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第3章 少女のSOSは、依頼となり、探偵を動かす。
44.君下が甥姪に話していない君下自身の話その2。義兄は姉の夫で君下には一回り以上年上の身内だから、許されていると思っていたことが?
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『はい。でも、俺はまだ大学生で、卒業までは半年以上あります。
卒業後に、お義兄さんの会社で働くのは、本当に楽しみにしていますけれど、在学中は大学生を満喫したいと思っています。』
義兄が君下を見る目からは、どんどん温度がなくなっていくように君下は感じた。
当たり前のことを話しているだけなのに、どうしてこんなに空気を冷たくするんだろう、と君下は、義兄に対して苛立ってくる。
君下は誠心誠意説明しているのに。
義兄は、君下に説明することなく、君下の都合も聞かないまま、あれしろこれしろと一方的に伝えてくる。
聞く気がない人には、はっきりと伝えて正解だと君下は思っていた。
多少気まずくなっても、義兄の妻である君下の姉よりも年下の君下に、あからさまな態度をとることはないだろう。
義兄と自分は感情的になったがゆえに揉めているだけだと、君下は思っていた。
義兄は、しっかりした大人だ。
落ち着いたら、今日口走ったことを謝罪してくるだろう。
そのときには、水に流してあげよう、と君下は考えていた。
しかし。
次に。
君下は、予想だにしていない言葉を聞くことになった。
『君下くんの思い込みを訂正していこう。
君下くんが卒業後に働く予定の職場は、私の会社ではない。
我が子が暮らしている家だ。』
義兄の台詞を聞いた君下は、語気を荒げて言い返していた。
『卒業後は、お義兄さんの会社で働くことになっていたじゃないですか?
姉のことがあったからといって、最初の条件は変えないでください。』
君下の抗議を聞いた義兄は、君下くんと話が通じない原因がようやく分かったよ、と言った。
『君下くん、私が出した条件を変えて解釈したのは私ではないよ。
君下くんがご両親と私に学費を支援してほしいと申し入れてきたとき。
私は、卒業後は、うちで働くことを前提にしている支援だと説明し、君下くんとご両親が同意したなら申し入れるようにと伝えている。
君下くんは、ご両親と一緒に、是非にとその場で申し込んできた。
うちは、家だ。
うちという単語を会社と訳すのは、誤訳だよ、君下くん。』
義兄は、終始冷静で、諭すように君下に話してくる。
『就職先の話が出ているときに、お義兄さんがうち、と言ったんだから、うちの会社だという意味以外の解釈はしませんでした。
勘違いしたのは、俺かもしれないけれど、勘違いさせたのはお義兄さんじゃないですか。』
義兄の余裕のある態度に腹が立った君下は、義兄に負けずに言い返した。
『私は、君下くんと君下くんのご両親を前にして、私の仕事の話をしたことなどないよ。
ましてや、うち、というような言葉で、君下くんに私の仕事について語ったことなど一度もない。
私自身についても、君下くんと君下くんのご両親に話すことはなかった。
君下くんが、私についての解釈を垂れるのは、君下くんの一方的な願望からくるもの以外に何を根拠にしている?』
義兄の言葉と義兄の漂わす空気が急に硬化した。
『それは。根拠は、ありません。
誰かから聞いたくらいの話で、お義兄さんを分かった気になって話しました。
すみません。
凄く大きなことをしている会社の経営者だとは聞いていて、何をしているかについては誰も詳しくなかったから、知りません。』
君下の怒りは萎み、焦りがこみあげてきた。
君下は、義兄を怒らせたと思った。
君下は、義兄と喧嘩をしようとしたわけじゃない。
義兄と険悪になりたいわけじゃないのだ。
口から出してしまった言葉は戻らないけれど、義兄の怒りをとく言葉を探して言わないと、と君下は焦った。
義兄が大きいことをしている会社の経営者というのも、誰かから直接聞いたわけじゃない。
研修先での研修について、大学で友達と話したときに、一般的には名前の知られていない優良企業ってやつかも、という話で友達と盛り上がっただけにすぎない。
どれもこれも、君下の話には確証がない。
嘘やでまかせを口にしたつもりはない。
でも、嘘やでまかせで自分の主張を正当化しようとした、と指摘されたら、そんなつもりはありませんでした、としか君下は言えない。
このとき、初めて。
君下は、君下な義兄に対して持っている感覚と、義兄が君下にとっている姿勢が異なることに気付いた。
君下は、義兄を姉の結婚した人だと認識している。
君下にとって、義兄は身内だ。
しかし。
今、君下と会話している義兄にとって、君下は、妻の弟という枠だけで見ていない気がする。
義兄が君下に示す姿勢は、バイト先の店長が、無断欠勤を繰り返したバイトに注意するときの姿勢に似ている、と君下は思った。
もしも、義兄が、君下のことを身内としてとらえていないなら?
身内だから許されると思って君下がしてきたことは?
『私の支援で、大学生をしている以外に君下くんは、何をしてきた?』
義兄は、焦っている君下に容赦なく尋ねてくる。
『大学生を楽しんでいます。』
卒業後に、お義兄さんの会社で働くのは、本当に楽しみにしていますけれど、在学中は大学生を満喫したいと思っています。』
義兄が君下を見る目からは、どんどん温度がなくなっていくように君下は感じた。
当たり前のことを話しているだけなのに、どうしてこんなに空気を冷たくするんだろう、と君下は、義兄に対して苛立ってくる。
君下は誠心誠意説明しているのに。
義兄は、君下に説明することなく、君下の都合も聞かないまま、あれしろこれしろと一方的に伝えてくる。
聞く気がない人には、はっきりと伝えて正解だと君下は思っていた。
多少気まずくなっても、義兄の妻である君下の姉よりも年下の君下に、あからさまな態度をとることはないだろう。
義兄と自分は感情的になったがゆえに揉めているだけだと、君下は思っていた。
義兄は、しっかりした大人だ。
落ち着いたら、今日口走ったことを謝罪してくるだろう。
そのときには、水に流してあげよう、と君下は考えていた。
しかし。
次に。
君下は、予想だにしていない言葉を聞くことになった。
『君下くんの思い込みを訂正していこう。
君下くんが卒業後に働く予定の職場は、私の会社ではない。
我が子が暮らしている家だ。』
義兄の台詞を聞いた君下は、語気を荒げて言い返していた。
『卒業後は、お義兄さんの会社で働くことになっていたじゃないですか?
姉のことがあったからといって、最初の条件は変えないでください。』
君下の抗議を聞いた義兄は、君下くんと話が通じない原因がようやく分かったよ、と言った。
『君下くん、私が出した条件を変えて解釈したのは私ではないよ。
君下くんがご両親と私に学費を支援してほしいと申し入れてきたとき。
私は、卒業後は、うちで働くことを前提にしている支援だと説明し、君下くんとご両親が同意したなら申し入れるようにと伝えている。
君下くんは、ご両親と一緒に、是非にとその場で申し込んできた。
うちは、家だ。
うちという単語を会社と訳すのは、誤訳だよ、君下くん。』
義兄は、終始冷静で、諭すように君下に話してくる。
『就職先の話が出ているときに、お義兄さんがうち、と言ったんだから、うちの会社だという意味以外の解釈はしませんでした。
勘違いしたのは、俺かもしれないけれど、勘違いさせたのはお義兄さんじゃないですか。』
義兄の余裕のある態度に腹が立った君下は、義兄に負けずに言い返した。
『私は、君下くんと君下くんのご両親を前にして、私の仕事の話をしたことなどないよ。
ましてや、うち、というような言葉で、君下くんに私の仕事について語ったことなど一度もない。
私自身についても、君下くんと君下くんのご両親に話すことはなかった。
君下くんが、私についての解釈を垂れるのは、君下くんの一方的な願望からくるもの以外に何を根拠にしている?』
義兄の言葉と義兄の漂わす空気が急に硬化した。
『それは。根拠は、ありません。
誰かから聞いたくらいの話で、お義兄さんを分かった気になって話しました。
すみません。
凄く大きなことをしている会社の経営者だとは聞いていて、何をしているかについては誰も詳しくなかったから、知りません。』
君下の怒りは萎み、焦りがこみあげてきた。
君下は、義兄を怒らせたと思った。
君下は、義兄と喧嘩をしようとしたわけじゃない。
義兄と険悪になりたいわけじゃないのだ。
口から出してしまった言葉は戻らないけれど、義兄の怒りをとく言葉を探して言わないと、と君下は焦った。
義兄が大きいことをしている会社の経営者というのも、誰かから直接聞いたわけじゃない。
研修先での研修について、大学で友達と話したときに、一般的には名前の知られていない優良企業ってやつかも、という話で友達と盛り上がっただけにすぎない。
どれもこれも、君下の話には確証がない。
嘘やでまかせを口にしたつもりはない。
でも、嘘やでまかせで自分の主張を正当化しようとした、と指摘されたら、そんなつもりはありませんでした、としか君下は言えない。
このとき、初めて。
君下は、君下な義兄に対して持っている感覚と、義兄が君下にとっている姿勢が異なることに気付いた。
君下は、義兄を姉の結婚した人だと認識している。
君下にとって、義兄は身内だ。
しかし。
今、君下と会話している義兄にとって、君下は、妻の弟という枠だけで見ていない気がする。
義兄が君下に示す姿勢は、バイト先の店長が、無断欠勤を繰り返したバイトに注意するときの姿勢に似ている、と君下は思った。
もしも、義兄が、君下のことを身内としてとらえていないなら?
身内だから許されると思って君下がしてきたことは?
『私の支援で、大学生をしている以外に君下くんは、何をしてきた?』
義兄は、焦っている君下に容赦なく尋ねてくる。
『大学生を楽しんでいます。』
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