、
とっさに剣を合わせ、防いだからだ。
一瞬、ぼうっとした俺だったが、すぐ我に返った。
ローラン様は本気を出していないと。
何故なら、ローラン様の剣技防御、『弾き返し』は、
相手の剣を楽々と弾き返すのは勿論、
巻き上げて、天高く飛ばしてしまう事も可能だから。
そもそも、こんなに簡単に俺が受けられるわけもない。
まともに受けて、腕をへし折られた魔族も多いと聞いたし、
数多の英雄譚にも記録として残されているからだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
何と何と何と!!!
俺とローラン様は、剣を交差させ、そのまま動きを止めていた。
力が全くの互角。
これは奇跡的な事が起こった……否! 違う! 絶対に違う!
俺には、はっきりと分かる。
ローラン様は『本気』ではなかったと。
……こういう場合、騎士で良くいるタイプが、プライドが高すぎて激高する奴。
この俺に本気を出さないなんて、馬鹿にしてます?みたいな。
失礼です、手加減せず、全力を出してくださいよって感じ?
戦場で名乗りを上げ、堂々と戦うのが、スフェール王国騎士の流儀らしいし。
背後から隙をつくなんて、もってのほかだとも。
騎士とは己の誇りとプライドに生き、そして死ぬ。
そう子供の頃から、教えられた。
でも俺は違う。
俺は実家を追放され、騎士を捨て、冒険者となった身。
ローラン様に手加減されようが、油断されようが、勝機は絶対に逃さない。
そして、偉大なる某、冒険者はこう述べた。
冒険者とは、鬼畜に堕ちなければ、まず生き残る事を優先すると。
俺も全く同感だ。
まずは生き残る事が最優先。
つまらない意地とプライドの為、命を懸けるなんて馬鹿らしいし、
出来るならケガさえもしたくはない。
ここで、ハッと思いついた。
ローラン様も、もしや俺と同じだったのではないかと。
多分……ローラン様は、俺がローラン様の実力を推し量ったのと同様、
バスチアンさんを『物差し』にしたのではないかと。
しかし、ローラン様の計算は間違っていた。
どれくらい『増し』にしたのかは分からないが、俺の実力はその上を行っていた。
ここが勝負所!
俺は、思い切りフルパワーでローラン様を突き放した。
よろよろよろっと、たたらを踏む、ローラン様。
でもすぐ態勢を整え、身構える。
さすが、ローラン様。
しかし、一分の隙もない通常モードに比べれば、無防備に等しい。
最大の勝機来たる!!!
俺は、だん!と思い切り踏み込み、ふらつくローラン様に超肉薄!
だうっ!
と、思い切りローラン様の胴へ、雷撃剣の刀身を叩き込んだ。
すると、同時に、
ばちばちばちばちっっっっ!!!!!
凄まじい雷撃音が響き渡ったのである。
躱すなり、受けるなり、防御一辺倒。
だから、間合いとか気にせずに、遠慮なく打ち込んで来てくれないか。
という、ローラン様。
マエストロたる冒険者のカリスマから、ここまで才能を見込まれ、快諾しなければ、
俺は人間として情けないどころか、終わってる。
「分かりました。で、あれば遠慮なく行かせて頂きます」
ローラン様の提案を受けた俺は、大きく頷いた。
「うむ、良い返事だ」
俺の回答を聞き、満足そうに微笑むローラン様。
防御一辺倒で攻撃を受けると言われても、さすがに少し緊張するが、
改めて自分を奮い立たせて決意する。
こうなったら、俺の能力を全開で立ち向かってやる。
そして、現時点における俺の能力フルパワーがどこまで通用するのか、
果たして、あのローラン様へ、一撃を入れる事が出来るのか……試してやると。
万が一、ランクFの俺がランクSのローラン様へ、一撃を入れる事が出来たら、
下剋上なんてものじゃない。
天と地がひっくり返る! と言い切っても構わない。
それに俺は既に下剋上を果たした……と思う。
ランクAの超一流戦士のバスチアンさんを、
剣のみの模擬戦とはいえ、最底辺の身で圧倒したのだから。
そんな事をつらつらつらっと考えてから、俺は深呼吸して精神統一。
す~は~、す~は~、す~は~、す~は~、す~は~、
よっしゃ!
息が整った。
……攻めどころも決まった!
1回しか戦っていないから、完全に情報不足だけど。
その1回に賭ける!
「エルヴェ!! いきま~す!!」
どんなに勇気を振り絞っても、ローラン様に対する恐れはなくならない。
でも俺は先へ進まなくてはならない。
立ち止まってはいられない。
道を己自身で切り開く!
ためらう自分の背を、無理やり後押しするよう叫び、
俺は、だん!と大地を蹴った。
先ほどと同じく、一応、かく乱の為、じぐざぐに走る。
ヒットアンドアウェイ攻撃ではない、一撃必殺!
ローラン様の『間合い』も無視!
相打ちになっても構わない! という覚悟で踏み込んだ。
俺の渾身の一撃!!
「うお!」
おお、ローラン様が短く叫んだ。
俺の一撃に驚いたようだ。
どうやら想定外だったらしい。
慌ててステップバックし、一撃を躱そうとしている。
驚き慌てたから、勘働きが察知した波動がはっきりと読み取れる。
……ローラン様は、左へ動く!!
俺は、勘働きのささやきを信じ、迷わず左へ剣を振る。
がいいいんんん!!!
ばちばちばちばちっっっっ!!!
重い金属音、そして雷撃が鳴り響いた。
俺は目の前の光景が信じられず、呆然としていた。
あの伝説の英雄ローラン様が俺の一撃を避けきれず、
とっさに剣を合わせ、防いだからだ。
一瞬、ぼうっとした俺だったが、すぐ我に返った。
ローラン様は本気を出していないと。
何故なら、ローラン様の剣技防御、『弾き返し』は、
相手の剣を楽々と弾き返すのは勿論、
巻き上げて、天高く飛ばしてしまう事も可能だから。
そもそも、こんなに簡単に俺が受けられるわけもない。
まともに受けて、腕をへし折られた魔族も多いと聞いたし、
数多の英雄譚にも記録として残されているからだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
何と何と何と!!!
俺とローラン様は、剣を交差させ、そのまま動きを止めていた。
力が全くの互角。
これは奇跡的な事が起こった……否! 違う! 絶対に違う!
俺には、はっきりと分かる。
ローラン様は『本気』ではなかったと。
……こういう場合、騎士で良くいるタイプが、プライドが高すぎて激高する奴。
この俺に本気を出さないなんて、馬鹿にしてます?みたいな。
失礼です、手加減せず、全力を出してくださいよって感じ?
戦場で名乗りを上げ、堂々と戦うのが、スフェール王国騎士の流儀らしいし。
背後から隙をつくなんて、もってのほかだとも。
騎士とは己の誇りとプライドに生き、そして死ぬ。
そう子供の頃から、教えられた。
でも俺は違う。
俺は実家を追放され、騎士を捨て、冒険者となった身。
ローラン様に手加減されようが、油断されようが、勝機は絶対に逃さない。
そして、偉大なる某、冒険者はこう述べた。
冒険者とは、鬼畜に堕ちなければ、まず生き残る事を優先すると。
俺も全く同感だ。
まずは生き残る事が最優先。
つまらない意地とプライドの為、命を懸けるなんて馬鹿らしいし、
出来るならケガさえもしたくはない。
ここで、ハッと思いついた。
ローラン様も、もしや俺と同じだったのではないかと。
多分……ローラン様は、俺がローラン様の実力を推し量ったのと同様、
バスチアンさんを『物差し』にしたのではないかと。
しかし、ローラン様の計算は間違っていた。
どれくらい『増し』にしたのかは分からないが、俺の実力はその上を行っていた。
ここが勝負所!
俺は、思い切りフルパワーでローラン様を突き放した。
よろよろよろっと、たたらを踏む、ローラン様。
でもすぐ態勢を整え、身構える。
さすが、ローラン様。
しかし、一分の隙もない通常モードに比べれば、無防備に等しい。
最大の勝機来たる!!!
俺は、だん!と思い切り踏み込み、ふらつくローラン様に超肉薄!
だうっ!
と、思い切りローラン様の胴へ、雷撃剣の刀身を叩き込んだ。
すると、同時に、
ばちばちばちばちっっっっ!!!!!
凄まじい雷撃音が響き渡ったのである。
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