星の下の太陽

金平糖

文字の大きさ
4 / 6

4

しおりを挟む
「喜一さん。私と一緒に暮らしてください。今よりも充実した生活を約束しましょう。」
これは多分お願いではなく命令だと思った。私に選択権などないとルイスの眼差しが語っている。

「…わかりました。その前に良子さんに叔母さんの状況を伝えても良いですか?きっとずっと心配していると思うので。」
ルイスは分かりましたと快く了承し、ふらふらと歩き出す私に歩幅を合わせながらついてくる。

叔母と良子さんの家はそれ程離れておらず、すぐに着いた。戸を叩くと良子さんが出てきて、第一声は叔母はどうなったのかということだった。
薬を投与して今は安静にしていることを伝えれば、涙を流して喜んだ。

「2週間程前からかな、いきなりこの地域に結核が広がったのさ…。というか、結核患者がたくさん越してきて…。洋子ちゃんに細心の注意を払おうって言ってね。色々気をつけてたんだが…洋子ちゃんは体が弱いだろ?」
2週間前と聞いてドキリとした。ちょうど私が出ていった時ぐらいだったからだ。私がいればもしかしたらかからなかったかもしれないと思ったが、私がいても何もできなかったと思うと、また無力感に苛まれた。

「そうですか…。あの、私はいても何もできないので、良子さんに叔母さんの看病を頼んでもいいですか?たまに様子は見に行きますし、お金も渡します。」
私は頭を深く下げて頼んだ。良子さんは私にとって、第二の叔母のような存在だった。彼女ぐらいしか頼める人がいないのだ。

「いいよいいよ、頭を下げなくても。元々そのつもりだったさ。あと、喜一さんも苦しいんだろう?お金も大丈夫だ。こっちは働き手がいるから全然困ってないしね。」
いくら働き手がいるからといって、生活も苦しいだろうに、良子さんは了承してくれた。温かさに涙を流すと、良子さんに抱きしめられた。

「ありがとうございます。いつか恩は返します。」
良子さんはいいよいいよと言って笑った。ルイスを待たせているので、軽く話してからすぐに良子さんの家を出た。

「じゃ、早速行こうか。」

「は、はい。」
しばらく歩くと、私の住んでいたバラックが立ち並ぶ住宅街と比べられないほど豪華な進駐軍の人々が住む家が立ち並んでいた。進駐軍の人はどれだけ優遇されているのかと思ったが、口にすることはなかった。

「あれ、ルイスー。偉い美形を連れてるじゃねぇか。こいつはもしかしてあの女の…。」

「黙れ。」
にやにやと嫌な笑みを浮かべながら近づいてきたのは、ルイスと同じ進駐軍の者だろう。仲が良くないのか、ルイスは冷たい眼差しを相手に送る。

「あーん?連れねぇな。あの女、気持ちよかったぜー?そこらにいる売春女よりもずっとな。いやしかし、あの女によく似てる。もう掘ったのか?」

「彼は英語が分かるんだ。言葉慎め。」
ルイスがそう言うと、そうなのかと物珍しそうに私の体を舐めるように見る。気持ち悪い。

「ふーん。本命か?はは!おもしれー!まぁ今日はこれくらいにしといてやるよ。じゃーな。」
手をひらひらと振って男は横を通り過ぎていく。

「すまないね。彼は…、育ちが悪いんだ。ここには彼のような人もたくさんいるから、十分気をつけてほしい。」
お前も同じようなこと、いやそれ以上のことをしただろうと思ったが、流すことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

処理中です...