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389.名コンビになる前に、ハコとラキは解散したよとケンゴは言った。メグたんは現役の刑事?俺は、一生役者だよとツカサは言う。ならば、俺は?
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「ラキちゃんは、ハコさんといることで何を期待されていた?」
「ハコを刑事でいさせること。
ハコは刑事として才能を活かそうとしても、ハコ自身の気質のせいで、刑事としてのキャリアを積むことが難しくなっていたわ。」
とメグたん。
「ラキちゃんは、自身に与えられた役割を伝えられていたか?」
「いいや。ラキの指導役としてハコを配置しただけだよ。」
とケンゴ。
「ハコさんが亡くなったために。
ラキちゃんに期待されていた役割は、変わったということか。」
「変わってはいない。
二つが一つに減っただけだ。
現役の刑事として正義が勝たないデスゲームに参加するという役割だけになった。」
とケンゴ。
「ハコさんの再教育が成功したら、ラキちゃんは正義が勝たないデスゲームに参加しなかったか?」
「ハコの再教育がうまくいっていたら、正義が勝たないデスゲームにラキが参加する必然性はなくなっていた。」
とメグたん。
「名コンビになる前に、ハコとラキは解散したよ。」
とケンゴ。
ケンゴからすれば、そういう認識か。
ケンゴとラキちゃんが過ごした時間は、俺とラキちゃんが一緒の空間にいた時間よりも遥かに長い。
ラキちゃんと交わした言葉の数。
ラキちゃんの生活で果たした役割。
どれをとっても、ケンゴの方が俺よりも多い。
それなのに。
ケンゴのラキちゃんへの思い入れは、俺のラキちゃんへの思い入れよりも、深くない。
ラキちゃんが最後の最後に縋ったのは、俺でなくケンゴなのに。
ラキちゃんのことを一人の女性として考えている俺よりも。
ラキちゃんのことを仕事で面倒見ていたというスタンスのケンゴの方が、ラキちゃんの心をとらえていた。
ラキちゃんがケンゴを選び俺を選ばなかったのは、過ごした時間の差か?
ケンゴは、ラキちゃんの今際のときに現れない男なのに。
「ラキちゃんが生き残りに支障をきたしたときは、助けたい。
そう思ってはいても。
俺は、ラキちゃんにとって、助けられたい相手ではなかった。」
ラキちゃんといても。
ラキちゃんを見ていても。
俺は、元気なラキちゃんが洗脳されている可能性に気付いていなかった。
洗脳に気付いていたとしても、俺は、ラキちゃんの洗脳を解くほどラキちゃんに近寄れなかった。
「刑事は、私の天職。」
とメグたん。
突然、なんだ?
「ラキちゃんにとっても、刑事は天職だったのではないか?」
「刑事でいることと、刑事でいることにとらわれないでいることの境目を意識したときに、私は刑事として伸びたわ。」
とメグたん。
「伸びたというのは、刑事としての寿命がか?」
同期の刑事であるハコさんに捕まって、タケハヤプロジェクトに参加しているメグたんに確認するには、間抜けな質問だと思いながらも、俺は尋ねた。
「容疑者確保の数字。」
とメグたん。
「犯人を逮捕した、というメグたんの実績が増えたのか?」
「私単独ではなく、私を含む捜査チームの数字。」
とメグたん。
「メグたんは、犯人に逃げ隠れさせないほどの証拠を見つけることが得意になり、検挙に繋がる数字が増えていった、ということか?」
「隠れている容疑者を探し出すことにかけて、的中率は格段に上がったわよ。」
とメグたん。
メグたんの話しぶりから得た確信は、メグたんにぶつけて確認する。
「メグたんは、今も現役の刑事か?」
「どこにいても、何をしていても。私は刑事よ。」
とメグたん。
メグたんは、元刑事ではない。
メグたんは、ケンゴがラキちゃんを洗脳した効果や意味を知っていた。
知っていても、ラキちゃんの洗脳を解かなかった。
理由は、メグたんが刑事だから。
ラキちゃんの洗脳は、公安に所属するケンゴの仕事の一部。
ラキちゃんが洗脳されている状態で正義が勝たないデスゲームに参加することも、刑事としてのラキちゃんの仕事。
刑事のメグたんは、同僚の仕事の邪魔をしない。
「ツカサは、生涯、役者か?」
俺がツカサにも話をふると。
「俺は、一生、役者だよ。」
とツカサ。
「ツカサは、タケハヤプロジェクトに所属して、正義が勝たないデスゲームという舞台に立つ役者か?」
「ショウタは、俺のことがよく分かっているね。
俺のファンになったというなら、ファンサしようか?
特別だよ。」
とツカサ。
ツカサは、ひらひらと手を降ってにこやかな笑顔を見せてくる。
男の笑顔を隣の席から見せられても。
「俺は、ツカサの生き様を認めているだけで、ツカサのファンではない。
よって、俺に、ツカサからのファンサはいらない。」
ファンサをされるなら。
ツカサよりメグたんにされたいと思っていることは、口に出さないでおく。
俺の心の声はメグたんに聞かれない方が、今後の俺のためになる。
メグたんの不興を買うことは、俺に利がない。
それを理解している俺は、欲望を口に出すことはしない。
分かってはいる、が。
正義が勝たないデスゲームを脱出するまで、一度くらいなら、メグたんに微笑まれてもいいような気はする。
俺は隣に座るメグたんを見てみる。
ツカサのように手を振るどころか、俺の視線をうるさがりもしないメグたん。
メグたんのファンサは無理か。
俺は、正面のケンゴへ顔を戻す。
「そろそろ、俺のこれから先の人生の話をするか?」
俺は、ケンゴの答えを待った。
ケンゴがメグたんに話をふって、ケンゴと俺との会話にメグたんが加わったときに、ケンゴの腹は決まった、と俺は予想している。
俺が正義が勝たないデスゲームを脱出するための準備はととのえられている。
だが、俺はまだ正義が勝たないデスゲームを脱出していない。
現実になるまで、予想は、夢想と大差ない。
油断はしない。
悲観的にもならない。
突きつけられた現実の中で、俺は生き延びる。
俺がやりたいことをやるために。
俺は正義が勝たないデスゲームの外の世界へ行く。
「ハコを刑事でいさせること。
ハコは刑事として才能を活かそうとしても、ハコ自身の気質のせいで、刑事としてのキャリアを積むことが難しくなっていたわ。」
とメグたん。
「ラキちゃんは、自身に与えられた役割を伝えられていたか?」
「いいや。ラキの指導役としてハコを配置しただけだよ。」
とケンゴ。
「ハコさんが亡くなったために。
ラキちゃんに期待されていた役割は、変わったということか。」
「変わってはいない。
二つが一つに減っただけだ。
現役の刑事として正義が勝たないデスゲームに参加するという役割だけになった。」
とケンゴ。
「ハコさんの再教育が成功したら、ラキちゃんは正義が勝たないデスゲームに参加しなかったか?」
「ハコの再教育がうまくいっていたら、正義が勝たないデスゲームにラキが参加する必然性はなくなっていた。」
とメグたん。
「名コンビになる前に、ハコとラキは解散したよ。」
とケンゴ。
ケンゴからすれば、そういう認識か。
ケンゴとラキちゃんが過ごした時間は、俺とラキちゃんが一緒の空間にいた時間よりも遥かに長い。
ラキちゃんと交わした言葉の数。
ラキちゃんの生活で果たした役割。
どれをとっても、ケンゴの方が俺よりも多い。
それなのに。
ケンゴのラキちゃんへの思い入れは、俺のラキちゃんへの思い入れよりも、深くない。
ラキちゃんが最後の最後に縋ったのは、俺でなくケンゴなのに。
ラキちゃんのことを一人の女性として考えている俺よりも。
ラキちゃんのことを仕事で面倒見ていたというスタンスのケンゴの方が、ラキちゃんの心をとらえていた。
ラキちゃんがケンゴを選び俺を選ばなかったのは、過ごした時間の差か?
ケンゴは、ラキちゃんの今際のときに現れない男なのに。
「ラキちゃんが生き残りに支障をきたしたときは、助けたい。
そう思ってはいても。
俺は、ラキちゃんにとって、助けられたい相手ではなかった。」
ラキちゃんといても。
ラキちゃんを見ていても。
俺は、元気なラキちゃんが洗脳されている可能性に気付いていなかった。
洗脳に気付いていたとしても、俺は、ラキちゃんの洗脳を解くほどラキちゃんに近寄れなかった。
「刑事は、私の天職。」
とメグたん。
突然、なんだ?
「ラキちゃんにとっても、刑事は天職だったのではないか?」
「刑事でいることと、刑事でいることにとらわれないでいることの境目を意識したときに、私は刑事として伸びたわ。」
とメグたん。
「伸びたというのは、刑事としての寿命がか?」
同期の刑事であるハコさんに捕まって、タケハヤプロジェクトに参加しているメグたんに確認するには、間抜けな質問だと思いながらも、俺は尋ねた。
「容疑者確保の数字。」
とメグたん。
「犯人を逮捕した、というメグたんの実績が増えたのか?」
「私単独ではなく、私を含む捜査チームの数字。」
とメグたん。
「メグたんは、犯人に逃げ隠れさせないほどの証拠を見つけることが得意になり、検挙に繋がる数字が増えていった、ということか?」
「隠れている容疑者を探し出すことにかけて、的中率は格段に上がったわよ。」
とメグたん。
メグたんの話しぶりから得た確信は、メグたんにぶつけて確認する。
「メグたんは、今も現役の刑事か?」
「どこにいても、何をしていても。私は刑事よ。」
とメグたん。
メグたんは、元刑事ではない。
メグたんは、ケンゴがラキちゃんを洗脳した効果や意味を知っていた。
知っていても、ラキちゃんの洗脳を解かなかった。
理由は、メグたんが刑事だから。
ラキちゃんの洗脳は、公安に所属するケンゴの仕事の一部。
ラキちゃんが洗脳されている状態で正義が勝たないデスゲームに参加することも、刑事としてのラキちゃんの仕事。
刑事のメグたんは、同僚の仕事の邪魔をしない。
「ツカサは、生涯、役者か?」
俺がツカサにも話をふると。
「俺は、一生、役者だよ。」
とツカサ。
「ツカサは、タケハヤプロジェクトに所属して、正義が勝たないデスゲームという舞台に立つ役者か?」
「ショウタは、俺のことがよく分かっているね。
俺のファンになったというなら、ファンサしようか?
特別だよ。」
とツカサ。
ツカサは、ひらひらと手を降ってにこやかな笑顔を見せてくる。
男の笑顔を隣の席から見せられても。
「俺は、ツカサの生き様を認めているだけで、ツカサのファンではない。
よって、俺に、ツカサからのファンサはいらない。」
ファンサをされるなら。
ツカサよりメグたんにされたいと思っていることは、口に出さないでおく。
俺の心の声はメグたんに聞かれない方が、今後の俺のためになる。
メグたんの不興を買うことは、俺に利がない。
それを理解している俺は、欲望を口に出すことはしない。
分かってはいる、が。
正義が勝たないデスゲームを脱出するまで、一度くらいなら、メグたんに微笑まれてもいいような気はする。
俺は隣に座るメグたんを見てみる。
ツカサのように手を振るどころか、俺の視線をうるさがりもしないメグたん。
メグたんのファンサは無理か。
俺は、正面のケンゴへ顔を戻す。
「そろそろ、俺のこれから先の人生の話をするか?」
俺は、ケンゴの答えを待った。
ケンゴがメグたんに話をふって、ケンゴと俺との会話にメグたんが加わったときに、ケンゴの腹は決まった、と俺は予想している。
俺が正義が勝たないデスゲームを脱出するための準備はととのえられている。
だが、俺はまだ正義が勝たないデスゲームを脱出していない。
現実になるまで、予想は、夢想と大差ない。
油断はしない。
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