わたしとおばあちゃんのあやかし語り

佐木 呉羽

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繋がり見つけた

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 音がしない。視界も暗い。
 龍にまたがっている感覚は、勿論無い。
 背中と両腕両足には畳の感触。これは、きっと寝転んでいる。
 そして、なにかを被っている感覚が、頭にはある。
 陽菜は目深に被っていた兜を持ち上げると、シパシパと何度も瞬きをした。
 なかなか目が慣れない。
 目を細めて視野のピントを合わせると、薄暗い仏間に飾られている金太郎の武者人形が見えた。
 ということは、ここは家の仏間だ。

「いつ、戻って来たんだろ……」

 兜を外し、朧気な記憶の糸を辿る。
 鯉幟が龍に変身し、金太郎から「シッカリ目ぇ閉じてろよ!」と言われてからの、記憶が無い。
 どのタイミングで戻ってきたのか、サッパリだ。
 陽菜は飾ってあった場所に兜を戻し、キョロキョロと周囲を観察する。
 いつもの仏間。変わっている場所は、特に無い。

「そうだ、掛け軸!」

 汚れていた部分は、どうなっているだろう。
 陽菜は急いで床の間の前に移動する。
 出会った鍾馗と同じ、軸の中に描かれた鍾馗が着ているのは、黒い官人の衣装。閻魔大王のように蓄えられた長い髭。ギョロリと丸い大きな目と、ゲジゲジの眉毛。右手に両刃の刀を持ち、左手は逃げ出さないようにシッカリ小鬼を掴んでいた。
 鍾馗の掛け軸には、ちゃんと小鬼が居る。

「よかった……」

 全身から、ヘナヘナと力が抜けていく。

(夢じゃなかった)

 頬に触れれば、矢が掠ったときにできた怪我の感触もある。

(待って、もしかして……!)

 陽菜は急いで立ち上がり、玄関から靴を履いて外に出た。
 玄関横には、祖母と一緒に置いたはずの、菖蒲の葉とヨモギが無い。
 走って鯉幟と武者幟が立っている庭のほうに回ると、向こうの世界で陽菜がへたりこんだ位置に、菖蒲の葉とヨモギが落ちていた。

「やっぱり、繋がってるんだ」

 アッチとコッチの繋がりを見つけて、心臓がドキドキとうるさい。
 今、向こうではなにをしているだろう。
 男達だけで、バカ騒ぎでもしているだろうか。
 菖蒲の葉とヨモギを拾い、鯉幟が繋がれているポールを目で辿る。
 矢車はカラカラと回り、風になびく吹き流しと、色とりどりの鯉幟。
 陽菜が乗って帰って来たはずの黒い鯉幟は、何事も無かったかのように、悠々と澄み渡る空を泳いでいた。
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