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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。
453.ネッド・チリル教授は、ソラッドロス王太子殿下のことをよく思っていない。
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「建国の祖は、魔法システムを作り上げるとき、注ぐ魔力量をセーブする仕組みを用意していないのか?」
とシグル・ドレマン。
「セーブする仕組みは、ある。なかったら、魔力量が基準値の八割の国王陛下は廃人になっている。
二人以上で魔力を注ぐことは、魔法システムを作った建国の祖の狙いに反するんだと思う。
魔法システムに、何かしらの仕掛けを組み込んでいるのは、そういう理由。
建国の祖の狙いが、子孫に引き継がれていたら、二人の王子を犠牲にせずに済んだかもしれない。
もしくは、第一王子、第二王子を取り除いて、第三王子が玉座に座る策略だったのかも。
王家の魔力に依存する魔法システムにもかかわらず、王家の直系に伝えられていない情報ほど、重要度が高い。
わざと、か、偶然か。」
とマーゴット。
シグル・ドレマンとマーゴットは、魔法システムについて、思いついた意見を交換する。
「殿下は、魔力量を増やすために、毎日、努力をされていましたのう。
研究者は、殿下にそんな努力をさせる必要はない、と意見書を出しておったのですが、どなたにも取り上げられませんでしたでなあ。」
とマロン・ニャスター教授。
「魔力量を増やす努力は、必要なかった?」
と驚くソラッドロス王太子殿下。
「殿下の取り組まれていた方法では、魔力量を爆発的に増大させることは出来ません。
基準値の四割弱の魔力量なら、どんなに頑張っても、基準値の五割にのばすのが、せいぜい。
そのことを、研究者は、全員知っていました。
基準値の四割弱の魔力量を五割にのばしたところで、魔法システムを問題なく運用するのは、困難であることに変わりはないんです。
魔法システムの安全な運用を目的とするなら、殿下の魔力量を増やす努力は、無意味です。
殿下自身の魔力を増やす目的のためなら、間違ってはいませんが、殿下に魔力を増やすように仕向けていた人は、殿下に、意識の切り替えをさせませんでした。
無駄な努力はやめさせて、その時間を子どもらしく過ごさせていれば、今のようにはなっていなかったでしょう。」
とネッド・チリル教授。
マロン・ニャスター教授が、ソラッドロス王太子殿下に親愛の情を残している一方で。
ネッド・チリル教授は、憎悪の念が強いのだろう。
ネッド・チリル教授の理性的に見えて、節々に攻撃性がうかがえる言葉選びは、ソラッドロス王太子殿下に傷を負わそうとしている。
ネッド・チリル教授の恨みも憎悪も、想像にかたくない。
ネッド・チリル教授は、ここで終わる。
ソラッドロス王太子殿下は、ニンデリー王国の次代として、国を引っ張っていっていかせる、とマーゴットは決めている。
終わりが見えているネッド・チリル教授が満足するために、魔法システムをはじめとする、ニンデリー王国の抜本的な改革の旗頭になるソラッドロス王太子殿下を歪めることを、マーゴットは、よしとしない。
その人物が、これからも使えるか、使えないのか。
人の上に立って、人の采配をする立場にあるマーゴットは、シビアに人を見る。
ネッド・チリル教授の言が、乗りすぎるようであれば、止める。
ネッド・チリル教授の言葉選びは、攻撃的だが、ソラッドロス王太子殿下は知っておいた方がよい事実だから、マーゴットは、黙って見守りに徹する。
どこで情報がせき止められて、肝心の本人に適切な情報が伝わらなかったのか。
ニンデリー王国の王家を含む貴族社会の構造の問題が、見え隠れする。
ソラッドロス王太子殿下を名実ともに国王陛下としてたたせるためには、魔法システムを作り変えるだけでは、足りない、ということが分かった。
何代にもわたる問題なだけに、利害関係者は少なくないだろう。
マーゴットは、やると決めたら、やる。
トップは、己の決断に責任と自信を持つものだ。
ニンデリー王立学園を卒業するまでには、カタをつけよう、とマーゴットは思った。
とシグル・ドレマン。
「セーブする仕組みは、ある。なかったら、魔力量が基準値の八割の国王陛下は廃人になっている。
二人以上で魔力を注ぐことは、魔法システムを作った建国の祖の狙いに反するんだと思う。
魔法システムに、何かしらの仕掛けを組み込んでいるのは、そういう理由。
建国の祖の狙いが、子孫に引き継がれていたら、二人の王子を犠牲にせずに済んだかもしれない。
もしくは、第一王子、第二王子を取り除いて、第三王子が玉座に座る策略だったのかも。
王家の魔力に依存する魔法システムにもかかわらず、王家の直系に伝えられていない情報ほど、重要度が高い。
わざと、か、偶然か。」
とマーゴット。
シグル・ドレマンとマーゴットは、魔法システムについて、思いついた意見を交換する。
「殿下は、魔力量を増やすために、毎日、努力をされていましたのう。
研究者は、殿下にそんな努力をさせる必要はない、と意見書を出しておったのですが、どなたにも取り上げられませんでしたでなあ。」
とマロン・ニャスター教授。
「魔力量を増やす努力は、必要なかった?」
と驚くソラッドロス王太子殿下。
「殿下の取り組まれていた方法では、魔力量を爆発的に増大させることは出来ません。
基準値の四割弱の魔力量なら、どんなに頑張っても、基準値の五割にのばすのが、せいぜい。
そのことを、研究者は、全員知っていました。
基準値の四割弱の魔力量を五割にのばしたところで、魔法システムを問題なく運用するのは、困難であることに変わりはないんです。
魔法システムの安全な運用を目的とするなら、殿下の魔力量を増やす努力は、無意味です。
殿下自身の魔力を増やす目的のためなら、間違ってはいませんが、殿下に魔力を増やすように仕向けていた人は、殿下に、意識の切り替えをさせませんでした。
無駄な努力はやめさせて、その時間を子どもらしく過ごさせていれば、今のようにはなっていなかったでしょう。」
とネッド・チリル教授。
マロン・ニャスター教授が、ソラッドロス王太子殿下に親愛の情を残している一方で。
ネッド・チリル教授は、憎悪の念が強いのだろう。
ネッド・チリル教授の理性的に見えて、節々に攻撃性がうかがえる言葉選びは、ソラッドロス王太子殿下に傷を負わそうとしている。
ネッド・チリル教授の恨みも憎悪も、想像にかたくない。
ネッド・チリル教授は、ここで終わる。
ソラッドロス王太子殿下は、ニンデリー王国の次代として、国を引っ張っていっていかせる、とマーゴットは決めている。
終わりが見えているネッド・チリル教授が満足するために、魔法システムをはじめとする、ニンデリー王国の抜本的な改革の旗頭になるソラッドロス王太子殿下を歪めることを、マーゴットは、よしとしない。
その人物が、これからも使えるか、使えないのか。
人の上に立って、人の采配をする立場にあるマーゴットは、シビアに人を見る。
ネッド・チリル教授の言が、乗りすぎるようであれば、止める。
ネッド・チリル教授の言葉選びは、攻撃的だが、ソラッドロス王太子殿下は知っておいた方がよい事実だから、マーゴットは、黙って見守りに徹する。
どこで情報がせき止められて、肝心の本人に適切な情報が伝わらなかったのか。
ニンデリー王国の王家を含む貴族社会の構造の問題が、見え隠れする。
ソラッドロス王太子殿下を名実ともに国王陛下としてたたせるためには、魔法システムを作り変えるだけでは、足りない、ということが分かった。
何代にもわたる問題なだけに、利害関係者は少なくないだろう。
マーゴットは、やると決めたら、やる。
トップは、己の決断に責任と自信を持つものだ。
ニンデリー王立学園を卒業するまでには、カタをつけよう、とマーゴットは思った。
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