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第3章 混じり気のない黒は、濁りのない白と同じくらい純粋で強烈。だから、惹きつけられる。
23.『家族をバラバラにさせない。』私が頭を握り潰したがる医者と話をしていると、知らない声が加わった。『喰いたい、喰いたい。』と声は言う。
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頭を握り潰したがる医者にとっても、家族は特別だったんだね。
私と同じく。
頭を握り潰したがる医者の家族は、今、どうしているんだろう。
頭を握り潰したがる医者の家族がどうなっていても、私には関係ないから、私からは聞かない。
私が聞き出したところで、何かが変わるわけでもなし。
医者を追い詰めたものの正体が分かったところで、何になる?
今の医者は、頭を握り潰すことしか考えられない。
頭を握り潰したがる医者が施術を続けているのは、医者としての意識が根底にあるからだろうけれど。
医者の施術って、医療じゃないなら、何なんだろう?
人が人に使ったけれど、人が生み出した技術なの?
「荒ぶるのは、後で一人のときにして。
お父さんの体の見た目は若返った。
思考は制限を受けている。
お父さんと生きるなら、気をつけることを先に確認しておきたい。
他に、分かっていることはないの?」
「いなくならないのか?」
と頭を握り潰したがる医者。
「私は、私のお父さんを家族じゃないと思ったことは一度もない。
お父さんは、私の家族。
今までも、これからも。
一緒に生きていくの。お父さんだけじゃない。
お母さんと妹も。」
「今はよくても。」
と頭を握り潰したがる医者。
「今、大丈夫なら、この先も大丈夫にする。
私のお父さんを私から引き離すのは、止めて。
私とお父さんが、互いに離れると決めない限り、私達は一緒にいる。
何がなんでも。
どんなことをしても。
私の家族をバラバラにさせない。
私の家族をバラバラにしようとしているのは、どうして?」
「純粋な、純粋な。」
と知らない声がした。
「誰?」
「混じり気がない黒さを持つ娘。喰いたい、喰いたいなあ。喰えば、腹が膨れそうだ。」
知らない声は、近くから発されている。
姿は見えない。
「私だけが、一方的に見られているのは、気持ち悪い。私を見て、どうのこうの言いたいなら、姿を見せてよ。」
小さくて尖った歯が並ぶ大きな丸い口が、私の横で、カチカチと歯を鳴らしている。
「今、話していた?」
確認してみた。
「喰いたい、喰いたい、おまえを喰いたい。おまえの黒さを喰わせろ。」
と大きな口。
「嫌に決まっているわ。私は、地黒でもないし、髪も普通の黒さなんだけど。」
「純粋な黒さ、黒くて、うまそう。」
と大きな口。
口だけで、耳がないから、私の声が聞こえない?
「おまえの黒さは、混じり気がない。濁っていない白さが転化した。透き通るような黒さ。ケハケハ。喰いたい、喰いたい。」
と大きな口。
「黒さって、外見じゃなく、内面のことをさしている?」
私と同じく。
頭を握り潰したがる医者の家族は、今、どうしているんだろう。
頭を握り潰したがる医者の家族がどうなっていても、私には関係ないから、私からは聞かない。
私が聞き出したところで、何かが変わるわけでもなし。
医者を追い詰めたものの正体が分かったところで、何になる?
今の医者は、頭を握り潰すことしか考えられない。
頭を握り潰したがる医者が施術を続けているのは、医者としての意識が根底にあるからだろうけれど。
医者の施術って、医療じゃないなら、何なんだろう?
人が人に使ったけれど、人が生み出した技術なの?
「荒ぶるのは、後で一人のときにして。
お父さんの体の見た目は若返った。
思考は制限を受けている。
お父さんと生きるなら、気をつけることを先に確認しておきたい。
他に、分かっていることはないの?」
「いなくならないのか?」
と頭を握り潰したがる医者。
「私は、私のお父さんを家族じゃないと思ったことは一度もない。
お父さんは、私の家族。
今までも、これからも。
一緒に生きていくの。お父さんだけじゃない。
お母さんと妹も。」
「今はよくても。」
と頭を握り潰したがる医者。
「今、大丈夫なら、この先も大丈夫にする。
私のお父さんを私から引き離すのは、止めて。
私とお父さんが、互いに離れると決めない限り、私達は一緒にいる。
何がなんでも。
どんなことをしても。
私の家族をバラバラにさせない。
私の家族をバラバラにしようとしているのは、どうして?」
「純粋な、純粋な。」
と知らない声がした。
「誰?」
「混じり気がない黒さを持つ娘。喰いたい、喰いたいなあ。喰えば、腹が膨れそうだ。」
知らない声は、近くから発されている。
姿は見えない。
「私だけが、一方的に見られているのは、気持ち悪い。私を見て、どうのこうの言いたいなら、姿を見せてよ。」
小さくて尖った歯が並ぶ大きな丸い口が、私の横で、カチカチと歯を鳴らしている。
「今、話していた?」
確認してみた。
「喰いたい、喰いたい、おまえを喰いたい。おまえの黒さを喰わせろ。」
と大きな口。
「嫌に決まっているわ。私は、地黒でもないし、髪も普通の黒さなんだけど。」
「純粋な黒さ、黒くて、うまそう。」
と大きな口。
口だけで、耳がないから、私の声が聞こえない?
「おまえの黒さは、混じり気がない。濁っていない白さが転化した。透き通るような黒さ。ケハケハ。喰いたい、喰いたい。」
と大きな口。
「黒さって、外見じゃなく、内面のことをさしている?」
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