子爵令嬢マーゴットの学園無双。相棒ミノカサゴの助言、知恵、剣と魔法、権力、資金力を使って、側近兼友人のキャスリーヌと、快適な学生生活を。

第6章 可動式魔法遺跡、クークード遺跡の見学ツアーに参加しよう。

235.友好関係を築いた成果を実感できるかな？

「クロッグ・カーブが、ナユカ・ジョンストン伯爵令嬢の使者というのは、本当かな？」
とイーハン教授。

クロッグ・カーブは、使者として持たされている紋章をイーハン教授に見せた。

「紋章はあるけれど、印章はないのかな？」
とイーハン教授。

クロッグ・カーブは、主人に印章を持たされていない、と指摘されたことにむっとする。

「今日は、いらない日だから。」
とクロッグ・カーブ。

「血判しかないね。まあ、そんなに深く切るわけじゃない。」
とイーハン教授。

「なんで。教授は、味方じゃないんですか？」
と驚くクロッグ・カーブ。


クロッグ・カーブが一緒にいた男達も、パートラン卿御一行同様、イーハン教授が先に入場させていた。

マーゴットが、イーハン教授との話し合いで、友好関係を築き上げた成果が、今ここに表れている。

マーゴットは、
イーハン教授の目の前で、
キャスリーヌが印をつけていたパートラン卿を土に還して見せた。

この出来事は、
イーハン教授が、態度を明確にする手助けとなった。

「私が引率しているクークード遺跡見学ツアーの中で。

貴族の使者が、別の貴族令嬢に要求を突きつけ。

断わられたから、武力行使に出て、返り討ちにあったとなれば。

引率者で、指導教授の私が証文の証人になるしかないね。

クロッグ・カーブが、初めて書くなら、専門外だが、書き方を指導しよう。」
とイーハン教授。

「嘘だ。悪が大手を振って歩き回る世の中なんて。」
とクロッグ・カーブ。

クロッグ・カーブは、はっと何かを思い出したらしく、キョロキョロと誰かを探している。

見つけられなかったクロッグ・カーブは、声を張り上げた。

「全員揃っているなら、レベッカもいるんだろ！
レベッカ、どこだ！
どこにいる！
返事をしろ！
お前みたいなクズが、ゼーゼ先生に呼ばれているって、どういうことだ！
何をしたんだ！」
とクロッグ・カーブ。

レベッカ・ショアは、スラッルス・トークンから、ヒイロ・ゼーゼ先生の異世界転生者を使った研究について聞いた後なので、ゼーゼ教授の名前に落ち着きがなくなった。

マッドサイエンティストに、研究の素材として使われる、なんてパートラン卿は言っていなかった。

騙し討ちもいいところ。

ヒイロ・ゼーゼに呼ばれても行くのは、止めようと決心したばかりのレベッカ・ショア。

クロッグ・カーブに、理由を聞かれても、ヒイロ・ゼーゼ教授に呼ばれている理由なんて、自分の口から言いたくないレベッカ・ショア。

レベッカ・ショアは、黙っていた。

「クロッグ・カーブ。
ナユカ・ジョンストン伯爵令嬢が、レベッカ・ショアを罵るように命じたのかな？」
とイーハン教授。

「いえ。」
とたじろぐクロッグ・カーブ。

「ナユカ・ジョンストン伯爵令嬢の使者を名乗るなら、使者の言動は、ナユカ・ジョンストン伯爵令嬢の意向と見られるよ。
ナユカ・ジョンストン伯爵令嬢は、レベッカ・ショアとの対立を望んだのかな？」
とイーハン教授。

「違います。」
小さい声で否定するクロッグ・カーブ。

「望んだのかい？」
とイーハン教授。

「望んでいません。」
とクロッグ・カーブ。

「紛らわしい言動は、控えるように。」
とイーハン教授。

そこから、イーハン教授の指導のもと、証文が3部作成された。

1枚ずつ、バネッサ、クロッグ・カーブ、イーハン教授に渡る。


証文作成中。

無関係な学生が立ち会いをしていた。

マーゴットとキャスリーヌは、スラッルス・トークンとレベッカ・ショアから話を聞いた。

レベッカ・ショアが異世界転生者であること。

スラッルス・トークンの予想では、
レベッカ・ショアは、魔法を使えるようになったために、
今後もヒイロ・ゼーゼ教授に狙われるであろうことを聞いたマーゴットとキャスリーヌ。


「諸君。お帰りの時間だ。」
というイーハン教授の号令で帰宅が始まった。