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第3章 混じり気のない黒は、濁りのない白と同じくらい純粋で強烈。だから、惹きつけられる。

46.悲劇でも、喜劇でも、茶番でも。

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妹は、お姉ちゃんは、と呟いて、黙って、私の後ろを歩く。

お母さんは、不倫相手の元へと気が逸るのか、後ろから私と妹を追い抜かしていく。

警察官は、建物の出入り口から、私を追い払うのが仕事だったのかも?

私と妹、お母さんが建物の出入り口から離れると、建物の中に入っていった。

建物の関係者が通報したんだね。

誰かが通報したことで、警察が来たから。

不倫相手は、肩身がせまくなるかもね?

通報されるようなことをしなければ良かったのに。

間違った選択肢しか選ばないのは、落ち目の証。

どんどん落ちていけばいい。

どんどん。

どんどん落ちて。

惨めになって。

私より惨めになって、私に見下されていてよ。

『あははは。黒さが深まる、深まる、ああ、黒い。』
と、大きな口が、私の心の黒さを喜んでいる。

お母さんが、現場に着いたんだね。

「お姉ちゃんは、家族だから、私と一緒にいるの?」
と妹。

「家族だから、というけれど、今までの私達の在り方は、家族じゃなかったからね?

バラバラな家族は、家族であるとは言わないの。」

私の思う家族じゃないなら、家族とは言わない。

私の望む形態に変えるの。

私の側にいない期間は、家族としてカウントできない期間。

私の家族は、これから始まるの。

妹は家族だから、不安がらなくていいよ。

私の妹だから、私の家族の一員として生きていける。

私と妹が、建物の裏口につくと、大人が三人で争っていた。

私も加勢にいかないとね。

不倫相手をお父さんが足止めしていた甲斐があった。

大きな口が興奮している。

私の心に連動しているんだ。

大きな口は、お父さんに、お母さんの不倫相手を教えた後、お父さんの姿を隠していない。

お父さんは、お母さんの不倫相手を逃さずに、条件を持ちかけた。

『妻が、納得して、不倫相手と別れ、家族の元に帰って、お母さんに戻り、家庭で、実月を大事にし続けることができるなら、夫から不倫相手に慰謝料は請求しない。』

私が考えた条件を、お母さんの不倫相手が達成できなければ、一括で慰謝料を支払うように、お父さんは不倫相手へ要求する。

お父さんは、私のお願いを無視しない。

私のお父さん。

お父さんは特別。

いつでもどこでも。

私のお父さんは、私のヒーロー。

私だけのヒーロー。

何があっても、私を助けに来てくれる。

私と逃げてくれる。

私を逃がしてくれる。

そんなお父さんだから、お父さんは特別。

お父さんは、私から逃げない。

私の一番は、お父さんなの。

若返っても。

大きな口に喰われて、何かを失っていたとしても。

私のために駆けつけてくれるのは、いつだってお父さん。

不倫相手は、お父さんの前で、お母さんに別れ話を切り出した。

私と妹は、離れて見ている。

不倫相手のやる気が引き起こすのは、悲劇?喜劇?

それとも、茶番?

『ああ、突き進む、突き進む、黒さのままに。』
と大きな口は、今にも踊りだしそう。
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