正義が勝たないデスゲームから脱出しよう。【R15】

かざみはら まなか

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390.公安にマークされて生きていくことを自覚する人生の分岐点。俺のための慣らしプログラム。北白川サナには、ひそかな計画があった?

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「新人くんのこれからの話をしよう。」
とケンゴ。

俺は、足に入れていた力を抜く。

俺はやり遂げた。

「さすがに、公安にマークされて生きていく人生は考慮してこなかった。」

今なら、軽口も叩ける。

「怖くない、怖くない。

これからも正義が勝たないデスゲームに参加した新人くんでいたら、誰かの手を煩わせたりする未来はこないよ。」
とケンゴ。

軽い調子で話すとケンゴは笑った。

正義が勝たないデスゲームに参加する前の俺に戻ったら。

誰かの手にかかる未来がくる、と暗に言っていないか?

「佐竹ハヤト亡き後、正義が勝たないデスゲームに俺を参加させたのは。

正義が勝たないデスゲームを俺に託したい佐竹ハヤトの遺志か?」

公安の方針か、とは聞かない。

「正義が勝たないデスゲームのアンケートの仕事は、佐竹ハヤトくんの遺志が正義が勝たないデスゲームを運用するAIに反映されて提示されたんだよ。」
とケンゴ。

「俺を釣るためにカスタマイズされた仕事だったか。」

佐竹ハヤトの作り上げたものだけのことはある。

「その後。

佐竹ハヤトくんの思惑とは別に、正義が勝たないデスゲーム運営であるAIは、新人くんという存在を消すと決定。

新人くんの正義が勝たないデスゲームへの参加を決定した。」
とケンゴ。

急変しすぎではないか、と考えて、ハッとした。

「正義が勝たないデスゲームを運用するAIが俺を消すと決定した理由は、俺がコメント入力の仕事を辞めると申し出たからか?」

ケンゴは、眉をわずかに動かした。

「正義が勝たないデスゲームを運用するAIが、正義が勝たないデスゲームに新人くんを参加させて消すと決定した時期が気になるかい?」
とケンゴ。

「何が俺の人生を変えることになったかは知っておく。」

「新人くんがコメント入力を辞めると連絡した直後だよ。」
とケンゴ。

餌に食らいついた俺が釣り針を外して逃げ出そうとしたから、釣り上げて生け簀へ放した、か。

俺は、正義が勝たないデスゲームからフェードアウトすることは、俺の人生にとっての最良の選択だと疑わなかった。

正義が勝たないデスゲームのコメント入力の仕事の話が俺の視界に入ったとき。

俺が人生の岐路に立ったのは、もっと前にあった。

俺の人生で、高報酬をうたう闇バイトに引っかかったと揶揄された意味を噛み締める瞬間があるとは考えもしなかった。

「佐竹ハヤトが作り上げたAIが、佐竹ハヤトが後継にと望んだ俺を消す決定をしたのは。

佐竹ハヤトが託そうとしていた俺の思考と行動が、佐竹ハヤトの遺した正義が勝たないデスゲームの存続を危うくするものになったと判断したからか。」

言葉にして出すと、ハッキリ見えてくるものがある。

「AIは、失望したりしないよ。」
とケンゴ。

「佐竹ハヤトが作り上げたAIも、佐竹ハヤトも、俺に失望したりはしない。」

AIに感情はない。

佐竹ハヤトは、その友達思いの性格から、俺にがっかりなどしない。

一人、胸の中で残念に思うだけ。

俺の友達の佐竹ハヤトは、そういう奥ゆかしいやつだった。

俺は、そんな友達を失ったんだ。

永遠に。

「佐竹ハヤトの偉業と意向を知ろうとするどころか、金払いのいい仕事で金だけもらって何も知らないままでいた俺は。

ハコさんの水死シーンに怖気付いて、正義が勝たないデスゲームからフェードアウトを決めた。」

「コメント入力という正義が勝たないデスゲームに関わった時点で。

新人くんが、正義が勝たないデスゲームをフェードアウトする未来はなかったよ。」
とケンゴ。

俺の見通しの甘さは、人生の分岐点を見誤ったことから始まった。

俺が人生の分岐点を見誤ったのは。

高収入を掲げる怪しげなうたい文句の仕事と、俺自身が結びつかなかったから。

俺は、俺の人生に闇バイトが入ってくる予想をしていなかった。

「正義が勝たないデスゲームで、ハコさんの水死の次に、上階から飛び降りた男の場面があった。

俺がコメント入力を辞めると連絡せずに視聴を続けていたら。

正義が勝たないデスゲームへの参加ではなく、正義が勝たないデスゲームの裏話を知る会が始まっていたか?」

「徐々に慣らすプログラムだったんだよ。」
とケンゴ。

「慣らすプログラムが始まったのは、ハコさんの水死からか。」

「明らかな水死のシーンは、新人くんの意識が切り替わる刺激になった。」
とケンゴ。

「衝撃度合いが慣らしではなかった。慣らす気などあったか?」

「見てはならぬものを最後まで見てしまった新人くんが、思い切り良く振り切る想定はなかったんだよ。」
とケンゴ。

「想定がなかったわりに、俺の捕獲まで早くなかったか?」

「このとき、正義が勝たないデスゲーム運営であるAIは、新人くんの行動や思考を学習し直し、予測される行動パターンの修正を行っている。

正義が勝たないデスゲームを運用するAIは、学習の成果を迅速に発揮した。」
とケンゴ。

「佐竹ハヤトは、優秀なAIを遺した。」

「正義が勝たないデスゲーム運営であるAIの的確な指示で、正義が勝たないデスゲームへの新人くんの到着は、実にスムーズだったよ。」
とケンゴ。

「俺を誘拐して正義が勝たないデスゲームの会場に突っ込むまでの手口が見事すぎるのは、これまでも同様にやってきたからか?」

「新人くんだからだよ。」
とケンゴ。

「俺は、佐竹ハヤトの友達という特別枠を考慮されて、正義が勝たないデスゲーム会場へスピード配達されたのか?」

「佐竹ハヤトくんは、開拓者。

新人くんは、期待の星。」
とケンゴ。

「俺の持ち上げ方がおかしくないか?」

「タケハヤプロジェクトの関係者と、正義が勝たないデスゲームの関係者で。

新人くんの存在を認識していれば、新人くんを逃すことはしないよ。」
とケンゴ。

「俺を利用しようとしていたのは、支援団体と、公安と、タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族。

その三つ以外にもあるか?」

「その三つが、それぞれ、一枚岩とは限らないよ。」
とケンゴ。

「それぞれ、内部で何を争っている?」

「新人くんが正義が勝たないデスゲームに参加する前も、参加してからも。

どの立場の誰が、新人くんを絡め取るか、についてだよ。」
とケンゴ。

三つ巴で俺の争奪戦になっていたという予想は、もっと複雑だったか。

「俺の争奪戦が、一つの目玉であったことには変わりがない。

サバイバルゲームでの北白川サナの死は、北白川サナが支援団体に身売りしたから、だけではない。違うか?」

「どうしてそういう考えに至ったかを含めて、新人くんが考えていることは話してみるといいよ。」
とケンゴ。

「北白川サナは、支援団体の庇護を受けながらも、タケハヤプロジェクトを離脱した学生と家族の意向を聞いて動いているように見せていた。」

「支援団体の庇護下に入って、サナは装うことや欺くことを身につけたよ。」
とケンゴ。

「北白川サナが生きていると。

タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族が、北白川サナを知った俺に、いらん期待を寄せてくる。

だからか?」

「新人くんは、タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族の野望に与しない生き方をするといいよ。」
とケンゴ。

「タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族が野望を託していた北白川サナが亡くなることは。

タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族の期待を打ち砕いたか。」

「タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族には、これを機に、夢に踊らされずに、地に足をつけた生き方を徹底させるよ。」
とケンゴ。

「タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族には、正義が勝たないデスゲームを運用するAIに使われて生きていく未来のみを用意してある、ということか。」

「支援団体と、タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族の両方から、新人くんを取り込むように言われていたサナの野望は、別のところにあった。」
とケンゴ。

北白川サナの野望か。

「支援団体もタケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族も、北白川サナに対して良い扱いをしてこなかったのに、図々しくないか?」

「支援団体も、タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族も。

新人くんを取り込めとサナに指示していたよ。」
とケンゴ。

「俺と北白川サナは、正義が勝たないデスゲームに参加するまで顔見知りでさえなかったが?」

「佐竹ハヤトくんには程遠くても、自分達よりは佐竹ハヤトくんに近いサナなら、佐竹ハヤトくんが後継に指名した新人くんを自陣営に引っ張ってこられる。

そう考えた人がたくさんいたんだよ。」

「北白川サナを俺に近付けたい思惑が、北白川サナの正義が勝たないデスゲームへの参加を余儀なくしたか。」

「サナの周りの人達は、サナの外堀を埋めた。

その人達の思惑を利用したから、正義が勝たないデスゲームにサナを参加させることがスムーズに運んだんだよ。」
とケンゴ。

「正義が勝たないデスゲームを運用するAIが、その人達の思惑を利用したという解釈で合っているか?」

「合っているよ。」
とケンゴ。

「北白川サナは、周りの人達の思惑を知って、正義が勝たないデスゲームに参加したか?」

「サナの気持ちはもう知りようがないよ。」
とケンゴ。

「北白川サナは、自分の本心を明かさなかったか。」

「サナが何を考えて、何をしようとしているかについて。

サナを直接知る人は、誰も知ろうとはしなかった。」
とケンゴ。

北白川サナは、周りの人達に興味を持たれる対象にならなかった。

最後まで、使われる対象として見られ続け、そのように扱われた。

俺もそうだ。

北白川サナに助けられたことに感謝はしたが、北白川サナを生かすための選択はしなかった。

「北白川サナは、独自に何かを始めようとしていたということか?

一人で。

誰にも知らせずに。」

「二人でだよ。」
とケンゴ。

「もう一人は、誰だ?

北白川サナと仲が良い誰かがいたのか?」

「もう一人は、新人くんだよ。」
とケンゴ。

「俺か?」

「新人くんとサナ。一人足す一人は、二人。

サナは、新人くんと正義が勝たないデスゲームを脱出後に、新人くんと始める計画を立ててから、正義が勝たないデスゲームに参加した。」
とケンゴ。

「北白川サナの立てた計画とは、何かの事業計画か?」

「新人くんとサナの名前が残る計画だよ。」
とケンゴ。

「ケンゴが把握しているということは、正義が勝たないデスゲームを脱出したら、公安関係者の伝手で確認が可能か?

可能なら、俺が確認する。」
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