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第3章 少女のSOSは、依頼となり、探偵を動かす。
105.コトリバコのテリトリー。コトリバコが、牡丹の庭中学校の女子生徒を対象とみなす条件は?
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「コトリバコの製作者は、コトリバコを製作することが目的だったのか。」
「目的があって、コトリバコを製作したのか。」
「目的があって、コトリバコを製作したのなら、どんな目的があったのか。」
奈美と萃は、コトリバコに縁がある幽霊が増えていく空間で話を続ける。
「コトリバコの効能は、女子供の死と言うけれど、実際の効果にはバラつきが出ている?」
萃は、悩ましげに頭を捻る。
「コトリバコの効能に疑問を持ったのは、どうして?」
奈美は、萃に尋ねる。
「牡丹の庭中学校がコトリバコのテリトリーなら。
牡丹の庭中学校の女子生徒の死亡時期は、入学後間もなくで揃っていてもおかしくない。
そう思ったんだけど、年度途中で転出する女子生徒もいる。」
「今日、引っ越し作業していた女子生徒は、不健康に見えなかった。」
奈美は、萃と一緒に見た、依頼人の隣家に住んでいた姉妹を思い起こす。
「入学後、健康なまま転出できるということは、コトリバコの呪いが効いていないのかと思ったんだけど。
コトリバコの効能が、不完全ということは、ある?
どういうことが起きているか、分かる?」
萃の疑問点に、奈美は合点がいった。
「今日引っ越しした女子生徒は、コトリバコのテリトリーに入っていれば、コトリバコの呪いの対象になるから、コトリバコのテリトリーにまだ入っていなかったんだと思う。」
「牡丹の庭中学校に入学した女子生徒が全員、コトリバコの対象になるわけじゃない?」
萃は、自身に思い込みがあったことに気付いた。
「牡丹の庭中学校に入学した女子生徒を対象にした実録スナッフムービーまでしていたのは、人の性。
コトリバコのせいではない。」
「人を痛めつけて駆逐することを楽しむのは、コトリバコではなく人。」
「コトリバコを製作したのも、人。
コトリバコに意思はない。」
増えていく幽霊に動じず話をしている奈美と萃。
「ろくでもないことをする人が牡丹の庭中学校を目印に集まった?」
「うん。配信で、治安の悪いコメントが集まって荒れるみたいなものだと思う。
悪いものは集まる。」
「配信している?」
「私はしていない。私の家族の話でもない。」
萃の知らない奈美の交友関係で、配信者か配信を見るのが好きな人がいるのだろう。
萃は、深く追求しなかった。
奈美と萃は、べったりする関係ではない。
「牡丹の庭中学校の真ん中の校舎の一階がコトリバコのテリトリーというのは、今に限った話じゃなかった?
コトリバコが製作されてから、ずっと?」
「うん。コトリバコのテリトリーは、牡丹の庭中学校の敷地の全域じゃなくて、三棟並ぶうちの真ん中の校舎の一階のみ。
三棟並ぶ校舎の真ん中の校舎の一階に入った女子生徒は、そのときからコトリバコの対象になる。」
奈美の断定に、萃は考えを組み立て直す。
「牡丹の庭中学校の女子生徒であっても、三棟並ぶ校舎の真ん中の校舎の一階に足を踏み入れなければ、コトリバコの対象にはならない。」
「コトリバコの対象になるきっかけが、真ん中の校舎の一階に立ち入ることなら。
中一の間は、真ん中の校舎の一階に足を踏み入れることがなかった?」
他学年の教室に、中一がわざわざ足を踏み入れることはないだろう、と奈美は思った。
「一階の教室は、二年生以降しか使わない教室?」
奈美の考えた可能性に気づいた萃は、奈美の考えた可能性を広げていく。
「一年生でも、男子生徒だけが使うとか?」
奈美と萃は、真ん中の校舎の一階の教室の並びを思い返してみる。
一年生の教室か、一年生以外の教室か、奈美と萃が区別できるものは教室にはなかった。
奈美も萃も、違法薬物の元になる草は探していたが、何年生の教室かまでは、気にしていなかった。
「牡丹の庭中学校の真ん中の校舎の一階にあって、他にないものというと、事務室?」
「扉の閉まっている事務室。」
奈美と萃は考えた。
「職員室は、鍵をかけていなかったけれど、校長室にはかけてあった。」
「事務室にも鍵がかかっていた。」
「事務室と校長室には、何かある。」
「鍵をかけておくものを保管している。」
「校長室の中は見れなかった。
栽培するのに適した環境かどうかというと、気温はともかく、水と土の管理が、校長室ではしにくいかもしれない。」
「校長室の広さで栽培するには、棚を何台も並べることになる。
精製に適する部屋は、あった?」
「一番最初の棟も真ん中の棟も、設備の整った教室はなかった。」
「校長室に鍵がかかっているのは、私達が探している草の栽培とは違う理由かもしれない。」
奈美の閃きを萃は、押し広げる。
「機密情報の保管とか?」
「うん。校長室だけじゃなく、事務室も、書類を保管する場所としてはおかしくない。」
「事務室は、生徒が中に入らない部屋。
生徒に見せない書類の保管に、事務室は適しているかもしれない。」
「職員室と校長室は、生徒が立ち入る機会がある。」
奈美と萃は、宙に浮いているコトリバコを見る。
「コトリバコが、真ん中の校舎の一階をテリトリーにするように設置した理由がつかめてきた気がする。」
「中一の間、牡丹の庭中学校の女子生徒は、事務室のある真ん中の校舎の一階には立ち入らないのかもしれない。」
「中二になった女子生徒は、事務室に立ち寄る機会があるのかもしれない。」
「女子生徒は、中二になるときに、女子生徒の人生を縛る内容の書類を事務室で書いているかもしれない。」
萃と意見を交わしていた奈美は、今のところ、かもしれない、という言い方でしめるしかない推測を一旦置いておくことにした。
「可能性は高い。
でも、私達の推測の域を出ない。
今の私達が、開かない扉を強行突破して書類を探すのは、早急過ぎる。」
事務室の扉をこじ開けるのは、今じゃない、と奈美は思う。
「私達の手札が揃ってから、畳み掛ける?」
「うん。」
「目的があって、コトリバコを製作したのか。」
「目的があって、コトリバコを製作したのなら、どんな目的があったのか。」
奈美と萃は、コトリバコに縁がある幽霊が増えていく空間で話を続ける。
「コトリバコの効能は、女子供の死と言うけれど、実際の効果にはバラつきが出ている?」
萃は、悩ましげに頭を捻る。
「コトリバコの効能に疑問を持ったのは、どうして?」
奈美は、萃に尋ねる。
「牡丹の庭中学校がコトリバコのテリトリーなら。
牡丹の庭中学校の女子生徒の死亡時期は、入学後間もなくで揃っていてもおかしくない。
そう思ったんだけど、年度途中で転出する女子生徒もいる。」
「今日、引っ越し作業していた女子生徒は、不健康に見えなかった。」
奈美は、萃と一緒に見た、依頼人の隣家に住んでいた姉妹を思い起こす。
「入学後、健康なまま転出できるということは、コトリバコの呪いが効いていないのかと思ったんだけど。
コトリバコの効能が、不完全ということは、ある?
どういうことが起きているか、分かる?」
萃の疑問点に、奈美は合点がいった。
「今日引っ越しした女子生徒は、コトリバコのテリトリーに入っていれば、コトリバコの呪いの対象になるから、コトリバコのテリトリーにまだ入っていなかったんだと思う。」
「牡丹の庭中学校に入学した女子生徒が全員、コトリバコの対象になるわけじゃない?」
萃は、自身に思い込みがあったことに気付いた。
「牡丹の庭中学校に入学した女子生徒を対象にした実録スナッフムービーまでしていたのは、人の性。
コトリバコのせいではない。」
「人を痛めつけて駆逐することを楽しむのは、コトリバコではなく人。」
「コトリバコを製作したのも、人。
コトリバコに意思はない。」
増えていく幽霊に動じず話をしている奈美と萃。
「ろくでもないことをする人が牡丹の庭中学校を目印に集まった?」
「うん。配信で、治安の悪いコメントが集まって荒れるみたいなものだと思う。
悪いものは集まる。」
「配信している?」
「私はしていない。私の家族の話でもない。」
萃の知らない奈美の交友関係で、配信者か配信を見るのが好きな人がいるのだろう。
萃は、深く追求しなかった。
奈美と萃は、べったりする関係ではない。
「牡丹の庭中学校の真ん中の校舎の一階がコトリバコのテリトリーというのは、今に限った話じゃなかった?
コトリバコが製作されてから、ずっと?」
「うん。コトリバコのテリトリーは、牡丹の庭中学校の敷地の全域じゃなくて、三棟並ぶうちの真ん中の校舎の一階のみ。
三棟並ぶ校舎の真ん中の校舎の一階に入った女子生徒は、そのときからコトリバコの対象になる。」
奈美の断定に、萃は考えを組み立て直す。
「牡丹の庭中学校の女子生徒であっても、三棟並ぶ校舎の真ん中の校舎の一階に足を踏み入れなければ、コトリバコの対象にはならない。」
「コトリバコの対象になるきっかけが、真ん中の校舎の一階に立ち入ることなら。
中一の間は、真ん中の校舎の一階に足を踏み入れることがなかった?」
他学年の教室に、中一がわざわざ足を踏み入れることはないだろう、と奈美は思った。
「一階の教室は、二年生以降しか使わない教室?」
奈美の考えた可能性に気づいた萃は、奈美の考えた可能性を広げていく。
「一年生でも、男子生徒だけが使うとか?」
奈美と萃は、真ん中の校舎の一階の教室の並びを思い返してみる。
一年生の教室か、一年生以外の教室か、奈美と萃が区別できるものは教室にはなかった。
奈美も萃も、違法薬物の元になる草は探していたが、何年生の教室かまでは、気にしていなかった。
「牡丹の庭中学校の真ん中の校舎の一階にあって、他にないものというと、事務室?」
「扉の閉まっている事務室。」
奈美と萃は考えた。
「職員室は、鍵をかけていなかったけれど、校長室にはかけてあった。」
「事務室にも鍵がかかっていた。」
「事務室と校長室には、何かある。」
「鍵をかけておくものを保管している。」
「校長室の中は見れなかった。
栽培するのに適した環境かどうかというと、気温はともかく、水と土の管理が、校長室ではしにくいかもしれない。」
「校長室の広さで栽培するには、棚を何台も並べることになる。
精製に適する部屋は、あった?」
「一番最初の棟も真ん中の棟も、設備の整った教室はなかった。」
「校長室に鍵がかかっているのは、私達が探している草の栽培とは違う理由かもしれない。」
奈美の閃きを萃は、押し広げる。
「機密情報の保管とか?」
「うん。校長室だけじゃなく、事務室も、書類を保管する場所としてはおかしくない。」
「事務室は、生徒が中に入らない部屋。
生徒に見せない書類の保管に、事務室は適しているかもしれない。」
「職員室と校長室は、生徒が立ち入る機会がある。」
奈美と萃は、宙に浮いているコトリバコを見る。
「コトリバコが、真ん中の校舎の一階をテリトリーにするように設置した理由がつかめてきた気がする。」
「中一の間、牡丹の庭中学校の女子生徒は、事務室のある真ん中の校舎の一階には立ち入らないのかもしれない。」
「中二になった女子生徒は、事務室に立ち寄る機会があるのかもしれない。」
「女子生徒は、中二になるときに、女子生徒の人生を縛る内容の書類を事務室で書いているかもしれない。」
萃と意見を交わしていた奈美は、今のところ、かもしれない、という言い方でしめるしかない推測を一旦置いておくことにした。
「可能性は高い。
でも、私達の推測の域を出ない。
今の私達が、開かない扉を強行突破して書類を探すのは、早急過ぎる。」
事務室の扉をこじ開けるのは、今じゃない、と奈美は思う。
「私達の手札が揃ってから、畳み掛ける?」
「うん。」
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