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第142話「仲間の安全を第一に考えるんだ。それがリーダーたる者の責務だ」

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俺たちグランシャリオが討ち取ったゴブリンサージェントの死骸は、
村の中央広場でさらされ……
大勢の村民たちから、罵声を浴び、思いっきり蔑まれた。

哀れというか、可愛そうな気もするが、コイツが率いた500体強の群れにより、
結構な数の村民が殺されてしまった。

恨み骨髄の遺族からすれば、八つ裂きにしても飽き足らない相手だろう。

「ローラン様、皆さま、本当にありがとうございました」

「村長と同じく、私も深く深く感謝致します」

戻ってすぐに、そして改めてお礼を言って来たのは、
アンベール村長と助役さんである。

対してローラン様は、

「いやいや、今回はエルヴェ・アルノー、シャルロット・ブランシュ、フェルナン・バシュレの新人3人が中心となり、ほぼノーダメージで全てのゴブリンを倒す事が出来ました。最後にとどめを刺したのも3人です。礼なら3人へ言ってください」

と、俺たち新人3人へ花を持たせてくれた。

すると、アンベール村長と助役さんは、
俺たちへもお礼を言ってくれる。

「皆さま! 新人とは思えぬ戦いぶり。本当にありがとうございました」

「さすがローラン様が見込まれた逸材ぞろい、村長と同じく、私も深く深く感謝致します」

うんうん、お礼を言われ気分は良いけど、
亡くなった方々の事を考えると気分はひどく重い。

しかし、ゴブリンが全滅した今、更なる被害は起こらなくなった。

これ以上悲しむ人は増えなくなる。

そう思うしかない。

つらつらと、そんな事を考えていたら、村民たちがどっと押し寄せ、
手を伸ばし、感謝の握手を求めて来た。

「村へ平和が戻って来た!」「家族の仇が討てた!」
「すっとした!」「これでぐっすりと眠れる!」

誰もが感謝の言葉を発し、凄い勢いで身を乗り出す。

手を目いっぱい伸ばし、
俺の手をつかんだら「ぎゅ!」と力を入れられる。

ありがとう! ありがとう! と俺の勘働きスキルには、
心の波動もしっかりと聞こえた。

これで結構重かった気持ちもだいぶ軽くなった。

見やれば、シャルロットもフェルナンさんも握手を求められてる。

美少女のシャルロットへ、人気が偏っているのはご愛敬だ。

握手会は1時間以上続き……それから村をあげての祝勝会となった。

解放感に満ちあふれた村民たちは、飲めや、歌えや、踊れやの大騒ぎ。

バスチアンさんが珍しく飲みすぎたり、酔っぱらったセレスさんが歌を歌ったり……

楽しかったが、酒の勢いで、麗しいセレスさんと、
可憐なシャルロットへは村の青年軍団がナンパの嵐。

「ねえねえ、お姉様、お美しいですねえ、今夜、僕とデートしませんかあ」

「うふふ、大人になってからまた来てね~」

百戦錬磨?のセレスさんはナンパ男子を上手くあしらう。

「ねえねえ、君、可愛いねえ! 俺と付き合わない~?」

だが、生真面目なシャルロットはいちいち、
「私、彼氏が居ます」と断り、最初は笑顔であったのだが、
あまりのしつこさに音をあげた。

しまいには、「この人が大好きな彼氏です!」と叫び、
手を広げて守る俺の後ろへ隠れてしまったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ゴブリン討伐が無事に済み、
またセレスさん、シャルロットのナンパ事件など、いろいろあったが……
翌朝、俺たちはシュエット村を出発した。

乗り込んだ馬車から手を振る俺たちを、村民たちは総出で、
見送ってくれたのである。

馬車は、石ころだらけの道をガトゴトいいながら、走って行く。
けん引する馬も、ゆっくり休んで、バリバリ飼い葉を食べ、たっぷり水を飲み、
元気いっぱいである。

さてさて!
王都まで3日間。
来た時と同じ道を戻る旅だ。

俺は志願して、バスチアンさんが手綱を操る御者台に乗せて貰う。

勘働きスキル――索敵の練習と役立たせたいのは勿論、
御者のスキルも習得したいから。

隣からバスチアンさんが、話しかけて来る。

「おう! 新人1号!」

相変わらず俺を名前で呼ばないバスチアンさん。

でも、俺は気にしない。

「はい、何でしょう? バスチアンさん」

「単刀直入に言うぞ」

「ええ、お願いします」

「ローラン様はな、お前を次のグランシャリオのクランリーダーへ育てたいと思ってる。当然分かっているだろうな?」

「はい、そう感じます」

「おし! 自覚はあるようだな」

「ええ、どこまでローラン様のご期待に応えられるか、分かりませんが、精一杯頑張りますよ」

「よし! 良い覚悟だ。はっきり言って、ゴブリンが相手のこの依頼は、俺たちグランシャリオにとって、半分遊びみたいなものだ。さすがに村民の前では言えないがな」

「まあ、研修で戦い慣れていたから、楽な相手ではありましたね」

「王都へ戻ったら、依頼のレベルは格段にアップする。覚悟しておくんだな」

「了解です」

「そして、一番大事な事を言っておくぞ」

「はい」

「仲間の安全を第一に考えるんだ。それがリーダーたる者の責務だ」

「当然です」

仲間の安全を第一に考える、それがリーダーたる者の責務

バスチアンさんの言葉を聞き、即座に同意した俺。

「ははははははは、頼むぜ」

そんな俺を見て、バスチアンさんは豪快に笑い、鞭をぴしっ!と鳴らしたのである。
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