言霊の手記

かざみはら まなか

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第2章 憶測で語らない。可能性は否定しない。

17.何が、牡丹の庭中学校にまつわる情報の隠蔽を確実にしたか?

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活発な意見交換から一転して、牡丹の庭中学校の問題に腹をすえて向き合う奈美、すい透雲とおもの三人。

「手記を書いたであろう牡丹の庭中学校の中学生は。

SOSの発信をするときに、SNSを使って暴露する方法を取らなかった。

マシュマロやメールで、暴露系配信者へ垂れ込みもしていない。」
すい

「牡丹の庭中学校についての噂は、ネット上にも世間にも全く出回っていない?」
と奈美。

「全く出回っていない。」
と萃。

「鍵垢で出した情報が流出ということもない?」
と奈美。

「牡丹の庭中学校で検索してヒットする情報は、中学校のホームページだけ。」
と萃。

「牡丹の庭の地域情報もヒットしない?」
と透雲。

「一件もヒットしない。」
と萃。

「このご時世に、三クラスが三学年あって、学校に関する情報を発信する生徒や保護者が一人もいないことがあるんだね。」
と透雲。

「発信していても、完全にクローズドのやり取りしかしていないことになる。」
と奈美。

「牡丹の庭中学校の情報が漏れ聞こえないのは、情報が漏れないように管理しているから?

家に押しかけてこられたり。

中学校に通うだけなのに付きまとわれたりして。

こんな酷いことをされているんだ、という話を黙っていられるもん?」
と透雲。

「話す相手を選ばないと、もっと酷いことになると理解していたら、口は開かない。」
と萃。

「話す相手を選んだ結果、話す相手が一人も残らなかった、ということも考えられるか。」
と透雲。

「何も怖いものがない人。

実生活に直結する暴露をしたら、暴露した自分も火傷する恐れがあると考えていない人。

追い詰められるなどして、暴露以外の選択肢がないと思った人。

そういう人でなければ。

未来をさらに生きにくいものにしたくないという考えがある人は。

暴露した後の人生を考えて暴露を踏みとどまる。」
と萃。

「牡丹の庭中学校に通う生徒と保護者が、自分から外に内情を漏らさないようにしている?」
と奈美。

「情報を漏らさないようにする理由の一つは、土地の価格のさらなる下落を避けるため。

悪評がたてばたつほどに、売値を下げても買い手が現れなくなる。」
と萃。

「牡丹の庭中学校の校区に土地を買った住人は、牡丹の庭中学校の校区の土地を手放して、他へ移ることを希望しているから、牡丹の庭中学校の校区の土地に悪評をたてたくない?」
と奈美。

「土地を売って出ていきたくとも。

ローンを組んでいる買い値の何分の一かでしか家が売れなかったら?」
と萃。

「ローンは完済できない上、引っ越し先の家の費用を追加で用意しないといけなくなる。」
と透雲。

「今より土地の金額を下げるような噂を流すことは、牡丹の庭中学校に通う生徒と保護者が、牡丹の庭中学校の校区から出ていくことをより難しくする。」
と奈美。

「牡丹の庭中学校の生徒と保護者側の情報管理が、あまりに徹底していて感心する。」
と透雲。

「牡丹の庭中学校の情報を外部へ漏らさない理由の一つは。

牡丹の庭中学校の校区の土地を最低でも買い値近くまであげてから売り払いたいから。」
と萃。

「そういう事情がありながら、便箋に書かれた手記は、私の手元に届いた。」
と奈美。

「中学生にもなれば、売り払わないと、引っ越し先を確保するお金が用立て出来ないという家庭の事情も理解できる。」
と透雲。

「手記をしたためた女子中学生は、家庭の事情を理解していながら、手記という形で、牡丹の庭中学校の情報の一端を牡丹の庭中学校の校区外へ出した。」
と奈美。

「手記をしたためた女子中学生は、家庭の事情を踏まえた上で、牡丹の庭中学校の校区外の女子中学生に、牡丹の庭中学校の現状に対する興味をひこうとした。」
と透雲。

「家庭の事情は、家庭の事情。

牡丹の庭中学校に通う中学生は、牡丹の庭中学校の当事者。」
と萃。

「手記をしたためた牡丹の庭中学校の女子中学生は、家庭の事情を置き去りにしてでも、助けを求めないといけない状況に陥っている?」
と透雲。

「牡丹の庭中学校には、情報管理を徹底しないといけない何かがまだある?

中学校だけじゃなくて、生徒と保護者が沈黙を保たないといけない事情がまだある?」
と奈美。

「牡丹の庭中学校のホームページの学校紹介をあけて。

生徒が写っている写真を見比べてみて。」
と萃は、指で画面を指し示す。
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