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16.清雅さんのお見合いと、お見合い相手。
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「お見合いですか?どなたの?清雅さんのですか?」
お見合いという単語を知ってはいても、使ったことはなかった。
今が、初めて。
お店は、私が日常で使う機会があるとは思わなかった言葉のベストスリーに入っている。
「俺のと言えば、俺の。」
と清雅さん。
歯切れが悪くなったりはしていないから、私に聞かれても話したくないということはないと思う。
ただ、分かっているのは。
私も清雅さんも、困惑している、ということ。
私と清雅さんが困惑している状況は、単純。
清雅さんは、私が知っていると思っていた事柄について私が知らなかったから驚いた。
清雅さんが打ち明けてくれた話が何のことだか私には分からなかったため、清雅さんとの会話は、清雅さんからの一方通行になっている。
私のよく分からないことをよく分からないままにして帰る方が、私と清雅さんのどちらも無傷で済んだと後日知ることにかもしれない。
そんな気がしないでもない。
でも。
このまま、私が素知らぬ顔でいたら、今日はもう解散するしかなくなるかもしれない。
お見合いという単語を出した清雅さんだけど、お見合いという単語を口にする気が最初はなかったと思う。
私との会話がもどかしくなって、意を決して出した。
そんな感じだから。
意を決して出した単語が、私に通じていないという事態が起きて。
清雅さんは、今、一人でどうしようかと考えている。
清雅さんは、一人で決めてしまうかもしれない。
今日は、もう解散、と。
私は、まだ帰りたくない。
清雅さんと一緒に歩いていたい。
このまま、私が何も言わないでいたら。
清雅さんが帰ろうとしても、私には止められない。
清雅さんが一人で今日の結論を出す前に、私は、清雅さんを引き留める。
目先の利益のために、大局を見失うなんて愚かだ。
これは、小説でよく読んだ台詞。
愚かでもいい。
目先の利益を永遠に失うことの方が、今の私には我慢できない。
清雅さんに、一人で帰ってほしくない。
「私と清雅さんの間で、何を聞かない方がよくて、何を聞いた方がよいのかについて、私は、まだ、よく分かっていません。」
私は、まだ、を強調する。
「そうだったんだ。」
と清雅さん。
清雅さんは、少し苦笑いしている。
「今の私には、清雅さんに何も聞かないという選択肢があります。
でも、清雅さんの言うお見合いについて、私は清雅さんから話を聞きたいと思っています。」
私は、変わらず、清雅さんの隣にいる。
いつの間にか、清雅さんの隣に立つことが私にとっての自然な振る舞いになっている。
「本当に聞きたい?」
と清雅さん。
清雅さんの口からは、言いにくいことなのかもしれない。
私に優しい清雅さん。
「清雅さんが私に話してくれた中で、私に分からないことがあるなら。
分からないことについて、分かるようになりたいというのが、私の気持ちです。」
「俺に聞くことで?」
と清雅さん。
清雅さんは、ためらいがちに確認してくる。
「はい。
今、清雅さんが、清雅さんのお見合いの話題を私に出されたのは。
清雅さんのお見合いについて、私に聞きたいというお気持ちがあるから、と考えたのですが。」
清雅さんは、うっかり私に失礼を働くというようなことをしない。
逆はあり得るけれど。
「お見合いについて、俺が聞きたいと思っていた葵の答えとは種類が違っていたことに驚きはしたけれど。
葵に聞いてほしい気持ちも、葵の答えを聞きたい感情も、俺の中では本物。」
と清雅さん。
よし。
「清雅さんには、私に聞かれても何も答えないという選択肢があります。
清雅さんが私に説明したくないという思いがあるなら、その思いを曲げてまで、清雅さんが説明しなくても大丈夫です。」
「葵が急に梯子を外してきた?」
と清雅さん。
清雅さんは、びっくりする顔にもバリエーションがあっていいですね。
「清雅さんが私に説明しないという結論に至ったのなら、早急に、奥様に連絡してください。」
「祖母に責任をとらせたい?」
と清雅さん。
老奥様を持ち出したら、清雅さんの顔が引き締まった。
老奥様が関係する話題だから、ただ隣り合わせだっただけの私には話しにくいとなった結果なら、私も事情は理解できる。
考慮は、しないかもしれない。
「責任がどこの誰にあるのかないのか、今の私には判断しようがありません。
責任があったからといって、責任をとることが良い結果になるとも限りません。」
「葵は、この話の責任の所在を知りたいわけじゃない?」
と清雅さん。
「清雅さんは、私が、奥様からなにがしかの説明がされることを望んでいるという旨、奥様にお伝え下さい。」
「祖母が説明したら、葵は納得する?」
と清雅さん。
私、老奥様のことは大好きですからね。
「奥様の口から奥様の言葉で語られる言葉でのご説明なら、どんな内容でも、私は説明されたことをそういうことかと受け入れます。
納得するかどうかは、別にして、です。」
「葵への説明は、今、俺がしたい。
俺から葵に話したい。」
と清雅さん。
「無理をされなくても。」
「無理でもなく、祖母からは別に説明があるかもしれないけれど。
俺は、俺の言葉で俺が話す説明を葵に一番に聞いて欲しい。
紛れもない俺の本心を葵には直接話したい。」
と清雅さん。
清雅さんから迷いは消えた様子。
「清雅さんが話しやすいところからでいいので、話してください。
先に確認したいのですが。
これからお見合いがあるわけではないんですよね?
次の約束が決まっていて、これから向かうなんということはありませんよね?」
「それはない。
俺のお見合い相手は、葵だから。」
と清雅さん。
それは、聞いていませんでした。
いったい、何がどうなって、そうなったのか。
清雅さん、私に分かるまで説明をお願いします。
お見合いという単語を知ってはいても、使ったことはなかった。
今が、初めて。
お店は、私が日常で使う機会があるとは思わなかった言葉のベストスリーに入っている。
「俺のと言えば、俺の。」
と清雅さん。
歯切れが悪くなったりはしていないから、私に聞かれても話したくないということはないと思う。
ただ、分かっているのは。
私も清雅さんも、困惑している、ということ。
私と清雅さんが困惑している状況は、単純。
清雅さんは、私が知っていると思っていた事柄について私が知らなかったから驚いた。
清雅さんが打ち明けてくれた話が何のことだか私には分からなかったため、清雅さんとの会話は、清雅さんからの一方通行になっている。
私のよく分からないことをよく分からないままにして帰る方が、私と清雅さんのどちらも無傷で済んだと後日知ることにかもしれない。
そんな気がしないでもない。
でも。
このまま、私が素知らぬ顔でいたら、今日はもう解散するしかなくなるかもしれない。
お見合いという単語を出した清雅さんだけど、お見合いという単語を口にする気が最初はなかったと思う。
私との会話がもどかしくなって、意を決して出した。
そんな感じだから。
意を決して出した単語が、私に通じていないという事態が起きて。
清雅さんは、今、一人でどうしようかと考えている。
清雅さんは、一人で決めてしまうかもしれない。
今日は、もう解散、と。
私は、まだ帰りたくない。
清雅さんと一緒に歩いていたい。
このまま、私が何も言わないでいたら。
清雅さんが帰ろうとしても、私には止められない。
清雅さんが一人で今日の結論を出す前に、私は、清雅さんを引き留める。
目先の利益のために、大局を見失うなんて愚かだ。
これは、小説でよく読んだ台詞。
愚かでもいい。
目先の利益を永遠に失うことの方が、今の私には我慢できない。
清雅さんに、一人で帰ってほしくない。
「私と清雅さんの間で、何を聞かない方がよくて、何を聞いた方がよいのかについて、私は、まだ、よく分かっていません。」
私は、まだ、を強調する。
「そうだったんだ。」
と清雅さん。
清雅さんは、少し苦笑いしている。
「今の私には、清雅さんに何も聞かないという選択肢があります。
でも、清雅さんの言うお見合いについて、私は清雅さんから話を聞きたいと思っています。」
私は、変わらず、清雅さんの隣にいる。
いつの間にか、清雅さんの隣に立つことが私にとっての自然な振る舞いになっている。
「本当に聞きたい?」
と清雅さん。
清雅さんの口からは、言いにくいことなのかもしれない。
私に優しい清雅さん。
「清雅さんが私に話してくれた中で、私に分からないことがあるなら。
分からないことについて、分かるようになりたいというのが、私の気持ちです。」
「俺に聞くことで?」
と清雅さん。
清雅さんは、ためらいがちに確認してくる。
「はい。
今、清雅さんが、清雅さんのお見合いの話題を私に出されたのは。
清雅さんのお見合いについて、私に聞きたいというお気持ちがあるから、と考えたのですが。」
清雅さんは、うっかり私に失礼を働くというようなことをしない。
逆はあり得るけれど。
「お見合いについて、俺が聞きたいと思っていた葵の答えとは種類が違っていたことに驚きはしたけれど。
葵に聞いてほしい気持ちも、葵の答えを聞きたい感情も、俺の中では本物。」
と清雅さん。
よし。
「清雅さんには、私に聞かれても何も答えないという選択肢があります。
清雅さんが私に説明したくないという思いがあるなら、その思いを曲げてまで、清雅さんが説明しなくても大丈夫です。」
「葵が急に梯子を外してきた?」
と清雅さん。
清雅さんは、びっくりする顔にもバリエーションがあっていいですね。
「清雅さんが私に説明しないという結論に至ったのなら、早急に、奥様に連絡してください。」
「祖母に責任をとらせたい?」
と清雅さん。
老奥様を持ち出したら、清雅さんの顔が引き締まった。
老奥様が関係する話題だから、ただ隣り合わせだっただけの私には話しにくいとなった結果なら、私も事情は理解できる。
考慮は、しないかもしれない。
「責任がどこの誰にあるのかないのか、今の私には判断しようがありません。
責任があったからといって、責任をとることが良い結果になるとも限りません。」
「葵は、この話の責任の所在を知りたいわけじゃない?」
と清雅さん。
「清雅さんは、私が、奥様からなにがしかの説明がされることを望んでいるという旨、奥様にお伝え下さい。」
「祖母が説明したら、葵は納得する?」
と清雅さん。
私、老奥様のことは大好きですからね。
「奥様の口から奥様の言葉で語られる言葉でのご説明なら、どんな内容でも、私は説明されたことをそういうことかと受け入れます。
納得するかどうかは、別にして、です。」
「葵への説明は、今、俺がしたい。
俺から葵に話したい。」
と清雅さん。
「無理をされなくても。」
「無理でもなく、祖母からは別に説明があるかもしれないけれど。
俺は、俺の言葉で俺が話す説明を葵に一番に聞いて欲しい。
紛れもない俺の本心を葵には直接話したい。」
と清雅さん。
清雅さんから迷いは消えた様子。
「清雅さんが話しやすいところからでいいので、話してください。
先に確認したいのですが。
これからお見合いがあるわけではないんですよね?
次の約束が決まっていて、これから向かうなんということはありませんよね?」
「それはない。
俺のお見合い相手は、葵だから。」
と清雅さん。
それは、聞いていませんでした。
いったい、何がどうなって、そうなったのか。
清雅さん、私に分かるまで説明をお願いします。
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