偽りの恋人と学園のトップを目指します!

しきしまそう

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2.昂希との出会い

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その日の放課後、鈴香はどうしようどうしようと誰もいない校舎裏をうろうろしていた。

ソレイユ選の締め切りまであと1週間しかない。それまでにどうやって恋人を作ればいいのかと頭を悩ませていた。

いや、昨年ソレイユ選に出馬することを決めていたので、そもそも猶予は1年あったはず。でも鈴香は恋人を作ること…むしろクラスメイトの男子と挨拶以上会話をしたことがなかった。

何度もチャレンジはしてきてはいるのだが、どうしても【普通の女の子】の対応ができなかった。

加えて、ソレイユに出場できたしても、もう一つ重要なのは「家柄」である。

ソレイユの歴代優勝者は名だたる名家のご子息・淑女ばかり。家柄がよければよいほど、優勝への可能性は高くなる。

なので鈴香がソレイユに出るためには名家の男性がと恋人になる必要がある。しかし、名家の男性ほど、学園に入る前から許嫁がいたりと相手が既に決まっている場合が多い。

選択肢を狭めていることも、鈴香が1年経っても恋人ができなかった要因の一つである。

「ああ…自分が聖良さんみたいな女の子だったらな…」

ぽつりとつぶやくが、つぶやいたところである日突然、友人の聖良のようなお嬢様になれるわけではない。

とぼとぼと校舎裏から裏山へと続く山林の道を歩いていく。鈴香は癒しが欲しい時は必ず自然の中に行くと決めている。木々の木漏れ日や鳥たちの囀りを聞いていると、故郷を思い出すからだ。

自然の中なら何かいいアイデアが浮かぶかもしれない…そう思いながら歩いていると、道の途中の木の根元に人影を見つけた。

このあたりはよく来るが、生徒とすれ違ったことはない。人影は木の根元にあるので、もしや人ではなく子熊なのでは!?と悪い予想が頭をよぎる。ちゃんと確認しなくてはいけない…と、鈴香は恐る恐る近づいてみることにした。

近づいてみると姿形がはっきりとしてくる。それは子熊ではなく、黒い髪の毛の男子が座っている…その男子生徒は今朝見かけた彼のようだった。

「剣城…くん?」

声をかけられ彼はちらりとこちらを見る。よく見ると今朝に比べて顔のケガが増えている。まさかまた喧嘩をして、歩けないほどのケガを負ったのでは?!

鈴香は急いで昂希に駆け寄った。

「大丈夫!?もしかしてケガしてるの!?誰か…先生呼んでこようか?」

「いや…いい、大丈夫だ」

「でも…なんかぐったりしてるように見えるし…」

「大丈夫だって言ってるだろ!」

彼の声が一際大きくなった途端、その声より大きな腹の虫の声が鳴り響いた。

「お腹…空いてるんだね…」

彼は頬を赤くし、腹を抱えて下を向いた。多分今までずっとどこかに行っていて、昼食もままならなかったのかもしれない。鈴香はうーんと考えた。

「ちょっとここで待ってて!」

彼の元を離れて数十分後。鈴香は両手におにぎりを持ち、全速力で彼の元まで走ってきた。

「はいこれ!」

鈴香はおにぎり…ではあるが、いささか大きい…いやかなり大きめな爆弾のようなおにぎりを二つ、昂希の前に差し出した。

「おにぎり…なんで…どこからこれを?」

「女子寮の食堂に行って余ったご飯分けてもらったの!私が握ったものだけど…よかったら食べて!」

「食堂って時間外でも作ってくれるんだな」

あはは…と誤魔化すように鈴香は笑った。なぜなら時間外に何か食事を作ってくれ、なんて言ってくるのは3学年在中する女子寮の中でも鈴香くらいである。

鈴香はお腹を空かせるといつも女子寮の食堂へ行き、食堂長として働く方と顔見知りになり、余ったものを分けてもらっているのである。

『まあ…普通のお嬢様ならしないことなんだろうけど』

「ありがとう」

昂希は頭を下げて鈴香に礼を言うと、正座になり、おにぎりを両手に持ち、すごい勢いで食べ始めた。あまりのスピードに鈴香も口をポカンと開けて眺めてしまう。よほどお腹が空いていたのであろう。おおきなおにぎりであったが、すぐに二つとも食べきってしまった。

「ごちそうさまでした」

両の手をパンと合わせて食べ終わりの挨拶をした。食べ方は乱雑ではあったが、お礼をきちんと言うところは、彼はちゃんとした家柄の人なんだなというのを感じる。

事実、剣城家は家柄の良い生徒たちが通うこの学校の中でも、トップに入るくらい有名な家柄である。先祖代々この学園に通い、皆ソレイユに選ばれたとか…風の噂で聞いた。

そう、去年ソレイユに選ばれたのは、昂希の兄とその恋人なのである。

「その…おにぎり、旨かった。お嬢様なのに、おにぎりなんて作れるんだな」

お嬢さまなのに、という発言はいささか問題なような気がするが、確かにお嬢様自らおにぎりを作るところは見たことがない。というか寮の食堂でもメニューとして出たことはない。

鈴香はあー…と言葉を濁した。

「まあ…私、お嬢様じゃないんで…」
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