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第148話「でもやっぱり! 俺がこの子を守って行きたい!」

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食事が終わり、飲み物を飲んでいたら、ランチタイムピークとなり、
人が著しく増えて来た。

このまま長居をしては、後から来た人の迷惑になる。

俺とシャルロットは、場を替えようという話になり、
片付けをし、フードコートを後にした。

ふたりで再び、王都の街中をぶらぶらする。

先ほど新居探しで冒険者ギルド不動産部へ行ったから、
ついその気になり、『住みたい家』をチェックしてしまう。

中央広場周辺に大きな邸宅は少なく、住居はアパートがほとんどである。

「住んでみたいなあ」と思えるようなお洒落なアパートも多く、
冒険者ギルド不動産部から、俺たちの希望にぴったり合うジャストな物件を、
しっかり提案して欲しいと切に願う。

街中を歩きながら、あれがいい、これがいい、楽しくわいわい盛り上がっていると、
シャルロットが言う。

「エル君」

「ん?」

「いきなり話は変わるんだけど、賃貸用住居の経営委託とかってどうかな? なかなか良い話だと私は思うんだけどね」

「ああ、ブルレック部長がそういう話もしていたな」

……そう言われて思い出した。

シャルロットが言ったのは、冒険者ギルド不動産部で聞いた投資話。

ブルレック部長がカタログを見せながら……
自宅探し以外にも、アパート、一軒家等々、賃貸用住居の購入も勧めて来たのだ。

希望があれば、購入した賃貸用住居の入居者探し、審査、契約、
入居者からの家賃回収、こちらへの支払い、普段の管理、運営などなど、
不動産部が代行料ありきで、実施してくれるという。

「エル君、冒険者って、一生出来る仕事じゃないし、引退した後の事も考えておいた方が良いよ」

「まあ、それは大いに同意だな」

「でしょ? これは私の個人的な意見だけど……全然関係ない業者ならいざ知らず、冒険者ギルドの不動産部なら、結構な信用があるから、リスクも少ない。グランシャリオを率いるローラン様とギルドの兼ね合いもあるし、クランメンバーの私たちへ詐欺みたいな酷い事は出来ないと思うよ」

「ああ、そうだな」

「私たちの将来の為には、いろいろ考え、準備しておいた方が絶対に良いもの」

「ああ、その通りだ」

「ブルレック部長が説明してくれた賃貸用住居の経営委託は、将来の為の、ひとつの選択肢として、考えてもいい話だと思うよ。エル君はどう思うの?」

むむむ。
シャルロットは、俺との将来をしっかりと考えている。

俺に対して、だいしゅき、ベタぼれの相手ってだけじゃなく、
真剣に人生設計をシミュレーションしているのだ。

まじめで前向き、冷静沈着で頭もいい。
超絶可愛いくて、すこぶる健康だし、
俺にはもったいないくらい、最高のパートナーだ。

「ああ、俺も悪くない話だと思う」

「うふふ、じゃあさ、今回の提案の際に、そっちも相談してみようよ!」

「OK! そうしよう!」

そんなこんなで、更に王都の街中をぶらぶらした後、
俺とシャルロットは、ホテルへ戻ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ホテルに近づくと……
な~んか、知った気配がひとつある。
勘働きスキル――索敵が教えてくれた。

案の定、ホテルへ入り、キーを受け取る際、フロントから告げられる。

「お帰りなさいませ、エルヴェ・アルノー様。シャルロット・ブランシュ様、さきほどからロビーで、エルヴェ様のお身内の方がお待ちになっておりますよ」

「俺の身内が、ロビーで待っているのですか?」

「はい、エルヴェ様は外出中ですと申しあげましたら、帰って来るまで、ロビーでお待ちになるとおっしゃっておりまして、その方は、エルヴェ様のお兄様、アルノー騎士爵様と名乗られていらっしゃいますが」

「そうですか……ご対応、ありがとうございます」

と俺は言い、シャルロットを顔を見合わせた。

先ほど、シャルロットが言った、

「それと私、エル君の実家も気になる」

「うん! エル君のお兄様たちが、絶縁を撤回して、アルノー家の郎党にするとか、どこかの貴族家の婿養子に、エル君を押し込もうとかね」

という言葉が、現実味をましていたのだ。

まあ、シャルロットに言われずとも、俺はその可能性を予想はしていた。

地位と名誉、金を得た俺へ接触して来るのではと。

あの打算ビーム出しまくりだった、ミランダのように。

まあ、仕方がない。
くそ兄貴がロビーにまだ居るのなら、会って話し、
真意を確かめなければならないだろう。

ただ、シャルロットが同席しなければならないという事はない。

ややこしい話になるかもしれないし、
紹介するのなら、またの機会にした方が賢明だ。

「シャルロット、先に部屋へ戻っているかい」

俺がそう言うと、シャルロットは首を横へ振る。

「いいえ! 私もエル君のお兄さまと会うわ。あまりにも無茶な事を言うようなら、一緒に抗議してあげる」

「そうか」

「うん! これからもこういう事ってあると思うし、お互いに助け合っていきたいから!」

お互いに助け合っていきたいから!

おお!
嬉しい事を言ってくれる!

シャルロット、凄く健気じゃないか!

でもやっぱり!
俺がこの子を守って行きたい!

「分かった! とんでもない無茶を言われるかもしれないが、一緒に兄貴に会おう」

俺とシャルロットは、手をしっかりと握り合い、ロビーへ向かったのである。
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