上 下
68 / 576
第4章 学生色々。学校でのトラブルって、避けられるものと、避けられないものがあるんだよね。

67.ジョンストン伯爵家の平民だった第2夫人から生まれたハーメリーの意味するところ。

しおりを挟む
バネッサは、ハーメリーとナユカの関係をかいつまんで、マーゴットとキャスリーヌに説明した。

マーゴットは、ハーメリーが第2王子の花嫁候補と確信した。
伯爵家の養女。
父と母と3人、市井で暮らしてきた。
第2夫人の娘として平民の母と一緒に、入学前に貴族になった。
絶妙なさじ加減の立ち位置。
第2王子と同母の第2王女と同じクラスに在籍。

第1王子を危うくすることなく、第2王子に見合った箔をつけられる。

養女というのが、ご令嬢とは違うニュアンスなので、気にかかる。
心にメモしておく。

同母の第2王女が、ハーメリーに働きかけをしない理由は。
第2王女にまで話が通っていない?
もしくは、時期尚早?
もしくは、公認ではない?

ハーメリーの平民の母は、生まれも育ちも生粋の平民なのか?
高貴な生まれながら、市井に下りて、平民になった可能性も考えられる。

第2王子の花嫁候補に選ぶ娘。
出自や身元が明らかに出来ないようでは、王子の伴侶にすえられまい。

生まれから、王子として全く期待されておらず、成長してからは、輪をかけて、失望されているとしても。

伴侶となる国王以外に歓迎されなかった男爵家の令嬢を母に持つ第2王子。

第2王子の血統に価値をつけたいなら、花嫁の血統で引き上げるしかない。

そうなると。

花嫁の母は、男爵家より上の子爵家以上。
子爵家の令嬢の結婚相手としては、男爵家、子爵家、伯爵家あたり。
第2王子の花嫁の生家としての家格を考慮するなら、伯爵家が及第点だろう。

両親共に子爵家の令嬢を第2王子妃に迎えても、第2王子との子どもの血統の引き上げ効果は、期待できない。

ハーメリーの生育環境を聞く限りでは、決して劣悪とは言えない。
寧ろ、恵まれすぎていて、やんごとなき方の隠し子を疑うレベル。

平民として、衣食住に困ることなく、父と母に教わりながら勉強に専念してきた。
父も母も働いておらず、父の家、伯爵家からの援助で生活してきた。
生活レベルは、平民としては、大変裕福な部類。
何不自由なく、家族揃って遊び暮らしてきた。

ハーメリーの働かない父が、伯爵家の金を用立てられたのは、ナユカとナユカの母のおかげ。

伯爵夫人であるナユカの母が、幼いナユカをかえりみずに仕事に邁進したり、ナユカに仕事を手伝わせながら、伯爵家を維持してきたからだ。

その伯爵夫人が、過労で倒れて療養するタイミングで起きたジョンストン伯爵家のスキャンダル。

市井で遊び暮らしていた夫が、2号さんと、2号さんとの子どもを、伯爵家の屋敷に入れて、第2夫人と、伯爵家の養女という肩書きを与えた。

ハーメリーの父の活躍の甲斐があって、伯爵夫人とその嫡女を蔑ろにして、市井で遊び暮らしてきた平民娘は、由緒正しいジョンストン伯爵家の伯爵令嬢の肩書きを携えて、ニンデリー王立学園に入学することとなった。

2号さんとの子どもは、伯爵夫人の子どもと同い年。

平民娘が、家族で遊び暮らしているのとは裏腹に、伯爵夫人と嫡女は、伯爵夫人が体調を崩す程、仕事漬けだった。

貴族令嬢が、そんな話を聞いて、心穏やかにいられるはずがない。

結婚により、明日は我が身に起こるかもしれない。

貴族令嬢が、何も言わずとも、ナユカの味方につくわけだ。

ハーメリーの存在を認めることは、ご令嬢方が結婚した後の生活にダイレクトに響いてくる。

2号さんにかまけて、家や妻子を顧みない伴侶に嫌悪感は持っていない、という無言のサインを出していると、結婚相手に都合よく解釈されかねない。

家から持ち出した金で、2号さんと遊び暮らす伴侶の生き方を間接的に肯定し、2号さんを第2夫人、2号さんと伴侶との間に生まれた子どもを養女として受け入れる。

ハーメリーの存在を肯定し、仲良くなることは、貴族令嬢にとって、破滅しかない。

ハーメリーの人格に問題があろうが、なかろうが、ハーメリーという存在がアウトなのだ。

ハーメリーが、ナユカに近づけなかったのは、ニンデリー王国の貴族令嬢が団結して、阻止したから。

バネッサとマーゴットとキャスリーヌは、ニンデリー王国の貴族令嬢ではない。

ハーメリーが、マーゴット達3人に突撃出来たのは、3人が、貴族令嬢で結成した対ハーメリー同盟に入っていなかったから。

ニンデリー王国の貴族令嬢ではなく、第1王子派と揉めた後なだけに、バネッサに、対ハーメリー同盟の話を持ちけた者はいなかった。

バネッサは、ナユカと親しいが、バネッサを助ける義理は、ニンデリー王国の貴族令嬢にはない。

本来、ナユカが、友人としてバネッサを気遣うところだが、小さいうちから仕事ばかりで、人付き合いに不慣れなナユカに、自身が不在の間、友人をよろしくと頼む発想はない。

バネッサとマーゴットとキャスリーヌは、3人だけでハーメリーを撃退したが、色々思うことはある。

バネッサは、すぐ上の兄のアレックスに振り回されながらも、れっきとしたコーハ王国の伯爵令嬢である。

伯爵令嬢として、ハーメリーの有り様は論外。

バネッサは、余計な茶々が入る前に、ナユカと話をつけにいくつもりだ。

ナユカが勤労学生で忙しくしているのは知っている。

ナユカが親しく付き合っているバネッサと、バネッサが仲良くしているバネッサの同郷の貴族令嬢に対し、ナユカの血縁であるハーメリーが迷惑をかけた。

迷惑をかけられて、泣き寝入りしたら、バネッサの伯爵令嬢としての価値に傷がつく。

バネッサは、コーハ王国の伯爵令嬢として、ナユカに向き合い、ナユカに謝罪を求めるつもりだ。

バネッサとマーゴットとキャスリーヌをナユカの家のゴタゴタに巻き込んだ件の謝罪を受けてから、ナユカとの今後の関係を考えようとバネッサは思う。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

もう我慢しなくて良いですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,513pt お気に入り:94

詩集「支離滅裂」

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,591pt お気に入り:2

女神の箱庭は私が救う【改編版】

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:420pt お気に入り:35

本当に愛しているのは姉じゃなく私でしたっ!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,598pt お気に入り:63

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:17,495pt お気に入り:3,349

王妃は離婚の道を選ぶ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,914pt お気に入り:52

処理中です...