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第7章 使用人を帯同しない女子寮の秘密

295.ベリーベリー・イニーの家にキャスリーヌが貸し出していた魔導具は、ベリーベリー・イニーの家から盗まれた。今は、誰が持っている?

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一方。
スラッルス・トークンは、自分を切り刻んだ男キリルに介抱されていた。

「テメエの顔を見ると、体が強張るんだけど?」
とスラッルス・トークン。

「貴族のご令嬢に触らせられないだろう。」
とキリル。

「そりゃ、そうだけど。」
と口ごもるスラッルス・トークン。

「切った人間が保証する。経過はいいから、安心して、寝とけ。」
とキリル。

「複雑。」
とスラッルス・トークン。

「この街の住人は、魔導具があったら、持って帰るか?」
ふと、スラッルス・トークンは、思い出した。

ベリーベリー・イニーの自宅で、キャスリーヌが貸し出している魔導具がなくなった、持ち去られた、と話していた。

組織の関係者なら、誰かに聞いていくうちに、持ち去ったやつにたどり着くのでは?

「魔導具は、持っていても、普通の道具より、メンテナンスの手間と金がかかる。このへんの人間は、素通りする。」
とキリル。

「盗んでいくのは、どんなやつだろう。」
とスラッルス・トークン。

「貴族の生活では、当たり前過ぎて、魔導具があったら、なかったら、とか、考えないだろうなあ。」
とキリル。

「考えたこと、なかった。」
とスラッルス・トークン。

「盗んだ魔導具を使うのは、盗まれた家と同じ階級のやつだ。
その階級にあったものを使うからな。
異なる階級で使っている魔導具は、使いづらいんだ。」
とキリル。


ベリーベリー・イニーの家にあった魔導具を盗んだのは、近所の住人なのか?
スラッルス・トークンは、悩んだ。

「マーゴットを呼んでくれ。相談する。」


スラッルス・トークンの話を聞いたマーゴットの決断は早かった。

「一番、可能性があるのは、ナンシー・ボーンの家族。
キリル。
ナンシー・ボーンの家族に監視は?
動きがあれば、連絡要員を確保しながら、追跡させなさい。」
とマーゴット。

「ナンシー・ボーンの家族が一番怪しいよなー。」
とスラッルス・トークン。

「ナンシー・ボーンの家族は、
貴族が、ベリーベリー・イニーの母親を手に入れる前に、現場から離れた。

ベリーベリー・イニーの母親は、ベリーベリー・イニーと共にある。」
とマーゴット。

「うん。うん?」
とスラッルス・トークン。

「ナンシー・ボーンの家族は、貴族の命令を完遂していない。

途中までは、貴族の命令通りに動いていたけれど、自らの意思で中断した。

なぜ、完遂しなかったか。
目的を果たしたから。」
とマーゴット。

「えーと?」
とスラッルス・トークン。

「キャスリーヌから、ベリーベリー・イニーに貸し出していた魔導具の効果をナンシー・ボーンが、家族に話していたとしたら。

ベリーベリー・イニーの家族にも、似たような効果の魔導具を貸し出されていると知った場合。

ナンシー・ボーンの家族が、自分達が貴族の言いなりになるしかない原因は、娘のナンシー・ボーンが、貴族に捕まっているせいだ、と考えるに至り。

娘を貴族から、助け出せば、貴族の言いなりにならないで済む、という結論を出したなら?

貴族の手元から、娘を助け出すには、秘密の切り札がいる。

例えば。
庶民には、高額な部類の魔導具、とか。


助け出せない時は、魔導具を献上してしまえば、画策した事実を大目に見てもらえる確率が高くなる。

ナンシー・ボーンの家族は、今日、動く。

ナンシー・ボーンを助け出すより早く、魔導具を貴族に献上させられることになっては、魔導具を盗んだ意味がない。

ベリーベリー・イニーの家から盗んだ魔導具が、ナンシー・ボーンの家族の手元にある、と貴族に勘づかれる前に、行動を起こす。」
とマーゴット。

「私とバネッサは、ナンシー・ボーンの家族対策に出てくる。」
とマーゴット。

「キリル。
ベリーベリー・イニーとその母親、切り刻んだ彼を守りなさい。」
とマーゴット。

スラッルス・トークンは、情けない気持ちでいた。

俺は、一緒に連れて行ってもらえない。

怪我して足手まといだし、弱いし。

なんとなくしょげているスラッルス・トークン。

マーゴットは、スラッルス・トークンの頭をポンポンと叩いてやる。

「魔導具の件、よく、思い出した。

この件は、後手に回ることなく、動ける。

今後も、戦うことは減らないから、怪我することが増える。

怪我の処置や、怪我の種類について、学んでおきなさい。

医者の子守りがいれば、キリルも動きやすくなる。」
とマーゴット。
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