上 下
23 / 56
第3章 混じり気のない黒は、濁りのない白と同じくらい純粋で強烈。だから、惹きつけられる。

23.『家族をバラバラにさせない。』私が頭を握り潰したがる医者と話をしていると、知らない声が加わった。『喰いたい、喰いたい。』と声は言う。

しおりを挟む
頭を握り潰したがる医者にとっても、家族は特別だったんだね。

私と同じく。

頭を握り潰したがる医者の家族は、今、どうしているんだろう。

頭を握り潰したがる医者の家族がどうなっていても、私には関係ないから、私からは聞かない。

私が聞き出したところで、何かが変わるわけでもなし。

医者を追い詰めたものの正体が分かったところで、何になる?

今の医者は、頭を握り潰すことしか考えられない。

頭を握り潰したがる医者が施術を続けているのは、医者としての意識が根底にあるからだろうけれど。

医者の施術って、医療じゃないなら、何なんだろう?

人が人に使ったけれど、人が生み出した技術なの?

「荒ぶるのは、後で一人のときにして。
お父さんの体の見た目は若返った。
思考は制限を受けている。

お父さんと生きるなら、気をつけることを先に確認しておきたい。

他に、分かっていることはないの?」

「いなくならないのか?」
と頭を握り潰したがる医者。

「私は、私のお父さんを家族じゃないと思ったことは一度もない。
お父さんは、私の家族。
今までも、これからも。
一緒に生きていくの。お父さんだけじゃない。
お母さんと妹も。」

「今はよくても。」
と頭を握り潰したがる医者。

「今、大丈夫なら、この先も大丈夫にする。
私のお父さんを私から引き離すのは、止めて。
私とお父さんが、互いに離れると決めない限り、私達は一緒にいる。

何がなんでも。

どんなことをしても。

私の家族をバラバラにさせない。

私の家族をバラバラにしようとしているのは、どうして?」

「純粋な、純粋な。」
と知らない声がした。

「誰?」

「混じり気がない黒さを持つ娘。喰いたい、喰いたいなあ。喰えば、腹が膨れそうだ。」
知らない声は、近くから発されている。

姿は見えない。

「私だけが、一方的に見られているのは、気持ち悪い。私を見て、どうのこうの言いたいなら、姿を見せてよ。」

小さくて尖った歯が並ぶ大きな丸い口が、私の横で、カチカチと歯を鳴らしている。

「今、話していた?」
確認してみた。

「喰いたい、喰いたい、おまえを喰いたい。おまえの黒さを喰わせろ。」
と大きな口。

「嫌に決まっているわ。私は、地黒でもないし、髪も普通の黒さなんだけど。」

「純粋な黒さ、黒くて、うまそう。」
と大きな口。

口だけで、耳がないから、私の声が聞こえない?

「おまえの黒さは、混じり気がない。濁っていない白さが転化した。透き通るような黒さ。ケハケハ。喰いたい、喰いたい。」
と大きな口。

「黒さって、外見じゃなく、内面のことをさしている?」
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

スパダリと異世界に行くことになりました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:20

とあるコンビニ店員の戦い〜あの、いいかげんにして貰えませんか...?編

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

東と林

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

天使は俺達に駄々をこねる。

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:5

拝啓、空の彼方のあなたへ -1000の手紙-

emi
エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:0

虹色の薔薇が咲く場所は

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:2

処理中です...