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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

426.マーゴットの第一声は『起きなさい、チェール・モンス。』。さあ、お話をしよう。

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マーゴットは、チェール・モンスへの第一声を決めた。

「起きなさい。チェール・モンス。」
とマーゴット。

チェール・モンスは、人の声にびくっとした。

チェール・モンスは、魔法で身動きが取れないほど固められている体を丸めて、呪術を使おうとしている。

チェール・モンスは、何かに怯えている、とマーゴットは、察した。

怯えから、姿を隠すことを選んだのだ。

「チェール・モンス。呪術を全てわたしに解除されるか、今すぐ自分で呪術を解除するか、選びなさい。」
とマーゴット。

チェール・モンスは、呪術を紡ぐのを止めない。

マーゴットは、チェール・モンスを一瞥していることを分からせるために、視線に圧をこめる。

「わたしは、チェール・モンスの呪術を全て解除できる。わたしは、逃げ隠れする必要がない。この繭玉を解除する。」

チェール・モンスは、びくびくしながら、声を出した。

「繭玉は、消したらダメだ。見つかってしまう。」
とチェール・モンス。

「わたしは、困らない。繭玉は、ない方がすっきりする。
チェール・モンスは、何から隠れている?」
とマーゴット。

「大人だ。失敗を見られるわけにはいかないのに、繭玉がなかったら、見られてしまう。」
とチェール・モンス。

「大人は、色々いる。誰から隠れた?」
とマーゴット。

「大人の男だ。大人の男には、絶対に見られたら、ダメなんだ。」
とチェール・モンス。

マーゴットは、合点がいった。

チェール・モンスが、マーゴットと話をしているのは、チェール・モンスの怯えている対象が、マーゴットと正反対だから。

少女のマーゴットは、チェール・モンスが怯える対象ではない。

チェール・モンスは、マーゴットの姿を確認できなくても、マーゴットの声は偽りようがなく少女の声なので、安心しているのだ。

マーゴットは、呪術で、雁字搦めにされていたシグル・ドレマンの姿を思い出しながら聞いた。

「大人の男なら、繭玉の中で一人、動けなくなっているのを見た。他には、誰を警戒している?」
とマーゴット。

「誰?誰かは分からない。でも、大人の男は、全部、警戒しないとダメだ。」
とチェール・モンス。

「なぜ、大人の男、全部?」
とマーゴット。

「誰が、私を追い詰めるか分からない。」
とチェール・モンス。

「チェール・モンスは、追い詰められることをしている自覚がある?」
とマーゴット。

「私は、間違っているわけではない。私のしていることは、目的に合致している。」
とチェール・モンス。

「何の目的がある?」
とマーゴット。

ミノカサゴは、マーゴットの隣で、静かに怒っている。

「それは。」

マーゴットは、チェール・モンスが誤魔化す時間を与えない。

「チェール・モンス。魚の魂を人に取り憑かせ、人の魂を魚に取り憑かせる目的を答えなさい。
答えなければ、チェール・モンスの呪術は、全て解除する。
チェール・モンスは、目的を果たせなくなる。」
とマーゴット。
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