正義が勝たないデスゲームから脱出しよう。【R15】

かざみはら まなか

文字の大きさ
389 / 517

389.名コンビになる前に、ハコとラキは解散したよとケンゴは言った。メグたんは現役の刑事?俺は、一生役者だよとツカサは言う。ならば、俺は?

しおりを挟む
「ラキちゃんは、ハコさんといることで何を期待されていた?」

「ハコを刑事でいさせること。

ハコは刑事として才能を活かそうとしても、ハコ自身の気質のせいで、刑事としてのキャリアを積むことが難しくなっていたわ。」
とメグたん。

「ラキちゃんは、自身に与えられた役割を伝えられていたか?」

「いいや。ラキの指導役としてハコを配置しただけだよ。」
とケンゴ。

「ハコさんが亡くなったために。

ラキちゃんに期待されていた役割は、変わったということか。」

「変わってはいない。

二つが一つに減っただけだ。

現役の刑事として正義が勝たないデスゲームに参加するという役割だけになった。」
とケンゴ。

「ハコさんの再教育が成功したら、ラキちゃんは正義が勝たないデスゲームに参加しなかったか?」

「ハコの再教育がうまくいっていたら、正義が勝たないデスゲームにラキが参加する必然性はなくなっていた。」
とメグたん。

「名コンビになる前に、ハコとラキは解散したよ。」
とケンゴ。

ケンゴからすれば、そういう認識か。

ケンゴとラキちゃんが過ごした時間は、俺とラキちゃんが一緒の空間にいた時間よりも遥かに長い。

ラキちゃんと交わした言葉の数。

ラキちゃんの生活で果たした役割。

どれをとっても、ケンゴの方が俺よりも多い。

それなのに。

ケンゴのラキちゃんへの思い入れは、俺のラキちゃんへの思い入れよりも、深くない。

ラキちゃんが最後の最後に縋ったのは、俺でなくケンゴなのに。

ラキちゃんのことを一人の女性として考えている俺よりも。

ラキちゃんのことを仕事で面倒見ていたというスタンスのケンゴの方が、ラキちゃんの心をとらえていた。

ラキちゃんがケンゴを選び俺を選ばなかったのは、過ごした時間の差か?

ケンゴは、ラキちゃんの今際のときに現れない男なのに。

「ラキちゃんが生き残りに支障をきたしたときは、助けたい。

そう思ってはいても。

俺は、ラキちゃんにとって、助けられたい相手ではなかった。」

ラキちゃんといても。

ラキちゃんを見ていても。

俺は、元気なラキちゃんが洗脳されている可能性に気付いていなかった。

洗脳に気付いていたとしても、俺は、ラキちゃんの洗脳を解くほどラキちゃんに近寄れなかった。

「刑事は、私の天職。」
とメグたん。

突然、なんだ?

「ラキちゃんにとっても、刑事は天職だったのではないか?」

「刑事でいることと、刑事でいることにとらわれないでいることの境目を意識したときに、私は刑事として伸びたわ。」
とメグたん。

「伸びたというのは、刑事としての寿命がか?」

同期の刑事であるハコさんに捕まって、タケハヤプロジェクトに参加しているメグたんに確認するには、間抜けな質問だと思いながらも、俺は尋ねた。

「容疑者確保の数字。」
とメグたん。

「犯人を逮捕した、というメグたんの実績が増えたのか?」

「私単独ではなく、私を含む捜査チームの数字。」
とメグたん。

「メグたんは、犯人に逃げ隠れさせないほどの証拠を見つけることが得意になり、検挙に繋がる数字が増えていった、ということか?」

「隠れている容疑者を探し出すことにかけて、的中率は格段に上がったわよ。」
とメグたん。

メグたんの話しぶりから得た確信は、メグたんにぶつけて確認する。

「メグたんは、今も現役の刑事か?」

「どこにいても、何をしていても。私は刑事よ。」
とメグたん。

メグたんは、元刑事ではない。

メグたんは、ケンゴがラキちゃんを洗脳した効果や意味を知っていた。

知っていても、ラキちゃんの洗脳を解かなかった。

理由は、メグたんが刑事だから。

ラキちゃんの洗脳は、公安に所属するケンゴの仕事の一部。

ラキちゃんが洗脳されている状態で正義が勝たないデスゲームに参加することも、刑事としてのラキちゃんの仕事。

刑事のメグたんは、同僚の仕事の邪魔をしない。

「ツカサは、生涯、役者か?」

俺がツカサにも話をふると。

「俺は、一生、役者だよ。」
とツカサ。

「ツカサは、タケハヤプロジェクトに所属して、正義が勝たないデスゲームという舞台に立つ役者か?」

「ショウタは、俺のことがよく分かっているね。

俺のファンになったというなら、ファンサしようか?

特別だよ。」
とツカサ。

ツカサは、ひらひらと手を降ってにこやかな笑顔を見せてくる。

男の笑顔を隣の席から見せられても。

「俺は、ツカサの生き様を認めているだけで、ツカサのファンではない。

よって、俺に、ツカサからのファンサはいらない。」

ファンサをされるなら。

ツカサよりメグたんにされたいと思っていることは、口に出さないでおく。

俺の心の声はメグたんに聞かれない方が、今後の俺のためになる。

メグたんの不興を買うことは、俺に利がない。

それを理解している俺は、欲望を口に出すことはしない。

分かってはいる、が。

正義が勝たないデスゲームを脱出するまで、一度くらいなら、メグたんに微笑まれてもいいような気はする。

俺は隣に座るメグたんを見てみる。

ツカサのように手を振るどころか、俺の視線をうるさがりもしないメグたん。

メグたんのファンサは無理か。

俺は、正面のケンゴへ顔を戻す。

「そろそろ、俺のこれから先の人生の話をするか?」

俺は、ケンゴの答えを待った。

ケンゴがメグたんに話をふって、ケンゴと俺との会話にメグたんが加わったときに、ケンゴの腹は決まった、と俺は予想している。

俺が正義が勝たないデスゲームを脱出するための準備はととのえられている。

だが、俺はまだ正義が勝たないデスゲームを脱出していない。

現実になるまで、予想は、夢想と大差ない。

油断はしない。

悲観的にもならない。

突きつけられた現実の中で、俺は生き延びる。

俺がやりたいことをやるために。

俺は正義が勝たないデスゲームの外の世界へ行く。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...