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星降る収穫祭編
セリナの告白
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セリナが眠るベッドの傍らで、バニッシュは椅子に腰を下ろしていた。
肘を膝に置き、組んだ手の上に額を落とす。俯いたまま、頭の中をぐるぐると巡る思考から逃れられない。
(リュシアの言う通りだ……もしセリナが黒の勇者の刺客だったら……ここは一瞬で危険に晒される。俺の判断一つで、皆の命が奪われるかもしれない……)
唇を噛み、苦い息を吐く。
それでも――胸の奥には、別の思いが渦巻いていた。
(だが……出来ることなら、黒の勇者たちでさえ……救ってやりたい。人の道を踏み外したのなら、裁きを受け、もう一度光の道を歩めばいい……そうでなければ、あまりに虚しい……)
脳裏をよぎるのは、ルガンディアでのミレイユとの戦い。
結局、彼女とは分かり合うことは出来なかった。
ならば、カイルも……。いや、それでも。たとえ不可能に近くても、一度は話し合いたい。胸の内をぶつけて、互いに見極めたい。
混乱した思考の中、バニッシュは深く重いため息を吐き、額を押さえる。
その時――。
「……ん……」
かすかな声が部屋に響いた。
バニッシュの背筋が跳ねる。
バッと顔を上げ、ベッドに目を向ける。
薄っすらと瞼が震え、セリナがゆっくりと目を開けていた。
乾いた唇がわずかに動き、掠れた声が零れる。
「……バニッシュ……」
その名を呼ぶ声は、弱々しくも確かに届いた。
バニッシュの心臓が激しく脈打つ。
その声は敵意か、救いを求めるものか――判別もつかぬまま、彼は息を呑んでセリナの顔を覗き込んだ。
「セリナ!」
思わず大きな声が口をついて出た。
バニッシュの声に、ベッドの上で横たわっていたセリナが微かに反応する。
まだ完全には開かぬ瞼の奥から、霞がかったような視線が彼に向けられた。
「……ほんとうに……バニッシュ、なのね……」
か細く掠れた声。
その一言に、バニッシュの胸が熱くなる。
「ああ、そうだ! 俺だ!」
力強く応える声に、自分でも驚くほどの熱がこもっていた。
セリナの意識が戻ったことに安堵しながらも、彼女の痩せ細った顔と、冷え切った体の軽さが胸に突き刺さる。
「ちょっと待ってろ」
バニッシュは立ち上がり、慌ただしく薬草を煎じた温かなスープを用意して戻ってきた。
椅子に腰を下ろすと、そっとセリナの体を抱き起こし、背に腕を添えて支える。
まるで折れてしまいそうなほど弱々しい体だ。
「……口を開けろ、少しずつだ」
匙を口元へと運ぶと、セリナはゆっくりと口を開き、一口、二口……小鳥のように少しずつ、スープを飲み込んでいく。
温もりが喉を通り、かすかに赤みが頬へ戻るのを見て、バニッシュはようやく胸を撫で下ろした。
「……よかった」
安堵の息をつくと同時に、しかしどうして彼女がこんな姿でここにいるのかという疑問が押し寄せる。
バニッシュは静かに問いかけた。
「……セリナ。何があったんだ?」
その声は強くも厳しくもなく、ただ真実を知りたいと願う者の声だった。
セリナは視線を落とし、長い沈黙を挟む。やがて、震える唇がようやく言葉を紡いだ。
「……逃げてきたの……」
掠れるような呟き。
その一言には、深い影と絶望の重さが滲んでいた。
「逃げて来たって……一体――」
思わず問い返しかけて、バニッシュは言葉を飲み込んだ。
今しがた目を覚ましたばかりのセリナに、あれこれ詰め寄るのは酷だ。
混乱と疲労の色を帯びた瞳を見れば、それは火を見るより明らかだった。
ふー……と深く息を吐き、バニッシュは自分を落ち着かせる。
「……いや、今はいい。とにかく休め。話は……また後で聞かせてくれ」
声は静かで柔らかく、相手を包み込むような響きを持っていた。
セリナは一瞬戸惑うようにバニッシュを見つめ――やがて小さく、こくりと頷いた。
バニッシュは彼女をそっと支え、再び枕に頭を戻す。
毛布を掛け直し、その呼吸が落ち着いたのを確かめると、立ち上がった。
扉に手をかけたところで――
「……ありがとう……」
か細く、それでも確かに届いた声。
その言葉は敵か味方か、まだ何も分からない彼女の立場を超えて、ただ真心から零れたもののように響いた。
バニッシュは一瞬立ち止まり、振り返りはしなかった。
ただ、口元に苦笑とも微笑ともつかぬ表情を浮かべ――静かに扉を閉めた。
バニッシュは仲間たちの前に立ち、真剣な面持ちで口を開いた。
「……セリナが目を覚ました。まだ話せるほどの力は残っていないが、回復したら詳しい事情を聞こうと思う。その時は……一緒に聞いてくれ」
静かに、だが力強く告げるバニッシュの言葉に、グラドは腕を組んだまま「わかった」と低く返し、ザイロも無言で頷いた。
その時――背後から澄んだ声が響いた。
「私たちも一緒に聞くわ」
驚いて振り返ると、そこには戻ってきたリュシアとセレスティナの姿があった。
リュシアの瞳は、先ほどの怒りに燃えたそれとは違う。
今はただ、真実を知ろうとする鋭い光を宿していた。
「お前たち……」
思わず言葉を漏らすバニッシュ。
「文句は言わせないんだからね!」
リュシアは勢いよくバニッシュの胸に指を突き立てる。
その強気な態度に、バニッシュはふっと息を漏らし――
「ああ、もちろんだ」
短く答え、柔らかな笑みを見せた。
「ふんっ」
リュシアはそっぽを向いて強がるが、その耳がわずかに赤くなっているのを誰もが気づいていた。
その姿に、後ろでセレスティナがやさしく微笑み、グラドはにやりと口角を上げる。
ザイロも静かに頷き、場に流れる空気はわずかに和らいだ。
それはまるで、拠点を守る絆が再び強く結ばれた瞬間だった。
数日が経ち、セリナの顔色は幾分か良くなっていた。
青白かった頬にはわずかに赤みが差し、痩せこけていた体も少しずつ肉が戻りつつある。
食事も自分の手で取れるようになり、弱々しいながらも生気を取り戻し始めていた。
「ずいぶん回復したみたいだな」
ベッドでスープを口にするセリナに、バニッシュはやさしく声をかけた。
「……バニッシュのおかげだよ」
セリナは申し訳なさそうに笑みを浮かべ、ぽつりと呟く。
「そろそろ事情を話せるか?」
バニッシュの問いかけに、セリナは一瞬ためらったが――やがて小さく、だが確かな頷きを返した。
その返事を受け、バニッシュはグラド、ザイロ、リュシア、そしてセレスティナを広間に呼び集めた。
静まり返った空気の中、皆の視線が一点に集まる。
ベッドから下りて椅子に腰掛けたセリナは、両手を膝の上で固く握りしめ、小さく呼吸を整えていた。
「……何があったのか、話してくれるか?」
バニッシュのゆっくりとした問いに、セリナはうつむき、震える唇を開いた。
「……バニッシュを追放した後……私たちは……ギルドの依頼を失敗するようになっていったの」
ぽつり、ぽつりと、重い言葉が零れる。
「何をやっても上手くいかなくて……カイルは焦っていた……。ある時、魔王の軍勢と戦ったの……でも、私たちは……重傷を負ったわ」
セリナの声は弱く震え、広間に響くその内容に皆が黙り込む。
「そのせいで……国からの信頼も、名声も……すべて地に落ちた……。そんな時――」
セリナの顔がみるみるうちに恐怖に支配され、全身が震え始めた。
彼女の視線は虚空を彷徨い、まるでその瞬間を今も見ているかのようだった。
「……あいつが……現れたの……」
その一言に、場の空気がさらに凍りついた。
「……あいつ、ていうのは?」
バニッシュが静かに問いかける。
セリナは肩を震わせながら、か細い声で答えた。
「名前は……わからない……。フードを目深に被っていて、顔も見えなかった……。ただ……とても、不気味な……気配を漂わせていたの……」
その不安げな声に、リュシアの鋭い声が響いた。
「そんな名前も分からないヤツに、アンタたちはついていったっていうの!?」
強い非難の言葉に、セリナは俯き、唇を震わせながらも答えることができない。
拳を握り、震える声を絞り出すようにして続けた。
「……アイツは言ったわ……“失った栄光を取り戻す”って……そのための力を与えるって……」
そこで言葉を切り、苦しげに喉を鳴らす。
「……そして、カイルが……それに乗ったの……」
バニッシュの脳裏に、あのミレイユが放った異常なまでに凶悪な魔法が蘇る。
そして、手にしていたあの黒いオーブ。あの禍々しい力。
「だからって……そんな……」
セレスティナの声は震え、広間には重苦しい沈黙が落ちた。
しかし、その次にセリナの口から紡がれた言葉が――皆の心を打ち砕いた。
「……アイツは……そのためには“決断”が必要だって……」
「決断……?」
リュシアが眉をひそめ、疑念を込めて問い返す。
セリナは震える手を膝の上でぎゅっと握りしめ、かすれた声を絞り出す。
「……“使えなくなった道具を切り捨てろ”って……だから……カイルは……ガルドを……」
言葉が詰まり、セリナは唇を噛みしめて涙をこぼした。
その瞳には、あの瞬間の情景が蘇っているのだろう。
「……ま、まさか……」
バニッシュが最悪の想像を抱きながら声を震わせる。
セリナは顔を覆い、こらえきれない嗚咽と共に――
「……殺したわ……」
その言葉は広間を凍りつかせた。
仲間だったはずのガルドを、自らの手で切り捨てた勇者の姿に。
肘を膝に置き、組んだ手の上に額を落とす。俯いたまま、頭の中をぐるぐると巡る思考から逃れられない。
(リュシアの言う通りだ……もしセリナが黒の勇者の刺客だったら……ここは一瞬で危険に晒される。俺の判断一つで、皆の命が奪われるかもしれない……)
唇を噛み、苦い息を吐く。
それでも――胸の奥には、別の思いが渦巻いていた。
(だが……出来ることなら、黒の勇者たちでさえ……救ってやりたい。人の道を踏み外したのなら、裁きを受け、もう一度光の道を歩めばいい……そうでなければ、あまりに虚しい……)
脳裏をよぎるのは、ルガンディアでのミレイユとの戦い。
結局、彼女とは分かり合うことは出来なかった。
ならば、カイルも……。いや、それでも。たとえ不可能に近くても、一度は話し合いたい。胸の内をぶつけて、互いに見極めたい。
混乱した思考の中、バニッシュは深く重いため息を吐き、額を押さえる。
その時――。
「……ん……」
かすかな声が部屋に響いた。
バニッシュの背筋が跳ねる。
バッと顔を上げ、ベッドに目を向ける。
薄っすらと瞼が震え、セリナがゆっくりと目を開けていた。
乾いた唇がわずかに動き、掠れた声が零れる。
「……バニッシュ……」
その名を呼ぶ声は、弱々しくも確かに届いた。
バニッシュの心臓が激しく脈打つ。
その声は敵意か、救いを求めるものか――判別もつかぬまま、彼は息を呑んでセリナの顔を覗き込んだ。
「セリナ!」
思わず大きな声が口をついて出た。
バニッシュの声に、ベッドの上で横たわっていたセリナが微かに反応する。
まだ完全には開かぬ瞼の奥から、霞がかったような視線が彼に向けられた。
「……ほんとうに……バニッシュ、なのね……」
か細く掠れた声。
その一言に、バニッシュの胸が熱くなる。
「ああ、そうだ! 俺だ!」
力強く応える声に、自分でも驚くほどの熱がこもっていた。
セリナの意識が戻ったことに安堵しながらも、彼女の痩せ細った顔と、冷え切った体の軽さが胸に突き刺さる。
「ちょっと待ってろ」
バニッシュは立ち上がり、慌ただしく薬草を煎じた温かなスープを用意して戻ってきた。
椅子に腰を下ろすと、そっとセリナの体を抱き起こし、背に腕を添えて支える。
まるで折れてしまいそうなほど弱々しい体だ。
「……口を開けろ、少しずつだ」
匙を口元へと運ぶと、セリナはゆっくりと口を開き、一口、二口……小鳥のように少しずつ、スープを飲み込んでいく。
温もりが喉を通り、かすかに赤みが頬へ戻るのを見て、バニッシュはようやく胸を撫で下ろした。
「……よかった」
安堵の息をつくと同時に、しかしどうして彼女がこんな姿でここにいるのかという疑問が押し寄せる。
バニッシュは静かに問いかけた。
「……セリナ。何があったんだ?」
その声は強くも厳しくもなく、ただ真実を知りたいと願う者の声だった。
セリナは視線を落とし、長い沈黙を挟む。やがて、震える唇がようやく言葉を紡いだ。
「……逃げてきたの……」
掠れるような呟き。
その一言には、深い影と絶望の重さが滲んでいた。
「逃げて来たって……一体――」
思わず問い返しかけて、バニッシュは言葉を飲み込んだ。
今しがた目を覚ましたばかりのセリナに、あれこれ詰め寄るのは酷だ。
混乱と疲労の色を帯びた瞳を見れば、それは火を見るより明らかだった。
ふー……と深く息を吐き、バニッシュは自分を落ち着かせる。
「……いや、今はいい。とにかく休め。話は……また後で聞かせてくれ」
声は静かで柔らかく、相手を包み込むような響きを持っていた。
セリナは一瞬戸惑うようにバニッシュを見つめ――やがて小さく、こくりと頷いた。
バニッシュは彼女をそっと支え、再び枕に頭を戻す。
毛布を掛け直し、その呼吸が落ち着いたのを確かめると、立ち上がった。
扉に手をかけたところで――
「……ありがとう……」
か細く、それでも確かに届いた声。
その言葉は敵か味方か、まだ何も分からない彼女の立場を超えて、ただ真心から零れたもののように響いた。
バニッシュは一瞬立ち止まり、振り返りはしなかった。
ただ、口元に苦笑とも微笑ともつかぬ表情を浮かべ――静かに扉を閉めた。
バニッシュは仲間たちの前に立ち、真剣な面持ちで口を開いた。
「……セリナが目を覚ました。まだ話せるほどの力は残っていないが、回復したら詳しい事情を聞こうと思う。その時は……一緒に聞いてくれ」
静かに、だが力強く告げるバニッシュの言葉に、グラドは腕を組んだまま「わかった」と低く返し、ザイロも無言で頷いた。
その時――背後から澄んだ声が響いた。
「私たちも一緒に聞くわ」
驚いて振り返ると、そこには戻ってきたリュシアとセレスティナの姿があった。
リュシアの瞳は、先ほどの怒りに燃えたそれとは違う。
今はただ、真実を知ろうとする鋭い光を宿していた。
「お前たち……」
思わず言葉を漏らすバニッシュ。
「文句は言わせないんだからね!」
リュシアは勢いよくバニッシュの胸に指を突き立てる。
その強気な態度に、バニッシュはふっと息を漏らし――
「ああ、もちろんだ」
短く答え、柔らかな笑みを見せた。
「ふんっ」
リュシアはそっぽを向いて強がるが、その耳がわずかに赤くなっているのを誰もが気づいていた。
その姿に、後ろでセレスティナがやさしく微笑み、グラドはにやりと口角を上げる。
ザイロも静かに頷き、場に流れる空気はわずかに和らいだ。
それはまるで、拠点を守る絆が再び強く結ばれた瞬間だった。
数日が経ち、セリナの顔色は幾分か良くなっていた。
青白かった頬にはわずかに赤みが差し、痩せこけていた体も少しずつ肉が戻りつつある。
食事も自分の手で取れるようになり、弱々しいながらも生気を取り戻し始めていた。
「ずいぶん回復したみたいだな」
ベッドでスープを口にするセリナに、バニッシュはやさしく声をかけた。
「……バニッシュのおかげだよ」
セリナは申し訳なさそうに笑みを浮かべ、ぽつりと呟く。
「そろそろ事情を話せるか?」
バニッシュの問いかけに、セリナは一瞬ためらったが――やがて小さく、だが確かな頷きを返した。
その返事を受け、バニッシュはグラド、ザイロ、リュシア、そしてセレスティナを広間に呼び集めた。
静まり返った空気の中、皆の視線が一点に集まる。
ベッドから下りて椅子に腰掛けたセリナは、両手を膝の上で固く握りしめ、小さく呼吸を整えていた。
「……何があったのか、話してくれるか?」
バニッシュのゆっくりとした問いに、セリナはうつむき、震える唇を開いた。
「……バニッシュを追放した後……私たちは……ギルドの依頼を失敗するようになっていったの」
ぽつり、ぽつりと、重い言葉が零れる。
「何をやっても上手くいかなくて……カイルは焦っていた……。ある時、魔王の軍勢と戦ったの……でも、私たちは……重傷を負ったわ」
セリナの声は弱く震え、広間に響くその内容に皆が黙り込む。
「そのせいで……国からの信頼も、名声も……すべて地に落ちた……。そんな時――」
セリナの顔がみるみるうちに恐怖に支配され、全身が震え始めた。
彼女の視線は虚空を彷徨い、まるでその瞬間を今も見ているかのようだった。
「……あいつが……現れたの……」
その一言に、場の空気がさらに凍りついた。
「……あいつ、ていうのは?」
バニッシュが静かに問いかける。
セリナは肩を震わせながら、か細い声で答えた。
「名前は……わからない……。フードを目深に被っていて、顔も見えなかった……。ただ……とても、不気味な……気配を漂わせていたの……」
その不安げな声に、リュシアの鋭い声が響いた。
「そんな名前も分からないヤツに、アンタたちはついていったっていうの!?」
強い非難の言葉に、セリナは俯き、唇を震わせながらも答えることができない。
拳を握り、震える声を絞り出すようにして続けた。
「……アイツは言ったわ……“失った栄光を取り戻す”って……そのための力を与えるって……」
そこで言葉を切り、苦しげに喉を鳴らす。
「……そして、カイルが……それに乗ったの……」
バニッシュの脳裏に、あのミレイユが放った異常なまでに凶悪な魔法が蘇る。
そして、手にしていたあの黒いオーブ。あの禍々しい力。
「だからって……そんな……」
セレスティナの声は震え、広間には重苦しい沈黙が落ちた。
しかし、その次にセリナの口から紡がれた言葉が――皆の心を打ち砕いた。
「……アイツは……そのためには“決断”が必要だって……」
「決断……?」
リュシアが眉をひそめ、疑念を込めて問い返す。
セリナは震える手を膝の上でぎゅっと握りしめ、かすれた声を絞り出す。
「……“使えなくなった道具を切り捨てろ”って……だから……カイルは……ガルドを……」
言葉が詰まり、セリナは唇を噛みしめて涙をこぼした。
その瞳には、あの瞬間の情景が蘇っているのだろう。
「……ま、まさか……」
バニッシュが最悪の想像を抱きながら声を震わせる。
セリナは顔を覆い、こらえきれない嗚咽と共に――
「……殺したわ……」
その言葉は広間を凍りつかせた。
仲間だったはずのガルドを、自らの手で切り捨てた勇者の姿に。
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