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97.『俺に人の殺し方を教えてくれ。師の屍を越えていってやるから。』
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野村レオは、一瞬、目をパチクリさせた。
「菩提寺を知りたいのか?」
と野村レオ。
「希望の宗派があるなら、話しておけ。
聞くだけは聞いてやる。」
「俺のか?」
と野村レオ。
「知っているなら、彼女さんのも。」
「結婚式の話はしていたが、葬式の話はしていない。」
と野村レオ。
葬式の話は、結婚してからでないと話さないだろう。
「葬式と墓は期待するな。供養ぐらいはしてやる。
辞世の句は、勘弁しろ。
覚えられる自信がない。」
野村レオの命を刈り取ろうとしている俺が、言うのも変な話だとは思う。
「辞世の句は言わないが、思い残すことはある。」
と野村レオ。
それは、あるだろう。
「最期に聞いてやる。」
俺の精一杯の抵抗だ。
「よし、北白川サナ。
スマホより重いものは持たないで生きてきた俺が、怪我しないで済むように、たくさん助けてくれ。」
「正直者の燕がいる。」
と野村レオは、笑った。
「鎌なんて、草刈り以外に使わないだろう?
俺は、草の生える場所にはもう何年も住んでいない。
気の乗らないことには、一瞬だって、労力を使いたくないからだ。
そんな俺が、真面目に人殺しに挑もうとするなんて、天変地異の前触れ。
建物の外は大嵐になる。」
「なかなか言うなあ。」
と笑う野村レオは、もう死ぬことを半分以上受け入れているように見える。
死に抗いたくなるのが、人の本能だとしたら。
死を受け入れて笑うのは、人の理性か?
生きることも死ぬことも、苦しまないといけないなんて、どこに光を見い出せばいいのか。
希望はないのか、どこにも。
野村レオは、希望を見出す代わりに、諦めの境地に達したのか。
心がざわつく。
誰かの思惑で、すり潰される人が目の前にいる。
誰かの思惑を実現するために、使われるしか生きる道がない俺。
吹き流しに野村レオの名前を書いて、子どもの日に、毎年、飾って寄贈してやろうか。
俺と北白川サナと野村レオは、それぞれ、鎌を構えた。
「うしっ!覚悟しろ!」
俺は、鎌を持って野村レオに走り寄る。
「本当に、素人の動きだ。」
と野村レオ。
鎌で鎌を受け止めて、跳ね飛ばされた俺は、たたらを踏む。
「素人を売りにしているんだから、俺はいいんだ。」
「素人を売りにできるのは、新人の間だけだ。」
と野村レオ。
元刑事が、業界に染まっている。
北白川サナが、動き出した。
俺は、北白川サナの動きを邪魔しない。
「そういうなら、野村レオは、俺に人の殺し方を伝授してくれ。
ここから出ていく以前の問題だ。
ここで殺されないためには、人を殺さないといけない。
残念なことに。
俺は、人の殺し方を知らないで生きてきた。
人の殺し方を知らないことを残念だと思う日がくるとは。
環境が、変わったせいだから、順応しないと死ぬ。
野村レオの屍を越えた俺が社会復帰したあかつきには、野村レオと彼女さんの菩提を弔ってやる。
野村レオの命で、俺が、人を殺せるように、教育してくれ。」
野村レオは、吹き出した。
「新人は、言うことが違う。」
と野村レオ。
北白川サナは、腕のリーチの違いから、攻めにくそうにしている。
「ここは、綺麗な手でいることを諦めないと生きていけない場所だ。
人殺しになる覚悟は、さっき、決めた。
覚悟が揺らぐ前に、頼む。
俺を人殺しにしてくれ。」
俺は、野村レオに頭を下げた。
「新人研修だ。」
と野村レオ。
「そうだ、新人研修だ。
俺は、今日まで、研修なんてかったるいことをやっている人の気がしれないと思っていた。
今の俺は、研修を受けたいと言う人の気持ちを完全に理解している。」
「新人のために、最後のご奉公をするか。」
と野村レオは、鎌を持った手の柔軟を始めた。
「報酬は払えないから、ボランティアで頼む。」
「値切るどころか、無料奉仕を要求してくるか。
燕は、大物になる。」
と野村レオ。
「大物になった姿を見せることはかなわないから、草葉の陰から祈っていてくれ。」
「率直すぎる。」
と野村レオ。
俺と話していた野村レオは、北白川サナに向かって、にやりと笑う。
「サナには、手加減がいらないだろう?
燕は、俺が育ててやる。」
と野村レオ。
「菩提寺を知りたいのか?」
と野村レオ。
「希望の宗派があるなら、話しておけ。
聞くだけは聞いてやる。」
「俺のか?」
と野村レオ。
「知っているなら、彼女さんのも。」
「結婚式の話はしていたが、葬式の話はしていない。」
と野村レオ。
葬式の話は、結婚してからでないと話さないだろう。
「葬式と墓は期待するな。供養ぐらいはしてやる。
辞世の句は、勘弁しろ。
覚えられる自信がない。」
野村レオの命を刈り取ろうとしている俺が、言うのも変な話だとは思う。
「辞世の句は言わないが、思い残すことはある。」
と野村レオ。
それは、あるだろう。
「最期に聞いてやる。」
俺の精一杯の抵抗だ。
「よし、北白川サナ。
スマホより重いものは持たないで生きてきた俺が、怪我しないで済むように、たくさん助けてくれ。」
「正直者の燕がいる。」
と野村レオは、笑った。
「鎌なんて、草刈り以外に使わないだろう?
俺は、草の生える場所にはもう何年も住んでいない。
気の乗らないことには、一瞬だって、労力を使いたくないからだ。
そんな俺が、真面目に人殺しに挑もうとするなんて、天変地異の前触れ。
建物の外は大嵐になる。」
「なかなか言うなあ。」
と笑う野村レオは、もう死ぬことを半分以上受け入れているように見える。
死に抗いたくなるのが、人の本能だとしたら。
死を受け入れて笑うのは、人の理性か?
生きることも死ぬことも、苦しまないといけないなんて、どこに光を見い出せばいいのか。
希望はないのか、どこにも。
野村レオは、希望を見出す代わりに、諦めの境地に達したのか。
心がざわつく。
誰かの思惑で、すり潰される人が目の前にいる。
誰かの思惑を実現するために、使われるしか生きる道がない俺。
吹き流しに野村レオの名前を書いて、子どもの日に、毎年、飾って寄贈してやろうか。
俺と北白川サナと野村レオは、それぞれ、鎌を構えた。
「うしっ!覚悟しろ!」
俺は、鎌を持って野村レオに走り寄る。
「本当に、素人の動きだ。」
と野村レオ。
鎌で鎌を受け止めて、跳ね飛ばされた俺は、たたらを踏む。
「素人を売りにしているんだから、俺はいいんだ。」
「素人を売りにできるのは、新人の間だけだ。」
と野村レオ。
元刑事が、業界に染まっている。
北白川サナが、動き出した。
俺は、北白川サナの動きを邪魔しない。
「そういうなら、野村レオは、俺に人の殺し方を伝授してくれ。
ここから出ていく以前の問題だ。
ここで殺されないためには、人を殺さないといけない。
残念なことに。
俺は、人の殺し方を知らないで生きてきた。
人の殺し方を知らないことを残念だと思う日がくるとは。
環境が、変わったせいだから、順応しないと死ぬ。
野村レオの屍を越えた俺が社会復帰したあかつきには、野村レオと彼女さんの菩提を弔ってやる。
野村レオの命で、俺が、人を殺せるように、教育してくれ。」
野村レオは、吹き出した。
「新人は、言うことが違う。」
と野村レオ。
北白川サナは、腕のリーチの違いから、攻めにくそうにしている。
「ここは、綺麗な手でいることを諦めないと生きていけない場所だ。
人殺しになる覚悟は、さっき、決めた。
覚悟が揺らぐ前に、頼む。
俺を人殺しにしてくれ。」
俺は、野村レオに頭を下げた。
「新人研修だ。」
と野村レオ。
「そうだ、新人研修だ。
俺は、今日まで、研修なんてかったるいことをやっている人の気がしれないと思っていた。
今の俺は、研修を受けたいと言う人の気持ちを完全に理解している。」
「新人のために、最後のご奉公をするか。」
と野村レオは、鎌を持った手の柔軟を始めた。
「報酬は払えないから、ボランティアで頼む。」
「値切るどころか、無料奉仕を要求してくるか。
燕は、大物になる。」
と野村レオ。
「大物になった姿を見せることはかなわないから、草葉の陰から祈っていてくれ。」
「率直すぎる。」
と野村レオ。
俺と話していた野村レオは、北白川サナに向かって、にやりと笑う。
「サナには、手加減がいらないだろう?
燕は、俺が育ててやる。」
と野村レオ。
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