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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
463.ドリアン王国の侯爵子息が割り当てられた部屋にいない件で、『私を咎めないのですか?』とミーレ長官はオレに尋ねました。
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部屋にドリアン王国の侯爵子息がいないとは、どういうことかなー?
オレは、ミーレ長官に問いただしたかったけど、思いとどまった。
ミーレ長官に、ドリアン王国の侯爵子息を任せてはいたが、具体的な指示を一切していなかったことを、オレは思い出した。
ミーレ長官を責める前に、オレ自身が反省することは、ある。
ミーレ長官が、オレに報告、連絡、相談をしてこなかったのは、ミーレ長官に問題がある。
ミーレ長官が動けなくても、ミーレ長官の部下を、オレの元へ走らせることはできたと思う。
ミーレ長官に丸投げして以降、何の指示も出していないオレが、連絡がなかったことをミーレ長官に指摘したとする。
今のオレとミーレ長官の関係では、通り一遍の謝罪を引き出すのが、せいぜい。
だから。
この件については。
ミーレ長官に罰を与えるのも、弁明の機会をもうけるのも、ミーレ長官とオレの間に信頼関係を築き上げてから。
「まず。ドリアン王国の侯爵子息がいない部屋に、ミーレ長官がいた理由から聞こうかな。」
「私を咎めないのですか?」
と意外そうなミーレ長官。
責められることをしている自覚があって、責められる覚悟をした上で、行動に及んだのかな?
ミーレ長官の表情は、変わらない。
探ってくる様子もない。
疑心暗鬼の中にいるのかな。
オレは、ミーレ長官が年上で、オレの知らない色々なことに詳しくて答えを導き出してくれることをいいことに、オレとミーレ長官の立場をなあなあにしてきた。
その弊害が出たんだな。
マウンテン王国にいたときは、全員がケレメイン大公国を独立させる、という一つの目的に向かって進んできたから、多少の馴れ合いは、潤滑油になっていた。
マウンテン王国から、ケレメイン大公国として独立したときに。
オレは、ミーレ長官と話し合って、ミーレ長官の立場をはっきりさせておく必要があったんだと思う。
今さらだけど。
本当に、今さらだけどさ。
マウンテン王国にいたときのミーレ長官は、マウンテン王国の女王陛下の息子で、王太子だった時代を懐古する余裕がなかった。
妻子と生きていくために、ミーレ長官として、一生懸命生きてきた。
ケレメイン大公妃となったオレに従い、ケレメイン大公国に来てからのミーレ長官は。
毎日、必死になっていた生活から抜け出せた。
国に死を望まれていた生活が、終わった。
命を脅かされる心配がなくなり、ケレメイン大公妃であるオレの部下として、ミーレ長官の生活は安定していた。
ミーレ長官には、考える時間ができた。
人生を振り返る余裕ができた。
ケレメイン大公妃の部下となったミーレ長官には、ミーレ長官が王太子でなくなる前を知る来客が来るようになった。
ケレメイン大公国へミーレ長官を訪ねてくる来客は、マウンテン王国の女王陛下を母に持つミーレ長官の血筋を評価した。
ミーレ長官をマウンテン王家の一員、もしくは、マウンテン王家に連なる者として、ミーレ長官を持ち上げた。
マウンテン王国では、顧みられることがなかったミーレ長官の血筋は、マウンテン王国と縁を切ったことで一気に脚光を浴びた。
マウンテン王国にいる間、女王陛下の息子だという理由で王太子になったミーレ長官のことを、マウンテン王国の王侯貴族と国は快く思っていなかったから、他の国も、あえて、ミーレ長官と接点を作ろうとはしなかった。
ドリアン王国が、ミーレ長官を狙って、愛こんにゃく家の弟その二に、スパイの元弟嫁を近づけようとしたのは、マウンテン王家の分裂の旗頭にして、マウンテン王国の牙城を崩すことに狙いを定めていたから、だと思う。
愛こんにゃく家が、実家にあまり帰ろうとしなかった理由は、愛こんにゃく家との結婚を吹聴する幼馴染みを避けるためだけ、じゃない。
本命は、元弟嫁を避けるためだったんじゃないかな。
愛こんにゃく家は、ミーレ長官を生かすために、ドリアン王国のスパイの元弟嫁をミーレ長官に近づけないようにしたんじゃないかな。
マウンテン王国と縁が切れたからこそ、ミーレ長官に流れるマウンテン王家の血筋が、脚光を浴びることになった。
王家の血筋であることは確かな、悲劇の元王太子。
外国から見たミーレ長官の価値は、暴騰した。
ひとえに、利用しやすさの面で。
ミーレ長官は、ケレメイン大公国に来て、マウンテン王国の王太子だった頃の評価を取り戻した。
ミーレ長官が、誰にも見せずに心の奥底に隠してきた感情の蓋を開けたのは、きっと。
オレに向かって、『マウンテン王家の血筋だから、王に相応しいと言い寄ってくる人がいる。』と言ってきた頃じゃないかな。
ミーレ長官は、オレに、大公妃としてしっかりしてくれないから迷惑しているんだ、と言いながらも。
マウンテン王家の血筋を理由に訪ねてくる来客を拒絶しなかった。
初期に、ミーレ長官が来客を拒絶していたら、ここまで深入りさせることは、なかっただろう。
ミーレ長官は、お母さんのことや、ミーレ長官自身の血筋を認められて嬉しかったんだと思う。
利用されることを警戒する気持ちはあっても、ミーレ長官の王太子としての生まれを肯定してくれる来客は、他の人よりも早く、ミーレ長官の心の壁を取り除けた。
オレが、ミーレ長官との関係をあいまいにし続けている間に、ミーレ長官の心情は動いた。
驕りともいえるかもしれない。
異世界人のオレとマウンテン王国の公爵だったクロード。
マウンテン王国の女王陛下の息子で王太子だったミーレ長官。
どちらが、重い存在か、を考え出したら。
オレは、過去は関係ない、今の国のトップは、クロードだと言える。
でも。
ミーレ長官にとっては?
ミーレ長官は、その心情を、ドリアン王国に利用されたんだと思う。
オレは、ミーレ長官をドリアン王国に利用されたままにはしない。
オレは、ミーレ長官をドリアン王国から取り返す。
オレ自身で。
オレは、ミーレ長官に問いただしたかったけど、思いとどまった。
ミーレ長官に、ドリアン王国の侯爵子息を任せてはいたが、具体的な指示を一切していなかったことを、オレは思い出した。
ミーレ長官を責める前に、オレ自身が反省することは、ある。
ミーレ長官が、オレに報告、連絡、相談をしてこなかったのは、ミーレ長官に問題がある。
ミーレ長官が動けなくても、ミーレ長官の部下を、オレの元へ走らせることはできたと思う。
ミーレ長官に丸投げして以降、何の指示も出していないオレが、連絡がなかったことをミーレ長官に指摘したとする。
今のオレとミーレ長官の関係では、通り一遍の謝罪を引き出すのが、せいぜい。
だから。
この件については。
ミーレ長官に罰を与えるのも、弁明の機会をもうけるのも、ミーレ長官とオレの間に信頼関係を築き上げてから。
「まず。ドリアン王国の侯爵子息がいない部屋に、ミーレ長官がいた理由から聞こうかな。」
「私を咎めないのですか?」
と意外そうなミーレ長官。
責められることをしている自覚があって、責められる覚悟をした上で、行動に及んだのかな?
ミーレ長官の表情は、変わらない。
探ってくる様子もない。
疑心暗鬼の中にいるのかな。
オレは、ミーレ長官が年上で、オレの知らない色々なことに詳しくて答えを導き出してくれることをいいことに、オレとミーレ長官の立場をなあなあにしてきた。
その弊害が出たんだな。
マウンテン王国にいたときは、全員がケレメイン大公国を独立させる、という一つの目的に向かって進んできたから、多少の馴れ合いは、潤滑油になっていた。
マウンテン王国から、ケレメイン大公国として独立したときに。
オレは、ミーレ長官と話し合って、ミーレ長官の立場をはっきりさせておく必要があったんだと思う。
今さらだけど。
本当に、今さらだけどさ。
マウンテン王国にいたときのミーレ長官は、マウンテン王国の女王陛下の息子で、王太子だった時代を懐古する余裕がなかった。
妻子と生きていくために、ミーレ長官として、一生懸命生きてきた。
ケレメイン大公妃となったオレに従い、ケレメイン大公国に来てからのミーレ長官は。
毎日、必死になっていた生活から抜け出せた。
国に死を望まれていた生活が、終わった。
命を脅かされる心配がなくなり、ケレメイン大公妃であるオレの部下として、ミーレ長官の生活は安定していた。
ミーレ長官には、考える時間ができた。
人生を振り返る余裕ができた。
ケレメイン大公妃の部下となったミーレ長官には、ミーレ長官が王太子でなくなる前を知る来客が来るようになった。
ケレメイン大公国へミーレ長官を訪ねてくる来客は、マウンテン王国の女王陛下を母に持つミーレ長官の血筋を評価した。
ミーレ長官をマウンテン王家の一員、もしくは、マウンテン王家に連なる者として、ミーレ長官を持ち上げた。
マウンテン王国では、顧みられることがなかったミーレ長官の血筋は、マウンテン王国と縁を切ったことで一気に脚光を浴びた。
マウンテン王国にいる間、女王陛下の息子だという理由で王太子になったミーレ長官のことを、マウンテン王国の王侯貴族と国は快く思っていなかったから、他の国も、あえて、ミーレ長官と接点を作ろうとはしなかった。
ドリアン王国が、ミーレ長官を狙って、愛こんにゃく家の弟その二に、スパイの元弟嫁を近づけようとしたのは、マウンテン王家の分裂の旗頭にして、マウンテン王国の牙城を崩すことに狙いを定めていたから、だと思う。
愛こんにゃく家が、実家にあまり帰ろうとしなかった理由は、愛こんにゃく家との結婚を吹聴する幼馴染みを避けるためだけ、じゃない。
本命は、元弟嫁を避けるためだったんじゃないかな。
愛こんにゃく家は、ミーレ長官を生かすために、ドリアン王国のスパイの元弟嫁をミーレ長官に近づけないようにしたんじゃないかな。
マウンテン王国と縁が切れたからこそ、ミーレ長官に流れるマウンテン王家の血筋が、脚光を浴びることになった。
王家の血筋であることは確かな、悲劇の元王太子。
外国から見たミーレ長官の価値は、暴騰した。
ひとえに、利用しやすさの面で。
ミーレ長官は、ケレメイン大公国に来て、マウンテン王国の王太子だった頃の評価を取り戻した。
ミーレ長官が、誰にも見せずに心の奥底に隠してきた感情の蓋を開けたのは、きっと。
オレに向かって、『マウンテン王家の血筋だから、王に相応しいと言い寄ってくる人がいる。』と言ってきた頃じゃないかな。
ミーレ長官は、オレに、大公妃としてしっかりしてくれないから迷惑しているんだ、と言いながらも。
マウンテン王家の血筋を理由に訪ねてくる来客を拒絶しなかった。
初期に、ミーレ長官が来客を拒絶していたら、ここまで深入りさせることは、なかっただろう。
ミーレ長官は、お母さんのことや、ミーレ長官自身の血筋を認められて嬉しかったんだと思う。
利用されることを警戒する気持ちはあっても、ミーレ長官の王太子としての生まれを肯定してくれる来客は、他の人よりも早く、ミーレ長官の心の壁を取り除けた。
オレが、ミーレ長官との関係をあいまいにし続けている間に、ミーレ長官の心情は動いた。
驕りともいえるかもしれない。
異世界人のオレとマウンテン王国の公爵だったクロード。
マウンテン王国の女王陛下の息子で王太子だったミーレ長官。
どちらが、重い存在か、を考え出したら。
オレは、過去は関係ない、今の国のトップは、クロードだと言える。
でも。
ミーレ長官にとっては?
ミーレ長官は、その心情を、ドリアン王国に利用されたんだと思う。
オレは、ミーレ長官をドリアン王国に利用されたままにはしない。
オレは、ミーレ長官をドリアン王国から取り返す。
オレ自身で。
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