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第102話「俺の指摘を聞き、フェルナンさんは青ざめてしまった」

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クソ兄貴に、ミランダ。
外道2匹へ、思い切り、ざまあ!と言ってやろう!

俺が来たるべき勝利を確信している中、
いくつかアイディアを加えたりして微調整はあったものの、最終打合せが終わった。

前例がない、「高級ホテルを入団発表会見の会場にする」という話から始まり……
様々な段取りが、着々と短時間のうちに組まれて行ったのである。

ローラン様の言葉通り、電光石火作戦で行く。

まずは俺、シャルロット、フェルナンさんの3人が、
「クラン、グランシャリオと本契約した!」
という大ニュースが冒険者ギルドから発表が為され……

同時に高級ホテルにおいて、入団発表会見が行われるという告知も、
王都を始め、書面でスフェール王国中へ周知された。

書面内では、俺たち新人に対し、ローラン様以下の4人の最大の賛辞付きである。

「バランス感覚に優れている」
「非の打ち所がない」
「底が見えない才能」
「伸びしろは無限大に近い」
「スケール感抜群」
「即戦力は勿論のこと、新人3人のみの構成でも最強クランレベル」
「将来的には現グランシャリオの強さを超えるかも」
「次世代を担える逸材揃い」
「不安はなし。期待しかない」

などなど……思いっきり持ち上げて貰った。

素直に嬉しいのだが、急ぎ用意したリリース資料を読み返すと、
正直赤面してしまう。

そしてこれらのコメントで終わりではない。

入団発表会見の場において、更に「ローラン様が自ら発表する予定」と前置きされ、

「この入団発表会見では、あっと驚く衝撃の事実が明かされる!」

最大級のあおりコメントも付けられていた。

これは何かといえば、俺の全属性魔法使用者オールラウンダー覚醒、
シャルロットの複数属性魔法使用者マルチプル覚醒という超隠し玉だ。

また3人まとめて、『いきなりのランクアップ』も披露されるらしい。

俺が最底辺のランクFからランクAに。
シャルロットがランクEからランクBに。
フェルナンさんもランクEからランクBに。

俺たちは仮所属時代に、依頼完遂の経験はある。
しかしグランシャリオのメンバーとしては、まだデビュー前。

ランク判定だけならともかく、依頼完遂もなしで、ランクアップ。
普通ならば考えられないくらい、とんでもない事なのである。

前例がない、今回の一件に、人々は凄く驚くに違いない。

実際、この発表には王国中どころか、国外でも驚きの声が次々と上がった。

元々、ローラン様が、他者を褒めるという事が滅多にない。

それも、これでもかというくらい大絶賛なのだから、無理もなかった。

こうなると当然、肉親、友人、知り合いからの問い合せが、
宿泊しているホテルへ、殺到する事となる。

ちなみにこういう場合、
普段あまり付き合いのない奴から、多く連絡が来るのはご愛嬌。

俺は実家、親戚、友人から。

両親を亡くしたシャルロットは親戚、魔法学校時代も含め友人から。

どちらも一旦スルーという感じ。

フェルナンさんはといえば、実家、友人、
そして伯爵令嬢彼女さんこと、オレリア・ブラントームさんのお父上、
ブラントーム伯爵からの問合せもあったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

よし!
ここまでは、俺たちの読み通り。
ブラントーム伯爵からの問合せがあったから、準備は万端だ!

もしくは、つかみはOK!とか、
細工は流々仕上げを御覧じろ!って感じかな。

フェルナンさんが喜んだのは言うまでもない。

早速、伯爵令嬢彼女さんこと、オレリア・ブラントームさんと、
お父上のブラントーム伯爵へ会いに行くと言い出した。

ふたりに会って、グランシャリオ本契約締結の報告をし、
状況次第では、オレリアさんへ、プロポーズしたいと言う。

ぐずぐずしていると、
オレリアさんと、侯爵家次期当主との見合い話が詰められてしまうと。

なので、俺とシャルロットも一応賛成はした。

時間がない。
悠長な事をしてはいられない、が合言葉だからね。

時は金なりだし、タイミングも大事。
打てる手は打っておいた方が良い。

しかし、ここで俺のスキル、『勘働き』が発動。

ローラン様たちへ相談した方が良いと、心の内なる声がささやいて来たのだ。

「フェルナンさん、ちょっと待ってください」

「な、何だ? 待てだと? 俺はすぐ出かけたいんだが……」

「いえいえ、どうせなら、ローラン様へ同行して貰いませんか?」

「え? ローラン様に同行?」

「はい、万が一の場合を考えましょう」

「万が一?」

「はい、アングラード侯爵家次期当主が父親の侯爵に頼んで強権発動をし、見合いの実施を求めた場合、やむなくブラントーム伯爵が受けてしまう場合がありますから」

「う! た、確かに!」

俺の指摘を聞き、フェルナンさんは青ざめてしまった。

スフェール王国貴族社会は、完璧な縦社会。
『強権発動』は、よくありがちな事だ。

「ローラン様はマエストロと称される魔王退治の英雄で、公爵扱い。同行をお願いし、一緒に頼めば、見合い実施の抑止力となりますよ」

俺の言葉を聞き、シャルロットも賛成する。

「エル君の言う通りよ! ローラン様が、ご了解されるかどうかは分からないけど、お願いする価値はある! 私とエル君も一緒にお願いしてあげるから!」

「わ、分かった! ありがとう! 本当にありがとう!」

熱く語る同期ふたりの顔を見て、フェルナンさんは大きく頷き、
重ねて礼を言ったのである。
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