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第3章 少女のSOSは、依頼となり、探偵を動かす。
78.牡丹の庭中学校の校区の団地にいると聞いている、大怪我した男児は?
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奈美と萃は、団地の敷地の外から団地を見ている。
団地は、全部で五棟。
カタカナのコの字型で建っている。
「入居希望者がいないのは、駅から離れた場所に戸建てではなく、団地だったから、というのがよく分かった。」
奈美は、眼下に広がる戸建てと目の前の団地を見比べながら、萃の調査レポートを思い出して納得している。
「団地は、戸建てより、一段高い場所に建てている。」
萃は、牡丹の庭中学校の校区に入ったことで、資料以上の情報を得られたと思っている。
「団地の敷地に出入りするためには、坂を上り下りしないといけない。」
「家に帰るのも、家から出るのも、足腰が弱くなってくると、住むのが不便になる立地。」
「子育て世帯が、子育てのために入居し、子育てを終えたら出ていくサイクルを作ろうとして、失敗した?」
「入居年数に制限がなく、入れ替わりが入居者次第だった。」
奈美と萃は、互いに納得して、次の目的の男児探しをすることにした。
「怪我をした男児は、団地に運び込まれた。」
「四の三の棟の四階、405号室。」
「該当する部屋は、カーテンがかかっていない。」
「外から見る限り、家具らしき影は見えない。」
「電気もついていない。」
「窓から人は見える?」
「人影はない。」
「床に寝かされている可能性もあるけれど。」
「自力で歩けない小学生男児二人を四階まで運ぶ労力をかける?」
「野ざらしにしてそうだと私は思った。」
「私も。」
「部屋に運ぶとは聞いただけで、運び込む瞬間を確認していない、となると。」
「普段から使われている様子がない部屋に、大怪我している怪我人をわざわざ運ぶ?」
「部屋が血で汚れたら、入居者がくる前に清掃することになる。」
「団地に住んでいるのは、手間とお金を団地にかけようとする人達?」
「団地への入居者は、お金をもらうことには貪欲。」
「汚すことに何も感じなければ、使うか。」
奈美は、うーんと考えた。
「そもそも、賃貸なのに、誰も借りていない部屋を使える?」
「鍵が壊れて出入り自由になっている?」
奈美と萃は、同時に閃いた。
「四階の部屋にいる、というのはフェイク情報?」
「ありえる。」
「男児の怪我は、自分で四階まで上がれる怪我には聞こえなかった。」
「足は怪我しているだろうけれど、怪我は足だけじゃないと思う。」
奈美と萃は、楓と明佳から、男児二人の怪我の様子を聞いている。
「もう死んでいない?」
「既に絞められていても、おかしくはない。」
「使い道がなくなって、生かしておくのが手間だと判断された鉄砲玉の面倒を最後までみてくれる親分がいなかったら。」
「始末した方が早い。」
奈美と萃は、物騒な出来事が起きていないかを確認することにした。
「スケートボードの男児二人の幽霊は、まだいない。」
奥歯に物が挟まった言い方をする奈美。
「二人に限定していない、ということは、二人以外はいる?」
萃の質問に、奈美はうんと頷く。
「団地の住人の幽霊?」
「団地の住人だけに限らず、誰でも自由に団地の敷地内を出入り出来る。
亡くなった現場は団地でも、団地に住んでいたかどうかは、断定し辛い。」
「生前、団地に住んでいないことが明らかな幽霊もいる?」
奈美がどのように幽霊を区別しているのかが気になった萃は、奈美に確認してみた。
「ベランダの三階から四階に移ろうとして、落ちていくのを繰り返している幽霊は、鍵を忘れた住人と泥棒のどっちだと思う?」
奈美は、判断に迷っている。
萃も判断に迷った。
「年齢は?」
「五十代くらい。」
「幽霊を顔写真で割り出せないのが残念。」
「階段を上っては、階段の手すりを乗り越えるを繰り返す幽霊は、二十代前半でスーツ着ている。」
「可能性としては、他所から飛び降りに来た人か、団地の元住人か。」
今のところ、と奈美は言った。
「スケートボードに乗っていた男児の幽霊は見当たらない。
二人は、まだ生きている。」
それなら、と萃は言う。
「息があるうちに探す。」
奈美は、息があるうちに、という萃の台詞に首を傾げた。
「息があれば探せるという意味?」
今度は、奈美が萃に確認する。
「呼吸すると、空気が動く。」
「納得。亡くなっていたら、息はしない。」
萃は、明らかに入居者がいなさそうな部屋の空気の流れを風を使って調べていく。
うん?
「建物の中では死にかけていない。」
萃は、風の中に引っかかりを覚えて、引っかかりの心当たりを探す。
「どこにいる?」
「外。」
大怪我した男児を回収して、外にいさせる。
手当てをするためだとは奈美と萃は考えなかった。
「建物の中にいないなら、野ざらし?」
「弱るに任せて息を引き取らせようとしている?」
楓と明佳から聞いた怪我の状態は、大怪我であって、重体ではなかった。
「放置したからといって、弱ってすぐに死ぬような怪我じゃない、となると。」
「追い打ちをかけて、弱らせた?」
「目撃者がいなくなった後に、失敗への懲罰で?」
団地は、全部で五棟。
カタカナのコの字型で建っている。
「入居希望者がいないのは、駅から離れた場所に戸建てではなく、団地だったから、というのがよく分かった。」
奈美は、眼下に広がる戸建てと目の前の団地を見比べながら、萃の調査レポートを思い出して納得している。
「団地は、戸建てより、一段高い場所に建てている。」
萃は、牡丹の庭中学校の校区に入ったことで、資料以上の情報を得られたと思っている。
「団地の敷地に出入りするためには、坂を上り下りしないといけない。」
「家に帰るのも、家から出るのも、足腰が弱くなってくると、住むのが不便になる立地。」
「子育て世帯が、子育てのために入居し、子育てを終えたら出ていくサイクルを作ろうとして、失敗した?」
「入居年数に制限がなく、入れ替わりが入居者次第だった。」
奈美と萃は、互いに納得して、次の目的の男児探しをすることにした。
「怪我をした男児は、団地に運び込まれた。」
「四の三の棟の四階、405号室。」
「該当する部屋は、カーテンがかかっていない。」
「外から見る限り、家具らしき影は見えない。」
「電気もついていない。」
「窓から人は見える?」
「人影はない。」
「床に寝かされている可能性もあるけれど。」
「自力で歩けない小学生男児二人を四階まで運ぶ労力をかける?」
「野ざらしにしてそうだと私は思った。」
「私も。」
「部屋に運ぶとは聞いただけで、運び込む瞬間を確認していない、となると。」
「普段から使われている様子がない部屋に、大怪我している怪我人をわざわざ運ぶ?」
「部屋が血で汚れたら、入居者がくる前に清掃することになる。」
「団地に住んでいるのは、手間とお金を団地にかけようとする人達?」
「団地への入居者は、お金をもらうことには貪欲。」
「汚すことに何も感じなければ、使うか。」
奈美は、うーんと考えた。
「そもそも、賃貸なのに、誰も借りていない部屋を使える?」
「鍵が壊れて出入り自由になっている?」
奈美と萃は、同時に閃いた。
「四階の部屋にいる、というのはフェイク情報?」
「ありえる。」
「男児の怪我は、自分で四階まで上がれる怪我には聞こえなかった。」
「足は怪我しているだろうけれど、怪我は足だけじゃないと思う。」
奈美と萃は、楓と明佳から、男児二人の怪我の様子を聞いている。
「もう死んでいない?」
「既に絞められていても、おかしくはない。」
「使い道がなくなって、生かしておくのが手間だと判断された鉄砲玉の面倒を最後までみてくれる親分がいなかったら。」
「始末した方が早い。」
奈美と萃は、物騒な出来事が起きていないかを確認することにした。
「スケートボードの男児二人の幽霊は、まだいない。」
奥歯に物が挟まった言い方をする奈美。
「二人に限定していない、ということは、二人以外はいる?」
萃の質問に、奈美はうんと頷く。
「団地の住人の幽霊?」
「団地の住人だけに限らず、誰でも自由に団地の敷地内を出入り出来る。
亡くなった現場は団地でも、団地に住んでいたかどうかは、断定し辛い。」
「生前、団地に住んでいないことが明らかな幽霊もいる?」
奈美がどのように幽霊を区別しているのかが気になった萃は、奈美に確認してみた。
「ベランダの三階から四階に移ろうとして、落ちていくのを繰り返している幽霊は、鍵を忘れた住人と泥棒のどっちだと思う?」
奈美は、判断に迷っている。
萃も判断に迷った。
「年齢は?」
「五十代くらい。」
「幽霊を顔写真で割り出せないのが残念。」
「階段を上っては、階段の手すりを乗り越えるを繰り返す幽霊は、二十代前半でスーツ着ている。」
「可能性としては、他所から飛び降りに来た人か、団地の元住人か。」
今のところ、と奈美は言った。
「スケートボードに乗っていた男児の幽霊は見当たらない。
二人は、まだ生きている。」
それなら、と萃は言う。
「息があるうちに探す。」
奈美は、息があるうちに、という萃の台詞に首を傾げた。
「息があれば探せるという意味?」
今度は、奈美が萃に確認する。
「呼吸すると、空気が動く。」
「納得。亡くなっていたら、息はしない。」
萃は、明らかに入居者がいなさそうな部屋の空気の流れを風を使って調べていく。
うん?
「建物の中では死にかけていない。」
萃は、風の中に引っかかりを覚えて、引っかかりの心当たりを探す。
「どこにいる?」
「外。」
大怪我した男児を回収して、外にいさせる。
手当てをするためだとは奈美と萃は考えなかった。
「建物の中にいないなら、野ざらし?」
「弱るに任せて息を引き取らせようとしている?」
楓と明佳から聞いた怪我の状態は、大怪我であって、重体ではなかった。
「放置したからといって、弱ってすぐに死ぬような怪我じゃない、となると。」
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