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《第2章》 西新宿のエウリュディケ
彼女の過去
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生まれてから一七年間、桐島瞳子はバレエと生きてきた。
母親がダンサーだったから、物心つくころには当たり前のように教室で踊っていた。
母はバレリーナとしては上を望めない人だったが、教える才能はあったようだ。大手スクールの常勤講師として生計をたてていて、同僚とワークショップを開催しては生徒を集めたりもしていた。
ただ、瞳子にはとても厳しい母親だった。
正しく踊れるまでレッスンが終わらないのは日常だったし、振りつけを間違えて踊ると容赦ない叱責がとんできた。他に生徒がいるときでも、母は娘をとりわけ熱心に――時には過剰に――指導した。それが目に余るほどだったので、最終的に母親のクラスを外され、一般レッスン後に個人指導タイムをとられるようになった。
それは、特別な才能があったからだと人は言う。自分でも、そう思う。
永遠に失われてしまった才能なので過去の栄光でしかない。
今は苗字もかえて、バレリーナだった「桐島瞳子」とは別人として生きている。ただ、自分には紛れもなく踊る才能があったことは自覚し、自負していた。
小学生のころから、コンクールで優勝してきた。週七日、毎日休みなく稽古場でレッスンする日々だったが、美しく正確に踊れるようになるためなら構わなかった。踊りたくない日は一日だってなかった。
母はいわゆるステージママだった。中学校に上がってからは、明確に国際コンクールで勝つ、スカラシップをとる、という共通の目標ができた。
スカラシップで海外の有名バレエ団に留学し、認められて入団する。最後は、主役を踊るプリンシパルになる。引退するまで、踊って、踊って、踊りつづけて生きていく。
道は開けているはずだった。
一七歳の二月、ローザンヌの国際コンクールで入賞して、その年の夏からスイスのバレエ団に留学することが決まっていた。通信で高校の授業をうけながら、毎日レッスンに行って調整をつづける半年間のはずだった。
しかし、渡航を目前にした七月、急遽舞台に立つことになった。
前年に、ある国内有名企業のテレビCMに出演していた。ローザンヌで入賞して箔がついて、度々その企業がスポンサーをしている公演に主演として出るよう依頼をされていたが、瞳子は渋っていた。
演目はジゼル。
好きな演目だったし、前の公演ではアンダースタディとして全幕の練習はしていたが、緊張感も練習時間もたりない。何よりも、しばらく日本に帰ってこられないのだから、静かに過ごしたかった。
母親や、教室の先生から「あなたのような若さで大手企業がプッシュしてくれるのは珍しいし、優遇されているんだからチャンスは物にしなさい」と言われ、結果的に引き受けていた。
人前で踊るからには、圧倒的なものを見せたかった。
海外コンクールで入賞した実力を、観客すべてに全力で見せつけて、記憶に残したかった。今にしてみると幼い意地だ。もう少し大人だったら、「調整」や「流す」という言葉を知っていただろう。
その末、無理な練習がたたって、直前のリハーサルで取り返しのつかないケガをおった。ジゼルの公演も、スイス留学も、一夜にして消滅した。
リハビリも数か月は受けたのだ。しかし、左脚の負傷は深刻な後遺症をのこした。
今だって走ることは難しい。調子が悪いときは、足を引きずるときもある。そんな状況で、トッププロのバレリーナとして返り咲くなんて無理だ。
端的に言うと、母はそんな瞳子に見切りをつけた。
部屋に引きこもって、何をするわけでもなく、ひたすら眠りつづけている娘を何度となく叱り、怒鳴った。たまにパジャマから着替えて外出したかと思えば、近所のファストフード店で尋常ではない量をオーダーして食べつづけた。
ここまで来るのに、常に厳格な生活管理と食事制限があった。家にはバレエ関係のものしかなくて、バレエから目を塞ごうと思うと、ベッドに立てこもるか外に出るしかなかった。
母親は半年間、そんな彼女に泣きつき、叱責し、叩き、説得を試みた。
ただ、バレエの世界の象徴である母親は、瞳子がつくった殻を壊すことはできなかったし、むしろ余計に背を向けさせてしまった。事故の翌年、母は命を絶った。
少し前ぐらいから、借金の取りたてらしきものは来ていた。瞳子もまた、自分のバレエと怪我の治療、そしてリハビリのため、途方もない金額を母親が借りていたことには気づいていた。
母は正社員として働いていたが、講師一人の給与でまかなえるはずではないとも、薄々知っていた。母子家庭の経済状況の厳しさがあったからこそ、タイミング良く話がきたCMに出て顔をうり、留学直前の主演も無理して出ることにしたのだ。
世界の一線に立つまでは、借金をかかえつづけるのは母も瞳子も承知の上ですすんでいた。
返済するメドのたたない莫大な借金、かさみつづける医療費、バレエの道がとざされて引きこもった娘。そういったすべてに、母は絶望したのだと思う。
その夜、瞳子の部屋の扉を母親はノックした。扉をあけると、母が漠とした無表情で立っていた。
「あのね、もう私、生きていても辛いだけだから、死のうと思うの。瞳子も一緒に死なない? 踊れないなら、あなたも意味ないじゃない」
平板な口調でなにげなく言われて、瞳子はぞっとした。
どこまで本気か、どこから病んでいるのか、咄嗟に判断できなかった。ただ、本能的に嫌なものを感じて、彼女は首を振った。
「ちょっと駅前の本屋さん行ってくる」
こじつけのような口実を言って、財布だけを掴んで家を出た。2Kの古い公団アパートの割れたコンクリートの階段を駆けおりたとき、涙があふれた。
廊下の電灯はところどころ切れて暗くなっていて、階段にはクモの巣やカメムシの死体が転がっているボロアパート。
本当はここからスイスに行って、永遠に美しい世界で踊りつづけるつもりだった。なのにスイスへの切符は失われた。もう自分で自分を救い出すことは、できない。瞳子もまた、どこでもない場所に行ってしまいたかった。
行き場所がなく、一晩をファミレスで過ごした。
翌朝、母親が仕事に出かけるだろう時間を見計らって帰宅すると、カーテンレールで首を吊って死んでいる母親と目があった。
母親がダンサーだったから、物心つくころには当たり前のように教室で踊っていた。
母はバレリーナとしては上を望めない人だったが、教える才能はあったようだ。大手スクールの常勤講師として生計をたてていて、同僚とワークショップを開催しては生徒を集めたりもしていた。
ただ、瞳子にはとても厳しい母親だった。
正しく踊れるまでレッスンが終わらないのは日常だったし、振りつけを間違えて踊ると容赦ない叱責がとんできた。他に生徒がいるときでも、母は娘をとりわけ熱心に――時には過剰に――指導した。それが目に余るほどだったので、最終的に母親のクラスを外され、一般レッスン後に個人指導タイムをとられるようになった。
それは、特別な才能があったからだと人は言う。自分でも、そう思う。
永遠に失われてしまった才能なので過去の栄光でしかない。
今は苗字もかえて、バレリーナだった「桐島瞳子」とは別人として生きている。ただ、自分には紛れもなく踊る才能があったことは自覚し、自負していた。
小学生のころから、コンクールで優勝してきた。週七日、毎日休みなく稽古場でレッスンする日々だったが、美しく正確に踊れるようになるためなら構わなかった。踊りたくない日は一日だってなかった。
母はいわゆるステージママだった。中学校に上がってからは、明確に国際コンクールで勝つ、スカラシップをとる、という共通の目標ができた。
スカラシップで海外の有名バレエ団に留学し、認められて入団する。最後は、主役を踊るプリンシパルになる。引退するまで、踊って、踊って、踊りつづけて生きていく。
道は開けているはずだった。
一七歳の二月、ローザンヌの国際コンクールで入賞して、その年の夏からスイスのバレエ団に留学することが決まっていた。通信で高校の授業をうけながら、毎日レッスンに行って調整をつづける半年間のはずだった。
しかし、渡航を目前にした七月、急遽舞台に立つことになった。
前年に、ある国内有名企業のテレビCMに出演していた。ローザンヌで入賞して箔がついて、度々その企業がスポンサーをしている公演に主演として出るよう依頼をされていたが、瞳子は渋っていた。
演目はジゼル。
好きな演目だったし、前の公演ではアンダースタディとして全幕の練習はしていたが、緊張感も練習時間もたりない。何よりも、しばらく日本に帰ってこられないのだから、静かに過ごしたかった。
母親や、教室の先生から「あなたのような若さで大手企業がプッシュしてくれるのは珍しいし、優遇されているんだからチャンスは物にしなさい」と言われ、結果的に引き受けていた。
人前で踊るからには、圧倒的なものを見せたかった。
海外コンクールで入賞した実力を、観客すべてに全力で見せつけて、記憶に残したかった。今にしてみると幼い意地だ。もう少し大人だったら、「調整」や「流す」という言葉を知っていただろう。
その末、無理な練習がたたって、直前のリハーサルで取り返しのつかないケガをおった。ジゼルの公演も、スイス留学も、一夜にして消滅した。
リハビリも数か月は受けたのだ。しかし、左脚の負傷は深刻な後遺症をのこした。
今だって走ることは難しい。調子が悪いときは、足を引きずるときもある。そんな状況で、トッププロのバレリーナとして返り咲くなんて無理だ。
端的に言うと、母はそんな瞳子に見切りをつけた。
部屋に引きこもって、何をするわけでもなく、ひたすら眠りつづけている娘を何度となく叱り、怒鳴った。たまにパジャマから着替えて外出したかと思えば、近所のファストフード店で尋常ではない量をオーダーして食べつづけた。
ここまで来るのに、常に厳格な生活管理と食事制限があった。家にはバレエ関係のものしかなくて、バレエから目を塞ごうと思うと、ベッドに立てこもるか外に出るしかなかった。
母親は半年間、そんな彼女に泣きつき、叱責し、叩き、説得を試みた。
ただ、バレエの世界の象徴である母親は、瞳子がつくった殻を壊すことはできなかったし、むしろ余計に背を向けさせてしまった。事故の翌年、母は命を絶った。
少し前ぐらいから、借金の取りたてらしきものは来ていた。瞳子もまた、自分のバレエと怪我の治療、そしてリハビリのため、途方もない金額を母親が借りていたことには気づいていた。
母は正社員として働いていたが、講師一人の給与でまかなえるはずではないとも、薄々知っていた。母子家庭の経済状況の厳しさがあったからこそ、タイミング良く話がきたCMに出て顔をうり、留学直前の主演も無理して出ることにしたのだ。
世界の一線に立つまでは、借金をかかえつづけるのは母も瞳子も承知の上ですすんでいた。
返済するメドのたたない莫大な借金、かさみつづける医療費、バレエの道がとざされて引きこもった娘。そういったすべてに、母は絶望したのだと思う。
その夜、瞳子の部屋の扉を母親はノックした。扉をあけると、母が漠とした無表情で立っていた。
「あのね、もう私、生きていても辛いだけだから、死のうと思うの。瞳子も一緒に死なない? 踊れないなら、あなたも意味ないじゃない」
平板な口調でなにげなく言われて、瞳子はぞっとした。
どこまで本気か、どこから病んでいるのか、咄嗟に判断できなかった。ただ、本能的に嫌なものを感じて、彼女は首を振った。
「ちょっと駅前の本屋さん行ってくる」
こじつけのような口実を言って、財布だけを掴んで家を出た。2Kの古い公団アパートの割れたコンクリートの階段を駆けおりたとき、涙があふれた。
廊下の電灯はところどころ切れて暗くなっていて、階段にはクモの巣やカメムシの死体が転がっているボロアパート。
本当はここからスイスに行って、永遠に美しい世界で踊りつづけるつもりだった。なのにスイスへの切符は失われた。もう自分で自分を救い出すことは、できない。瞳子もまた、どこでもない場所に行ってしまいたかった。
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