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第5章 丸付けは、全部終わってからだよ?後手に回ったからって、それが何?

162.転生貴族スラッルス・トークン。意外に面倒見が良い男。

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やさぐれて、素をさらけ出したスラッルス・トークン。

「秘密話なら、隣り合わせにしとくぞ。」
と向かい合わせになっていた椅子を2つ並べている。

「さあ。座れ。さあ、話せ。退屈させんなよ?」
とスラッルス・トークン。

「なんか、人柄が違いすぎて。」
とクロッグ・カーブ。

「テメエの前では、これでいくから、慣れとけ。」
と涼しい顔のスラッルス・トークン。

「あの、その前に。他の貴族と没交渉になるって、本当ですか?困るんですけど。」
不服そうなクロッグ・カーブ。

「困るんですけど、て、俺に文句を言うのは、お門違いじゃねーのか?
ああ?
俺が誰だか分かった上で、声をかけてきたのは、誰だ?言ってみろ。」
スラッルス・トークンの声は、完全にどすを効かせている。
お貴族様の喋りは、残り香さえない。

「わ、私です。私が。」
友好的な仮面がベロンと剥がれ落ちたスラッルス・トークンに、びくびくするクロッグ・カーブ。

「そーだよな?
俺じゃねーよな?
判断を間違えたのはよお?」
とスラッルス・トークン。

「俺は、濡れ衣きせられて、文句つけられたわけだ。」
スラッルス・トークンは、笑顔を消し去り、凄む。
12歳の少年の作る表情ではなかった。
「貴族の俺が。平民のテメエに、な?」

家族との関係は、良好ではないものの、そこそこ名のしれた商家の子どもとして育ってきたクロッグ・カーブ。
クロッグ・カーブの世界は、切った張ったの勝負をする場所ではなかった。

今、クロッグ・カーブの本能は、命の危機だと訴えている。

「この落とし前は、どうつけてもらうかなあ?」
スラッルス・トークンにとどめを刺されて、クロッグ・カーブは、石像のように固まった。

スラッルス・トークンは、微動だにしなくなった隣の少年を見て、刺激が強すぎたかな?と反省した。

しかし、このくらい脅かしておかないと、クロッグ・カーブには効き目がないだろう。
クロッグ・カーブは、貴族を軽く見ている。
平民のクロッグ・カーブと貴族のスラッルス・トークンが対等だと錯覚している。
叩き直すなら、早いうちがいい。
貴族を甘く考えていたら、簡単に死ぬ。

前世で、かなり大人だったスラッルス・トークンだから、クロッグ・カーブの無礼を子どものすること、と流してやったが。

スラッルス・トークンに前世の人格がなければ、クロッグ・カーブは、全身骨折で放置されていただろう。

生意気で鼻っ柱の高いガキは、言うことを聞く年齢の間に躾しとかねーとな。

スラッルス・トークンも肉体は12歳だが、前世の人格が12歳の少年らしさを覚えていないので、少年らしくなれない。

12歳って、こんな感じだったっけ?と思いながら、スラッルス・トークンは、クロッグ・カーブの再起動を待っている。
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