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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。
404.キャスリーヌ。『ヒイロ・ゼーゼ教授を突き動かしたものは?』『使命感。』『止まらないヒイロ・ゼーゼ教授。研究室の在籍者はどうした?』
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「王太子の掲げる学園の改革がどんなものだろうと、異世界転生者の在籍者は、学園の方針変更に何の関心もなかった。
他の誰でもない、唯一の世継ぎ、王太子が旗振り役で進める施策だ。
どんな内容の施策でも、世継ぎの名前を使っているなら、失敗で終わらせるはずがない、と異世界転生者の在籍者は考えていた。
異世界転生者の在籍者の見通しは、外れていないだろ?」
と青年はおどけた。
「的確。」
とキャスリーヌ。
「学園改革派の王太子を批判して、改革反対を唱えるのは、勝ち目のない選挙に出て売名行為との評価を得るようなもの、と異世界転生者の在籍者は考えていた。
異世界転生者の在籍者をはじめとする、ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室の在籍者は、全員で、ヒイロ・ゼーゼ教授に、王太子と対立するのは得策じゃない、と、説得し続けた。」
と青年。
「研究室の在籍者の説得は、指導教授のヒイロ・ゼーゼ教授に、全く響かなかった。
ヒイロ・ゼーゼ教授は、貴族としての誇りを胸に、王太子の改革の反対派として名乗りをあげると心を決めていた。
ヒイロ・ゼーゼ教授は、勝負の行方より、貴族の誇りを大切にしていた。
『ニンデリー王立学園で教鞭を執る教授の一人であり、ニンデリー王国の貴族であるからこそ。
王太子の学園改革に黙っているわけにはいかない。
ニンデリー王立学園の良き伝統を自分達の代で失くすわけにはいかない。』
と、ヒイロ・ゼーゼ教授自身が語っていたよ。
敗者になると決まっているんだから、王太子に逆らってくれるな。
と、考えた異世界転生者の在籍者を中心に、毎日のようにヒイロ・ゼーゼ教授を説得しても、いつも、暖簾に腕押しで終わった。」
と青年。
「ヒイロ・ゼーゼ教授は、説得に応じなかった?」
とキャスリーヌ。
「ヒイロ・ゼーゼ教授の行動は、勝つための工作じゃなく、王太子への抗議に重きをおいていた。」
「ヒイロ・ゼーゼ教授は、自ら、分かっていて敗者への道を突き進んでいった?」
とキャスリーヌ。
キャスリーヌには、ヒイロ・ゼーゼ教授の行動原理が、さっぱり分からない。
勝負は勝たなくて、どうする?
不思議がるキャスリーヌ。
ヒイロ・ゼーゼ教授の行動は、理解に苦しむよな、と青年は、キャスリーヌに理解を示した。
「敗色濃厚と気づきながらも、ヒイロ・ゼーゼ教授を突き動かしていたのは、ヒイロ・ゼーゼ教授が持ち合わせていた使命感。
研究室の在籍者全員の反対よりも、教授の使命感が勝ったんだ。」
と青年。
「ヒイロ・ゼーゼ教授の自己犠牲に見える精神は、指導教授として、問題がある。
学生が、指導教授を失う。
ヒイロ・ゼーゼ教授は、玉砕覚悟で、自業自得。
学生は、とばっちり。」
とキャスリーヌ。
「ヒイロ・ゼーゼ教授の説得が無理だと理解した在籍者のうち、在籍者の過半数は、ヒイロ・ゼーゼ教授が行動に移す前に、ヒイロ・ゼーゼ教授の指導から外れる選択をした。」
と青年。
「穏当。」
とキャスリーヌ。
「残った在籍者は、ヒイロ・ゼーゼ教授が、直前で踏みとどまることを期待した人と、
ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室以外に、行き先がない人。」
と青年。
「ワンマンの組織の終焉の図を見たり。」
とキャスリーヌ。
「ワンマン、終焉、その通りだ。」
と青年。
青年は、愁嘆場を思い返す。
魔法の力で、時間が巻き戻って、全部なかったことになれば、今も、変わりない日常だったのに。
魔法が日常使いされている異世界に転生しても、一番使いたい魔法は、おとぎ話の世界にしか存在しなかった。
他の誰でもない、唯一の世継ぎ、王太子が旗振り役で進める施策だ。
どんな内容の施策でも、世継ぎの名前を使っているなら、失敗で終わらせるはずがない、と異世界転生者の在籍者は考えていた。
異世界転生者の在籍者の見通しは、外れていないだろ?」
と青年はおどけた。
「的確。」
とキャスリーヌ。
「学園改革派の王太子を批判して、改革反対を唱えるのは、勝ち目のない選挙に出て売名行為との評価を得るようなもの、と異世界転生者の在籍者は考えていた。
異世界転生者の在籍者をはじめとする、ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室の在籍者は、全員で、ヒイロ・ゼーゼ教授に、王太子と対立するのは得策じゃない、と、説得し続けた。」
と青年。
「研究室の在籍者の説得は、指導教授のヒイロ・ゼーゼ教授に、全く響かなかった。
ヒイロ・ゼーゼ教授は、貴族としての誇りを胸に、王太子の改革の反対派として名乗りをあげると心を決めていた。
ヒイロ・ゼーゼ教授は、勝負の行方より、貴族の誇りを大切にしていた。
『ニンデリー王立学園で教鞭を執る教授の一人であり、ニンデリー王国の貴族であるからこそ。
王太子の学園改革に黙っているわけにはいかない。
ニンデリー王立学園の良き伝統を自分達の代で失くすわけにはいかない。』
と、ヒイロ・ゼーゼ教授自身が語っていたよ。
敗者になると決まっているんだから、王太子に逆らってくれるな。
と、考えた異世界転生者の在籍者を中心に、毎日のようにヒイロ・ゼーゼ教授を説得しても、いつも、暖簾に腕押しで終わった。」
と青年。
「ヒイロ・ゼーゼ教授は、説得に応じなかった?」
とキャスリーヌ。
「ヒイロ・ゼーゼ教授の行動は、勝つための工作じゃなく、王太子への抗議に重きをおいていた。」
「ヒイロ・ゼーゼ教授は、自ら、分かっていて敗者への道を突き進んでいった?」
とキャスリーヌ。
キャスリーヌには、ヒイロ・ゼーゼ教授の行動原理が、さっぱり分からない。
勝負は勝たなくて、どうする?
不思議がるキャスリーヌ。
ヒイロ・ゼーゼ教授の行動は、理解に苦しむよな、と青年は、キャスリーヌに理解を示した。
「敗色濃厚と気づきながらも、ヒイロ・ゼーゼ教授を突き動かしていたのは、ヒイロ・ゼーゼ教授が持ち合わせていた使命感。
研究室の在籍者全員の反対よりも、教授の使命感が勝ったんだ。」
と青年。
「ヒイロ・ゼーゼ教授の自己犠牲に見える精神は、指導教授として、問題がある。
学生が、指導教授を失う。
ヒイロ・ゼーゼ教授は、玉砕覚悟で、自業自得。
学生は、とばっちり。」
とキャスリーヌ。
「ヒイロ・ゼーゼ教授の説得が無理だと理解した在籍者のうち、在籍者の過半数は、ヒイロ・ゼーゼ教授が行動に移す前に、ヒイロ・ゼーゼ教授の指導から外れる選択をした。」
と青年。
「穏当。」
とキャスリーヌ。
「残った在籍者は、ヒイロ・ゼーゼ教授が、直前で踏みとどまることを期待した人と、
ヒイロ・ゼーゼ教授の研究室以外に、行き先がない人。」
と青年。
「ワンマンの組織の終焉の図を見たり。」
とキャスリーヌ。
「ワンマン、終焉、その通りだ。」
と青年。
青年は、愁嘆場を思い返す。
魔法の力で、時間が巻き戻って、全部なかったことになれば、今も、変わりない日常だったのに。
魔法が日常使いされている異世界に転生しても、一番使いたい魔法は、おとぎ話の世界にしか存在しなかった。
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