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第8章 29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、英雄公爵に溺愛されています。
241.女神様からの、日本に帰せる、という提案に対するオレの回答。元神子様カズラ君最強伝説。
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「ヒサツグは帰らない。ヒサツグは、帰さない。ヒサツグは、私と共に生きる。」
とクロードが、にべもなく断っている。
帰れる?
日本に?
魅力的な提案。
だって、オレは、今、日本に帰る方法を模索することさえ出来ないでいる。
クロードが反対するから、だけど。
クロードは、オレが女神様の提案に心を揺らしていることを察した。
オレを抱っこしているクロードは、女神様からオレが見えないように、オレを遠ざけた。
クロードの顔は女神様に向いたまま。
オレからは、クロードの表情は見えない。
だけど。
オレを抱っこするクロード腕が強張り、指先が緊張で冷えている。
オレは、クロードと出会ってから、今日まで、変わらない思いがある。
日本に帰りたい。
オレは、ずっと帰りたかった。
そのチャンスが、何もしなくても巡ってきた。
諸悪の根源の女神様の提案で。
オレは何を犠牲にしなくても帰れるはず。
でも、即答できない。
日本に帰れるなら、一も二もなく、飛びつくべきだと思うのに。
オレは、クロードの心を聞いたから、クロードの心に知らないふりで、帰ることは出来なくなった。
クロード、オレがいなくなることを世界一恐れている。
クロードにとって、唯一の家族で伴侶のオレ。
クロードは、オレがいないことだけは、なにがあっても耐えられない。
オレを閉じ込めて、オレに嫌われることになっても。
クロード自身の心身を削ってでも。
クロードは、オレが、いない世界を怖がっている。
オレは、クロードを愛している。
愛するクロードを苦しめてまで、日本に帰る価値はあるのか?
オレが日本から、戻ったときには、クロードは、クロードでいられなくなっているかもしれないのに?
オレが帰ろうとしただけで、女神様に付け込まれるクロード。
そんなクロードをおいて、日本に帰っても、平気なのか、オレは。
オレは、考えた。
結論。
「今じゃない。」
「ふむ?」
と女神様。
「来てすぐなら、女神様の提案にのって、帰っていたな。
オレがいないと女神様に捕まるクロードを、女神様にいいようにされるために帰る気はない。
帰るなら、自力で帰る。
元神子様のカズラ君みたいに。
女神様の提案には、のらない。」
「妾の英雄を横取りするわ、妾のしもべをなんともつまらぬ人間に変えてしまうわ、そなたは、ろくなことをしない。
その上、いつまでたっても居なくならない。」
と、つまらなそうな女神様。
「女神様が、オレを連れてきたんだろう?クロードが家族を欲しがっていたから、結婚して家族になれそうだと。
女神様は、オレとクロードを別れさせる気満々だったよな?
別れさせるつもりなのに、なんで、クロードと結婚させたんだ?」
「英雄に家族がいれば、英雄が喜ぶ。そなたは、英雄が喜ぶ家族を作れて、後腐れなく別れられる素質があった。」
と女神様。
「素質か。オレが異世界転移したのも素質かな?」
「ふふふふふふ。」
と女神様。
「最初から、別れないで済む相手なら、誰も面倒にならなかったのに、別れる前提にしたのは、なぜだ?」
「最初から別れぬと分かっている相手とは関係が進まぬか、盛大にこじれるわ。
同じことを繰り返すなど見飽きる。」
と女神様。
「恋は、障害がある方が燃えるから、か。
女神様は、刺激を求めたのか?」
「ふふふふふふ。」
と女神様。
「女神様は、二度と、オレのクロードにちょっかいかけるな。」
「ふふふふふふ。」
と素知らぬ顔の女神様。
「ケレメイン大公国には、ぼくが住むから、女神様は、遠慮するよね?」
と元神子様カズラ君。
女神様は、ぷいっと反対側を向いた。
「ケレメイン大公国に住んで、ぼくは人生を謳歌する。女神様は、ぼくの邪魔をしにくるなよ?
クロードにちょっかいかけないこと。
ケレメイン大公国で遊ばないこと。
ぼくの邪魔をしないこと。
この三つが、約束出来るなら、帰っていいよ。」
と元神子様カズラ君。
「帰るわ。」
と女神様は、姿を消した。
とクロードが、にべもなく断っている。
帰れる?
日本に?
魅力的な提案。
だって、オレは、今、日本に帰る方法を模索することさえ出来ないでいる。
クロードが反対するから、だけど。
クロードは、オレが女神様の提案に心を揺らしていることを察した。
オレを抱っこしているクロードは、女神様からオレが見えないように、オレを遠ざけた。
クロードの顔は女神様に向いたまま。
オレからは、クロードの表情は見えない。
だけど。
オレを抱っこするクロード腕が強張り、指先が緊張で冷えている。
オレは、クロードと出会ってから、今日まで、変わらない思いがある。
日本に帰りたい。
オレは、ずっと帰りたかった。
そのチャンスが、何もしなくても巡ってきた。
諸悪の根源の女神様の提案で。
オレは何を犠牲にしなくても帰れるはず。
でも、即答できない。
日本に帰れるなら、一も二もなく、飛びつくべきだと思うのに。
オレは、クロードの心を聞いたから、クロードの心に知らないふりで、帰ることは出来なくなった。
クロード、オレがいなくなることを世界一恐れている。
クロードにとって、唯一の家族で伴侶のオレ。
クロードは、オレがいないことだけは、なにがあっても耐えられない。
オレを閉じ込めて、オレに嫌われることになっても。
クロード自身の心身を削ってでも。
クロードは、オレが、いない世界を怖がっている。
オレは、クロードを愛している。
愛するクロードを苦しめてまで、日本に帰る価値はあるのか?
オレが日本から、戻ったときには、クロードは、クロードでいられなくなっているかもしれないのに?
オレが帰ろうとしただけで、女神様に付け込まれるクロード。
そんなクロードをおいて、日本に帰っても、平気なのか、オレは。
オレは、考えた。
結論。
「今じゃない。」
「ふむ?」
と女神様。
「来てすぐなら、女神様の提案にのって、帰っていたな。
オレがいないと女神様に捕まるクロードを、女神様にいいようにされるために帰る気はない。
帰るなら、自力で帰る。
元神子様のカズラ君みたいに。
女神様の提案には、のらない。」
「妾の英雄を横取りするわ、妾のしもべをなんともつまらぬ人間に変えてしまうわ、そなたは、ろくなことをしない。
その上、いつまでたっても居なくならない。」
と、つまらなそうな女神様。
「女神様が、オレを連れてきたんだろう?クロードが家族を欲しがっていたから、結婚して家族になれそうだと。
女神様は、オレとクロードを別れさせる気満々だったよな?
別れさせるつもりなのに、なんで、クロードと結婚させたんだ?」
「英雄に家族がいれば、英雄が喜ぶ。そなたは、英雄が喜ぶ家族を作れて、後腐れなく別れられる素質があった。」
と女神様。
「素質か。オレが異世界転移したのも素質かな?」
「ふふふふふふ。」
と女神様。
「最初から、別れないで済む相手なら、誰も面倒にならなかったのに、別れる前提にしたのは、なぜだ?」
「最初から別れぬと分かっている相手とは関係が進まぬか、盛大にこじれるわ。
同じことを繰り返すなど見飽きる。」
と女神様。
「恋は、障害がある方が燃えるから、か。
女神様は、刺激を求めたのか?」
「ふふふふふふ。」
と女神様。
「女神様は、二度と、オレのクロードにちょっかいかけるな。」
「ふふふふふふ。」
と素知らぬ顔の女神様。
「ケレメイン大公国には、ぼくが住むから、女神様は、遠慮するよね?」
と元神子様カズラ君。
女神様は、ぷいっと反対側を向いた。
「ケレメイン大公国に住んで、ぼくは人生を謳歌する。女神様は、ぼくの邪魔をしにくるなよ?
クロードにちょっかいかけないこと。
ケレメイン大公国で遊ばないこと。
ぼくの邪魔をしないこと。
この三つが、約束出来るなら、帰っていいよ。」
と元神子様カズラ君。
「帰るわ。」
と女神様は、姿を消した。
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