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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

402.キャスリーヌ。研究者の青年の生い立ち。異世界転生した青年は、前世と折り合いをつける時間が今世で必要だったために。

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「私の下で働くにしても、研究者は、ニンデリー王国の貴族?」

「微妙なんだよなあ。」
と青年。

「戸籍がない貴族はいない。研究者は、貴族の籍がなくなっている?」
とキャスリーヌ。

「多分、貴族のままだと思うんだけど、国籍がさあ、どっちか分からないんだよなあ。」
と青年。

「どこの誰か、不明?」
とキャスリーヌ。

「そこまで怪しくない。俺、生まれはニンデリー王国だけど、育ちは外国でさ。
育った国の貴族の養子に入る予定だったんだよ。
今頃、養子に入っていたはずだったからなあ。
流れたのかなあ。」
と青年。

「外国に逃げたら、無事だったんじゃない?」
とキャスリーヌ。

外国の貴族になっていたら、命の危険はなかったのでは?

「養子に入る先の家族と合わなくて。できるだけ先延ばしにしたかったんだよなあ。」
と青年。

「養子に入るのは何のためだった?」
とキャスリーヌ。

「後継ぎに不安があるからって、後継ぎの代理をすることになっていた。」
と青年。

「後継ぎの代理?」
とキャスリーヌ。

なんじゃらほい?
そんなの、いる?

「俺の養子先は、子どもが後継ぎ一人しかいなかった。
予備がほしいとなったときに、俺に白羽の矢が立ったんだよ。」
と青年。

「外国にいる研究者に?」
とキャスリーヌ。

自国内で探さなかったんだ?
親戚絡みの面倒な話がくる、とキャスリーヌは思った。

「俺は、異世界転生者としての自覚が早くからあったから、子どもの時代から、前世の大人の思考だったんだ。

出来が良くて、手のかからない、従順な子どもだったんだよ。

後継ぎに手がかかるから、後継ぎと、その両親に従順で、手のかからない子どもならいても、いい、と後継ぎの両親は、俺を受け入れた。」
と青年。

「後継ぎの両親が、研究者を望んだわけではない?」
とキャスリーヌ。

「後継ぎがいるから、と断り続けている家に、親戚連中が、俺を押し込んだんだ。

後継ぎと後継ぎの家も、俺も、当事者は誰も望んでいなかったけど、俺が養子に入ることで、話がまとまっていた。」
と青年。

「研究者の家族は?」
とキャスリーヌ。

青年は、ほろ苦く笑った。

「俺は、異世界転生者だという自覚が早くからあったせいか、今世の家族と前世の家族を比較してしまったんだ。

前世の家族が良かった、と無い物ねだりをしているうちに、今世の家族に溶け込めなくなった。

最初に距離を置いたのは、俺なんだけど。

俺が、歩み寄ろうとしたときには、今世の家族から、俺は距離を置かれていた。

そこからは、粘っても、家族との溝は埋められなかった。」
と青年。

「子どものときの話?家族の溝。」
とキャスリーヌ。

「子どものときの話。自分が、親世代に近づいてきた今は、なんとなく理由が分かる。

俺のことは、我が子ではない、弟じゃない、という結論に達したんだ。

最終的に、俺は、末っ子の皮を被った化け物というポジションになった。

不気味な化け物だから、家族は、一刻も早く手放したかったんだ。」
と青年。

「異世界転生者によくある展開?」
とキャスリーヌ。

レベッカ・ショアは、異世界転生した結果、苦労している。

ヒイロ・ゼーゼ教授が、レベッカ・ショアを探したのは、救済の意味もあったのだろうか?

当初は、だが。
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